過疎問題現地報告 ~ 能登地域寺院調査に参加して①


過疎問題現地報告 ~能登地域寺院調査に参加して

報告者:平子泰弘(曹洞宗広報委員)

平成29年8月25日(金)~28日(月)の4日間にわたり、石川県七尾市を中心とした地域の各宗派の寺院調査が行われました。この調査は過疎地の寺院の抱える問題を研究している「過疎問題連絡懇談会」から多くの研究者・実務担当者が参加して実施されました。
今回参加した教団は、本願寺派、大谷派、日蓮宗、高野山真言宗、智山派、曹洞宗と多彩でした。調査対象寺院も能登地域に多く点在する大谷派だけでなく、本願寺派、曹洞宗、日蓮宗、高野山真言宗の寺院・住職、そして葬儀社にも地域の状況や近年の仏事などの変化、今後の不安などのお話をお聞きするものとなりました。また、寺院への調査と平行して、龍谷大学社会学部猪瀬研究室の学生による能登島での住民への聞き取り調査も行われました。
今後、集計と合同の検討を踏まえて、現状が明らかになるなかで、地域における寺院の役割、人びとの寺院への思いも示されていくものと期待しています。ここでは調査に同行したなかで感じたところを3回にわたり簡単に報告させていただきます。 ⇒2回目の報告はコチラから

 

地域と共に生きる寺院
今回4日間の調査で、私自身は6ヵ寺の寺院でお話を伺うことができました。寺院毎に立地する環境や変遷の違いにより、檀信徒数(門信徒数)はまちまちですが、総じて戸数が多く経営の安定している寺院はほとんど見られませんでした。住職としての収入のみで生計を立てているケースはほとんどなく、住職の兼業、もしくは年金や家族の収入により、生活を成り立たせていることが前提の地域といえます。
また、地域の状況からも、若い世代の転出や人口の減少など、檀徒の増加が見込める要素はありませんでした。いずれの寺院においても、檀信徒数の減少が徐々にあらわれており、今後もその傾向が進むことが予想されます。これらの人口動態の問題には寺院が何らかの手立てを打つということは考えられませんが、各住職の思いの中には、地域にどっしりと根付いた存在として寺院を維持していきたいという意思を感じました。
中には住職のこんな声を聞きました。
 「徐々に住民が減っていって、最後の一軒になっても頑張っていきたい」
 「(住居の移転などで)遠くに離れてしまって、縁が薄くなってしまえば仕方ないからね」
ここには決して悲嘆しているのではなく、現実の流れを受け止め、地域に生きる住職、宗教者として自分のできることを全うする思いが込められていると感じました。
寺院を維持することを優先すれば、新たな信徒獲得や都市部への働きかけも考えられるのでしょうが、今回お話を伺った住職方からは、あくまで今いる檀信徒、地域住民のため、そのための寺院として機能させていこうとする思いを共通して感じる結果でした。
こうした思いは、各寺院の開創以来の長い歴史そのものが地域に根ざしたものであることと異なることではないでしょう。

 

遠方檀信徒への対応、地域との協働
各寺院において檀信徒(門信徒)の減少が目に見える形で進んでいます。それに対して何も手立てをしていないわけではないことが、各住職の遠方に住む檀信徒への努力に感じられました。
対応の差異はありますが、手作りの寺報の送付、各法要の案内を通して年間の行事への参加の呼びかけが見られました。特に八月初旬の「こんごうまいり」(※)への案内、除夜の鐘や涅槃会のだんごまきへの呼びかけなど、遠方の方がお参りするご縁作りを寺側から発信していることが分かりました。そうした発信のすべてが参加に結びつくわけではないとも話されていましたが、そうしたお知らせが故郷の菩提寺から毎年来ること、そのものが喜ばれており、縁を結び続けることになっている、と複数の住職がお話しされていました。
この地域は真宗門徒の多いところとしても知られていて、そこでは各法要に伴う「お齋」(お食事)を檀信徒(門信徒)が用意する習慣も残されています。多くは近在のご婦人方に担われてきていたので、高齢化と後継者不足の問題から消滅しつつあることが話の中にみられました。お講などの活動も同様ですが、現状において開催可能な形に変化・縮小させながら継続している様子がうかがわれました。また、寺院に檀信徒(門信徒)の青年会(決して青年だけではないが)などを少人数ながら組織して人びとの集まる行事を開催している寺院がいくつも見られました。単に法要や行事に参加するだけでなく、そこで役割を担ってもらったり、事前の準備作業に関わることで、菩提寺への意識が強まることを各住職共に実感として持っていました。
決して真新しい取り組みではありませんが、こうした継続可能な活動が“地域と共にある寺院”を元気にしていくのではないかと感じました。

 

今回のまとめ
以上のように、今回お話を聞かせていただいた各寺院住職いずれの姿勢においても、それぞれの地域、縁の深い檀信徒とともに寺院を維持していこうという思いを当然のように持っていることが分かります。そして、そこには減少しつつあるとはいえ、各寺院を支える檀信徒の存在と、彼らの菩提寺を大切に思う気持ちがあることが感じられました。
地域との密なるつながりの大切さを感じますが、地域自体が弱小化しつつあり、各行事への影響も現れています。
次回は檀信徒の葬儀や法事における変化を報告したいと思います。

 

(※)こんごうまいり……他家に嫁いだ親族が、忙しいお盆を前に実家に帰り、お寺や先祖の墓にお参りし、お寺で食事をして、お互いに仏様の願いやご恩を味わうという、この地方の風習。「婚後参り」「金剛参り(金剛会)」「魂供会」「サキボン」などとも呼ぶ。