迷える中年ライターが『修証義』を書き写してみた ~曹洞宗のお経を一般人が読むと?(第2章・第10節)~


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honbun初めて触れる『修証義しゅしょうぎ』の本文を読み、鉛筆を手に書き写し、また現代語訳を読む中で感じた事を率直に語っていきます。第10回は、第2章「懺悔滅罪」の第10節について。

第10節「発露ほつろ力罪根ちからざいこんをして銷殞しょういんせしむるなり」

■ライターはこう思いました

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ライター 渡辺ロイさん

さて、冒頭には「懺悔のやり方のテンプレート」が登場しています。
この節は第2章の最後の部分ということで、総括的にこういう登場の仕方をしたのでしょう。ここまでのことを踏まえながら、改めて「仏教的な懺悔」を確認してみる、そういう節なのだと読みました。

まずは、自分のそれまでの悪い行いが、一例として列挙されています。
貪り、怒り、愚かさが起因となる言動(つまりは、考えなしの軽率な言動ですね)、あるいはそもそも、そういう愚かしい「思い」すら、悪い行いとして挙げられています。

そして、坐禅をし、そして合掌しながら(絶対にしろ、ということではないのだと勝手に解釈しています。そうしたほうが、より良いというだけの話で)懺悔なさい、と言っています。

少し脱線しますが、何かことがあった時に、定形の言葉や行為が存在するということは、とても気持ちを楽にしてくれると思います。
何か驚くようなことが起きた時に、英語では「Oh,my god!」とか言うようです。というか、聞いたことはあります。日本人からすると、少し違和感があります。「うわ!」とか「なんてこった!」とか、そういう自分の感情を表すような場面で神様を呼びつけるのは、なんというか、よくわかりません。
わかりませんが、思わず口に出てしまう言葉の中に神様が入っているというのは、宗教との距離感という意味だけで言えば、アリなのかもしれません。

本当に雷様を信じていなくとも、轟音とともに雷が近くに落ちれば、おへそを隠したり(最近はしませんか?)、「クワバラクワバラ」と言ってみたり(最近は言いませんか?)。
自分の心を落ち着けるために、定型の何かを行ったり言ったりすると、人はきっと少し安心するものなのでしょう。
アスリートが大事な場面で定型の動きをする、いわゆるルーティーンと同じ効果があるのかもしれません。
ルーティーンは、それをこなすことで、そもそものパフォーマンスを十分に発揮できるようになる(なりやすくなる)ので、行うべき事柄のようです。

ここまで仏教的な懺悔は「反省する契機」であり「思い直すためのきっかけ」となりうるのではないか、と読んできました。
ということは、そのチャンスタイムを、もう少し日常的に、ルーティーン的な「いつもの行為」にまで持っていければ、良き道へ歩き出しやすくなるのかもしれません。

そして、ここで出てくるのが冒頭の漢字の塊です。

 我昔所造諸悪業(がしゃくしょぞうしょあくごう)
 皆由無始貪瞋癡(かいゆうむしとんじんち)
 従身口意之所生(じゅうしんくいししょしょう)
 一切我今皆懺悔(いっさいがこんかいさんげ)

冒頭にある「悪い行いの例」と、なので懺悔しますという仏に対する語りかけが、ワンセットとなって、いかにもお経的な文言として羅列されています。
実際に書いてみると、かなり大変です(笑)。
しかし、とてもよくできたセンテンスだと思います。
最初の2行で、悪い行いを列挙し、次の1行で「それはすべて自分から発せられたものだ」と覚悟をします。そして最後の1行で「懺悔をします」と言語化しています。

これを、習慣のように無理せずつらつらと口から出るようになれば、もしかしたら「自分の心をリセットさせる達人」になれるのかもしれません。
問題は、中年の記憶力なのかもしれませんが……。


■禅僧がライターへこう応えました

本節は、冒頭に、4行から成るお唱えごとが述べられます。これは「懺悔文」と呼ばれるもので、声に出してお唱えすることで大変ありがたい功徳があるとされています。ロイさんは「懺悔のやり方のテンプレート」と捉えておられます。とてもユニークな表現だと思いながら拝見しました。

私たちは知らず知らずのうちに愚かしい行いをしてしまい、その行為が次なる行為を生んでしまいます。その「負のスパイラル」の鎖を断つことが大きなテーマと言えます。ロイさんが、「反省する契機」であり「思い直すためのきっかけ」と理解されるように、懺悔とはゴールではなく、新たな行為の循環をもたらすための出発点だと言えます。そうした行為が積み重なって人格を作り、一人ひとりの人生が作られていくのでしょう。

そうであるならば、4行のお唱えの中に、これまでの行為の愚かさを顧みて、自らの煩悩を消除する決意を表したいものです。その確かな思いは、きっと、私たちに大きな力を与えてくれるはずです。

 

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