【人権フォーラム】証拠を一部開示へ~狭山事件の再審を求める市民集会


証拠を一部開示へ~狭山事件の再審を求める市民集会

 狭山事件については本誌でも既報のとおり、宗門では「部落差別に基づくえん罪」として、一日も早い再審開始に向け、多くの方がたと連帯をしながら、石川一雄さんを支援している。

 石川さんと狭山弁護団は現在、東京高裁へ第3次再審請求中であるが、昨年9月10日、狭山事件では実質初の3者協議(裁判所・弁護団・検察庁)が東京高裁・門野博裁判長(昨年、12月の3者協議後に岡田雄一裁判長に交代)の元で主に証拠開示について行われ、裁判長は10月末までに証拠開示に関する意見を東京高検へ求めた。

 これに対し、東京高検は「証拠開示には応じられない」と拒否の姿勢を示したことから、12月に行われた2回目の3者協議で、裁判長は東京高検に対し8項目にわたる証拠開示勧告を行ったのである。

 第3回の3者協議を翌日に控えた5月12日、東京都千代田区日比谷野外音楽堂において、狭山事件の再審を求める市民集会(狭山事件の再審を求める市民集会実行委員会主催)が開催され、全国から石川一雄さんを支援する3000人余りが参集した。

 妻の早智子さんとともに登壇した石川一雄さんは、「皆さんのご支援があっての石川一雄であり、ご支援なくしてえん罪は晴れません。権力を倒すことは容易ではありませんが、1人ひとりが心を1つにして闘えば、権力を引きずり出し、私をえん罪に落とし込めた者を糾弾できるのではないかと確信しつつ、この3次で勝利できるよう、精一杯闘っていく決意であります。どうか、裁判で無罪を勝ち取れるよう、一層のご支援、ご指導をお願いします」と、力強く訴えた。

 弁護団報告では、中山武敏主任弁護人が、昨年10月末の証拠開示拒否について「これに組することなく裁判所が12月に開示勧告を出したことの意義は大きい」と指摘、8項目の勧告の要点を説明した。そして「再審はゴールなきマラソンと言われる。私たちは、ねばり強い闘いを展開して、最後はゴールまで達するという気持ちである。開示勧告という武器を大切に活かしていく」と締めくくった。

 さらに、基調提案の中で松岡とおる部落解放同盟中央書記長は、「裁判長が証拠開示勧告を行ったことは、裁判長自身が、証拠を調べなおす必要があると考えているからだ」と述べ、足利事件、布川事件と近年、相次いで再審が開始されている流れの中で「司法の民主化、えん罪をなくしていくための大事な課題として、狭山の再審開始を、皆さんとともに勝ち取れる1年にしたい」と述べた。

 1時間半にわたる集会終了後には、参加者一同で日比谷から東京駅付近までをデモ行進し、1日も早い事実調べと証拠開示、そして再審開始を世間に広く訴えた。

 東京高検、一部証拠開示

 5月13日の3者協議で、東京高検は弁護団に対し4項目36点の証拠を開示した。これは、昨年12月の3者協議での、8項目にわたる証拠開示勧告を受けての開示である。

 なお、狭山事件で証拠が開示されるのは、1988(昭和63)年以来、実に22年ぶりである。

 以下は、勧告と開示された証拠の主な内容である。

勧告

1、殺害現場とされる雑木林内の血痕反応検査に関する捜査書類

2、殺害現場の近くで農作業をしていた方への事情聴取に関する捜査報告書等

3、石川さんが逮捕・勾留中に書かされた脅迫状等、石川さんの筆跡が存在する文書等

4、石川さんの取り調べメモ等

5、実況見分調書に記載されている現場撮影の8ミリフィルム

開示証拠

1、殺害現場付近で農作業をしていた方への捜査報告書類2点

2、石川さんの筆跡が存在する文書6点

3、取り調べの録音テープ9本

4、取り調べに関する捜査報告書等19点

 勧告にある「雑木林内の血痕反応検査に関する捜査書類」については、これまで「不存在(存在しない)」としてきたものを「不見当(見当たらない)」と変更した。また、「8ミリフィルム」についても「不見当」としている。

 午後6時半から司法記者クラブで開かれた記者会見で石川さんは「やっと検察も証拠開示に応じた」と話す一方、「まだ隠している証拠があるはず」と、今後もさらなる証拠開示、事実調べ、そして再審開始に向け、決意を述べた。

 今回、東京高検が隠し続けてきた証拠を一部開示したことは、大きな前進である。しかし、当然行われているはずの、殺害現場での血痕反応検査に関する捜査書類が「見当たらない」というのはあまりにも不自然であり、肝心な部分はいまだ開示はされていない。

 本来、証拠はすべて開示されるべきであり、これがなされない事が、えん罪を生み出す原因の1つとなっているのである。今後も、狭山事件の再審開始とともに、司法の民主化へ向け、声をあげていかなければならない。