【人権フォーラム】曹洞宗被差別戒名物故者諸精霊追善法要


去る9月14日、鳥取県米子市総泉寺を会場に、曹洞宗被差別戒名物故者諸精霊追善法要が、渕英德宗務総長を導師に厳修された。

本年で3回目を迎える宗門主催の法要は、2010年度中国管区役職員人権啓発研修会に併設で開催され、内局をはじめ、中国管区内宗議会議員、宗務所役職員、教化センター役職員、鳥取県宗務所内教区長、近隣地区内寺院、人権啓発相談員など多くの宗門僧侶・寺族、さらに、来賓として、部落解放同盟中央本部をはじめ、鳥取、島根、広島、栃木の各県連代表者など約120人が参列焼香した。

被差別戒名物故者諸精霊追善法要は、1981(昭和56)年から大本山永平寺において、1984(昭和59)年から大本山總持寺において、それぞれ両大本山主催で修行されてきたが、これとは別に2008年度から宗門主催の法要を開催、昨年は福岡県安国寺専門僧堂で、九州管区役職員人権啓発研修会に併設で修行した。

午後1時頃から、次々と随喜寺院が上山、それぞれ控室にて威儀を整え、打ち出しを待った。

午後2時、打ち出しとともに、来賓、随喜寺院、両班・後両班(内局・宗議会議員・管区長・教化センター統監・宗務所長)と位に就き、七下鐘により、導師を務める渕英德宗務総長が上殿、はじめに「供養のことば(別掲)」を奉読した。続いて『修証義』後二章を遶誦し、参列者の焼香が行われた。

回向の後、渕英德宗務総長から主催者としてまず、参列の方がた並びに、会場を提供いただいた総泉寺関係者に対し御礼を述べ、そして「宗門僧侶による『差別戒名』授与という、釈尊の平等の教えに背いた行為への心からの懺悔と、死後にまで差別を受けた方がたへのお詫びとともに、あらゆる差別の解消と人権の確立に向けての自覚と決意を新たにさせていただいた。さらに、宗門が部落差別問題に取り組みを始めて間もなく30年を迎えようとしている。今後は、宗門僧侶・寺族のみならず、一般檀信徒を含めた啓発にも取り組んでいく所存である」と決意を述べられた。

続いて、来賓を代表して組坂繁之部落解放同盟中央執行委員長より挨拶があり、司会者より各来賓の紹介が行われ散堂となった。

その後、休憩をはさみ、組坂繁之委員長、中田幸雄部落解放同盟鳥取県連合会執行委員長の2人の講演が行われた。

「私が歩んだ部落解放運動」と題してご講演いただいた中田委員長は、自身の約50年にわたる取り組みについて約1時間にわたり話された。

学生時代に差別を受け、差別を逃れるために都会に出たが、そこで就職差別を受ける。そして、部落差別の解消を目指し郷里に戻り解放運動に参加し始めたが、最初は、被差別部落の側が改善すれば差別がなくなるという、いわゆる部落改善運動であった。

しかし、1965(昭和40)年の同和対策審議会答申を学び、差別の結果厳しい生活を強いられ、教育を満足に受けられないでいることに気づく。以来、特に教育を高めることに力を入れてきた。

最後に自身の運動について「まず、自分自身が差別をしない人間にならなくてはいけない。私は、当事者から生の声を聞くことから始めました。部落差別を解消するという営み、解放運動を通してあらゆる差別をなくす、そういう運動として取り組んで行こうというのが私の運動です」と締めくくり、午後5時過ぎ、全日程を無事終了した。

過去2回の法要は、専門僧堂が会場であったが、今回は初めて一般寺院を会場に開催した。

開催に当たっては、会場主である総泉寺さまを始め、鳥取県宗務所、教化センター、近隣寺院僧侶、寺族の皆さまにご協力いただいたことに厚く御礼を申し上げる次第である。

供養のことば

本日、米子市総泉寺さまを会場に被差別戒名物故者諸精霊追善法要を修行するにあたり、「供養のことば」を申し述べます。

曹洞宗における「差別戒名」は、1979年の第三回世界宗教者平和会議における差別発言を契機に、差別問題に取り組む「部落解放同盟」の皆さまからの「確認・糾弾会」などの学習の場をとおして、差別戒名授与の実態が明らかになりました。曹洞宗では、宗門の一大事としてこの「差別戒名」改正への取り組みを進めているところです。

仏教をお開きになられた釈尊は、智慧と慈悲の精神に基づいた平等の教えを説かれました。また、道元禅師は、慈念・済度の教え、「おのれいまだわたらざるさきに、一切衆生をわたさんと発願し営むなり」と説き、瑩山禅師は大慈大悲の教え、「常に大慈大悲に住して坐禅無量の功徳を一切衆生に回向せよ」を説かれました。

すなわち両祖さまは、私たちの日常は、常に「利他」を念頭に置き「種姓を観ずることなく」人々を救済して行きなさい、済度や大慈の願いを持って日々行じていかなければならない、と示されているわけです。

しかるに、一仏両祖の教えに生きる宗門僧侶が、その教えに反して、死後にまで及ぶ「差別戒名」授与という、宗教者にあるまじき行為をしてきた歴史的事実があります。

このことに対して、私たち曹洞宗の僧侶は、我がこととして仏祖の真前に至心に懺悔するとともに、差別され続けてきた物故者の諸精霊とその関係の方々に対し、心よりお詫びを申し上げます。

私たち曹洞宗の僧侶は、釈尊、両祖の教えに則り、世法に流されることなくしっかりと現実の社会を見据え、日常的実践の中でのみ、本来の姿に立ち返る事ができると確信し、僧侶の歩むべき道を切り開いてまいる覚悟であります。

御霊の前にこの取り組みへの一層の精進をお誓いし、ここに供養のことばを捧げます。

2010年9月14日
曹洞宗宗務総長 渕 英德