ハンセン病およびハンセン病回復者差別問題


ハンセン病は、純粋培養ができないほど微弱な菌である「らい菌」による感染症の1つです。この菌は、体温が低い場所を好む性質があり、発病すると主に末梢神経が侵されるために、手足の変形など後遺症が残ることも少なくありません。
しかし、らい菌自体が微弱な菌のため、たとえ感染しても免疫力や抵抗力によって発病するのはごく稀です。感染、発病には身体の抵抗力の低下や、戦争や飢餓などで栄養状態、衛生状態が非常に悪いなど、環境が大きく関係しており、現在の日本では感染するための条件がほとんどありません。事実、ハンセン病療養所入所者の方々も病気自体は完治しているのです。
日本のハンセン病政策は、1907(明治40)年の法律第11号「癩予防ニ関スル件」に始まります。療養所を設け、当時、寺社仏閣などに浮浪していたハンセン病患者の収容を始めました。そして1931(昭和6)年、新たに「癩予防法」が制定され、患者に対する“”強制”隔離政策が開始されました。
当時、在宅の患者も含む全患者を療養所に収容し、ひとりたりとも残さないという「無癩県運動」が展開されました。収容の際には家屋に土足で踏み込み、患者がいた場所、触った物、子どもがいれば学校なども真っ白になるぐらいに消毒され、その光景を目撃や伝え聞いた人々に「恐ろしい伝染病」という偏見を強く植え付けたのです。以降、1996(平成8)年に「らい予防法」が廃止されるまで、ハンセン病療養所入所者の方々は、既に完治しているにもかかわらず強制隔離が続けられ、筆舌に尽くしがたい経験をされてきたのです。そして、この国の政策が、現在にまで差別を残す結果となったのです。
宗教界でも「癩予防法」制定以前から、ハンセン病を「悪業の報いによる『業病』」「天の裁きによる『天刑病』」などと説き、偏見を民衆に対してすり込んできた歴史があります。
曹洞宗は、差別や偏見をすり込んできた重大な過ちを認め、2001(平成13)年6月、宗議会において「ハンセン病患者及び元患者とその家族及び親族に対する謝罪と人権回復のための啓発活動に尽力することの決議文」を採択、謝罪の意を表するとともに、教団としてハンセン病回復者の人権回復のために取り組む決意を表明しました。
そして、具体的に全国13か所の国立ハンセン病療養所を訪れ、懺悔の法要を行い、視聴覚教材を制作、曹洞宗僧侶の人権学習のテーマとしてハンセン病問題の啓発活動を行いました。その後も、ブックレットやリーフレットを作成し、定期的にハンセン病問題をテーマにした研修会をさまざまな地域で開催、療養所を実際に訪れ学習を進めています。
今後も曹洞宗として、植え付けられた偏見、差別解消のためハンセン病に関する正しい知識を知っていただくための活動をすすめてまいりたいと思います。
 
宮古南静園での法要    『知ろう考えよう ハンセン病の差別や
            偏見をなくすために』
    ハンセン病に関する正しい知識を学び、
身近な多くの人々に伝えるためのリーフレットです。