迷える中年ライターが『修証義』を書き写してみた ~曹洞宗のお経を一般人が読むと?(第3章・第15節)~


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初めて触れる『修証義しゅしょうぎ』の本文を読み、鉛筆を手に書き写し、また現代語訳を読む中で感じた事を率直に語っていきます。第15回は、第3章「受戒入位」の第15節について。

honbun第15節 「是れ諸仏こ しょぶつ受持じゅじしたまう所なり」

■ライターはこう思いました

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ライター 渡辺ロイさん

この節では、仏が正しいと信じ歩んだ道程を3つの誓いと10の戒めにまとめ、そのお題目を並べてあります。いわば、目次的な節です。ということで、いつもの自分の感想の前に、それぞれのタイトル(というかキャッチフレーズ?)と、その簡単な内容をここで列記しておきます。
こちらにまとめてはあるのですが、読み進めやすいように、です。

3つの誓い三聚浄戒さんしゅじょうかい
 1. 摂律儀戒(しょうりつぎかい)  一切の悪事を行わない
 2. 摂善法戒(しょうぜんぼうかい) すすんで善行に努める
 3. 摂衆生戒(しょうしゅじょうかい)他者のために行動する

10の戒め、実践すべき項目(十重禁戒)
1. 不殺生戒(ふせっしょうかい)いたずらに生き物を殺さない
2. 不偸盗戒(ふちゅうとうかい)人のものを盗まない
3. 不邪婬戒(ふじゃいんかい) 淫欲を貪らない
4. 不妄語戒(ふもうごかい)  だましたり嘘をつかない
5. 不酤酒戒(ふこしゅかい)  酒におぼれない
6. 不説過戒(ふせっかかい)  人の過ちを責め立てない
7. 不自讃毀佗戒(ふじさんきたかい) 慢心をもったり人をけなしたりしない
8. 不慳法財戒(ふけんほうざいかい) 人のためになるものを施すことを惜しまない
9. 不瞋恚戒(ふしんいかい)     怒りで我を失ったりしない
10. 不謗三宝戒(ふぼうさんぼうかい) 仏法僧の三宝を謗らず、ひたすら信じる

さて、この『修証義』には、僧たちの行いの基準となる、いわば「曹洞宗の公式テキスト」として採用されているそうです。つまり、エッセンスがぎゅっと詰まった、ハンドブックですね。『修証義』を底本として、各自が布教したり、説法を行ったりします。
なので、この節でばしっと登場した三聚浄戒と十重禁戒、その詳細については詳しく触れてくれないんです。あらまあ、残念。

残念ながら逐一の解説はないものの、ちょっと「ほほう!」と思った部分を読者の方と共有してみたいと思います。

まずは、3つの誓い(三聚浄戒)。
それぞれの戒めが「摂⚪︎⚪︎戒」という構造になっています。つまり「⚪︎⚪︎という戒めを摂る」ということですね。「摂」というのは「摂食」という言葉があるように、取り込むとか取り入れる、という意味で使われる漢字です。
ということは「骨身に染み入らせるごとく、深い部分にまで取り入れなさい」と言っているのではないか、と推測できます。まずはここに興味深さを感じました。

そして10の戒め、実践すべき項目(十重禁戒)です。
私が「仏さまは、こんなことまで大事な柱として認識しているのか!」と驚いたのが、6の不説過戒(人の過ちを責め立てない)です。

不説過戒は、現代人がすごく陥りやすい行動をも戒めているのでは、と思えます。
最近よく見かけてイラつく(失礼)のが、ネットなどの発言。何かことがあると、わかったような口調で責任論をまくしたてる、誰かをやり玉に挙げて溜飲を下げる、そんな行状をよく見かけます。
このような行為は、悟りを得るために回避すべきことだ、と時間を超えて仏は戒めてくれているように思えます。「匿名だからってTwitterとかで攻撃しないようにね」と言っているのです(少なくとも、言われているような気がする)。

相手の立場を慮ったり、いろいろな事実を検証することもなく、思いつきの批評をなんの躊躇もなく展開する。そういう振る舞いがどうしても目に付いてしまいます。どういうつもりなのでしょうかね。
あ、でも、こうやって書いてしまうこと自体、6の不説過戒(人の過ちを責め立てない)に抵触しているのかもしれません。
そうなのか。心が揺れると、どちらに動いても十戒のどこかに触ってしまうのでしょう。

簡単ではありませんね……。

 

■禅僧がライターへこう応えました

この節では、前節の仏・法・僧の三宝への帰依に続き、「三聚浄戒」と「十重禁戒」が説かれます。

三聚浄戒は、本来は、菩薩戒を「止悪」・「修善」・「利他」という三種類の特色により規定し、それぞれ「摂律儀戒」・「摂善法戒」・「摂衆生戒」という三種の戒とされたものです。
ロイさんは、この三聚浄戒に見られる「摂⚪︎⚪︎戒」の「摂」の字を「⚪︎⚪︎という戒めを摂る」と理解なさっていますが、この「摂」は、インドの原語としては「包摂する」という意味であり、一つや二つの「⚪︎⚪︎戒」を取り入れるという程度の意味ではありません。そうではなく「(すべての,あらゆる)⚪︎⚪︎を(包)摂する戒」という意味となります。例えば「摂律儀戒」であれば、「すべての律儀(心身を抑制すること)を包摂する戒」ということから「一切の悪事を行わない」という意味が導き出されるわけです。
ちなみに「律儀」という語は、現代日本語では、「義理堅く実直」とか「融通がきかない」などの意味で使われますが、本来は、心身を抑制し、悪行を防止しようと勤めるさまを表現したものでした。

続く「十重禁戒」は、私たちが、各自の生き方の上に具現化し実現していくべき理想的な生き方、人格完成を示したものであります。ロイさんは、「不説過戒」を実存的に掘り下げながら痛感なさったかも知れませんが、この「十重禁戒」は、禁止条項的内容でありながら、内実は仏教における「智慧」や「慈悲」のエッセンスを内包しています。つまり、我が事として受けとめ実践する時に初めて理解されていく仏さまの大切な教えであるともいえるでしょう。
確かに実践するには「簡単ではない」ものでありますが、まずは、私たちの生き方における教え・軌範として受けとめていただいたうえで、具体的な社会生活においては、第四章「発願利生」の内容を学び、実践していただく事が第一歩なのではないかと思います。

 

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