【人権フォーラム】浅茅野飛行場旧共同墓地遺骨発掘事業概要


宗門では、2005(平成17)年から東アジア出身の強制徴用者等の遺骨調査、並びに奉還への取り組みを進めており、本誌でも現況等は逐次報告している。宗門寺院を対象とした調査とともに、取り組みのもう1つの柱が、北海道猿払村浅茅野旧共同墓地での遺骨発掘事業である。

去る5月1日から4日にかけて、第3次発掘事業が開催された。今回は宗門がこの事業に関わる経緯、過去2回の発掘事業、さらに、今回の発掘事業の概要を掲載する。

そもそも、旧共同墓地発掘のきっかけは地域住民の証言であった。2005(平成17)年10月末、証言を基に試掘をしたところほぼ完全な遺骨が地下1メートルから発掘された。遺骨には朝鮮民族特有の衣類の断片が確認され、朝鮮半島出身者であることが濃厚となったため、2006(平成18)年の大規模な発掘調査となったのである。

第1次発掘事業は、8月20日から25日にかけて行われたが、この事業は「韓国・朝鮮の遺族とともに―遺骨問題の解決へ 2006夏―」と題して、1カ月にわたり各地で開催された集会やイベントの締めくくりとして行われたものである。

事業の企画は、宗門が遺骨奉還への取り組みを開始するにあたり、協定関係を締結した「強制動員真相究明ネットワーク」という市民団体であり、その縁で同年5月、宗門へ事業の案内とともに、宗務総長に対して共同代表への就任要請があった。

要請を受け、発掘現場の猿払村の隣町、浜頓別町の宗門寺院2カ寺の住職が、浅茅野飛行場建設に関わる強制労働犠牲者への取り組みをされているということ、そして、全国の宗門寺院で安置・供養されている遺骨も、異国の地の土の中で戦後60年以上にわたり眠る遺骨も「命と人格の尊厳の象徴」であることから、この遺骨を掘り出し、遺族に奉還する事業は、宗門の遺骨奉還の取り組み趣旨に合致することから、発掘事業に賛同、当時の有田惠宗宗務総長が共同代表に就任、主催者として参画することとしたのである。

参加者は、日本人、韓国人、在日コリアンの方など、約300人という大規模なもので、6日間の発掘で11体分の遺骨が現場で確認された。

当初、発掘された遺骨は、現場から100㎞以上南に位置する幌加内町朱鞠内で安置される予定であった。しかし発掘事業の最中に「発掘事業に協力いただいた猿払村の住民感情として、なんとか発掘地域の近くに安置することはできないか」という相談が事務局からあった。宗門は宗教教団として唯一、主催団体として参画していたので、現地実行委員として発掘事業に主体的に参加されている、浜頓別町の天祐寺住職・橋本俊弘師に相談申し上げたところ、預かりますとの申し出があり、現在、天祐寺に仮安置されている。その後、2008(平成20)年5月に、少人数で発掘現場のチェックをしたところ、さらに遺骨が確認されたことにより、2009(平成21)年の第2次発掘事業となったのである。

5月に行われた第2次発掘事業は、発掘に集中するため行事等は最小限に留め、期間も5月3日から5日、規模も約50人に縮小して行われた。宗門は、渕 英德宗務総長が実行委員会会長に就任、千葉省三人権擁護推進本部次長が会長代行として、人権擁護推進本部員も実行委員として参加した。

発掘の結果、7人分の遺骨が確認され、内6人が男性遺骨であることが判明した。ひとつの墓構に折り重なるように3体の遺体が投げ込まれているなど、通常では考えにくいほど粗末な扱いを受けていたことも明らかになった。ただ、発掘事業は第2次で完了する予定であったが、発掘の最後に、新たな墓構が発見されたことにより、第3次の発掘事業となったのである。

実は、第1次の発掘は木を切らずに避けて発掘を行った。旧共同墓地から新たな墓地に移動した後、植樹をしているが、樹木は根が土中の遺物を抱え込んで成長する。第2次の発掘では、木を根元から倒して発掘したところ、多くの遺骨が掘り出されたのである。

この度の第3次発掘事業は、事前の調査で目安を付けていた4カ所ほどの墓構の発掘を行った。

今回の発掘事業も、渕 英德宗務総長が実行委員会会長に就任、千葉省三本部次長が会長代行として昨年に引き続き参加、今回も発掘に集中するため、人数は約70人と小規模なものとなった。

期間は、第1期と第2期と分け、1期が5月1日から4日、2期を5日から9日としていたが、第1期の4日で発掘事業は無事終了、5体分の遺骨が発掘され、天祐寺に遺骨を仮安置させていただいた。

3回の事業で発掘された遺骨に関して、焼骨についてはDNA鑑定が難しいが、焼かれていない骨については、DNA鑑定が可能であり、将来的に遺族が確定する場合に備えて、今後、日本政府に要請していく方針である。

最後に、この3回の発掘事業開催にあたり、地元の猿払村の村長をはじめ、役場の皆さま、並びに、住民の方々には全面的にご協力いただいている。第1次発掘では300人もの参加者の宿泊場所の提供など、第2次発掘では村のバスを送迎に提供いただき、この第3次発掘も、企画段階から事務局としてご協力いただいた。

地元の方々のご理解ご協力により、この事業が無事終了できたことに対して、厚く御礼申し上げる次第である。

なお、第3次発掘事業の詳細については、改めて、本誌にて報告の予定である。