【人権フォーラム】管区人権啓発研修会概要報告(2)


宗門では、毎年度、管区と人権擁護推進本部の共催で、宗務所・教化センター役職員等人権啓発研修会(以下、管区人権啓発研修会)を各管区ごとに開催しているが、今回は、9月号に引き続き、4管区で開催された研修内容の概略を報告する。

なお、中国管区については、今年度は、部落差別問題をテーマとして鳥取県米子市内を会場に、「宗門主催被差別戒名物故者諸精霊追善法要」と併設で開催、詳細は本誌10月号を参照いただきたい。

 
北信越管区

・期日 8月26日~27日

・会場 長野県長野市内

今回は「戦時中の金属回収令」「朝鮮民主主義人民共和国による拉致問題」について学習した。

初日は、1941(昭和16)年に公布された国家総動員法に基づく金属回収令で梵鐘を回収され、代わりに石の鐘を吊るした寺院をテーマにした映画「夕焼けこやけで~石の鐘のこだまは・・・~」を視聴した。

その後、現在も石の鐘が吊るされている浄土真宗本願寺派称名寺を訪れ、住職の佐々木五七子師より、梵鐘が運び出される様子、戦争の悲惨さについてのお話をいただいた。

2日目には、新潟県第4宗務所人権主事・阿部正機師より、宗務所における「拉致問題」に対する取り組み経過が報告され、解決へ向けた活動支援の協力を呼びかけた。

続いて「絆と夢―半生をふりかえって」と題し、拉致被害者である新潟県産業大学専任講師・蓮池薫氏にご講演いただいた。

蓮池氏が拉致されてからの辛苦に満ちた経験、そして、日本へ帰還されてからの歓喜と苦悩を事細かにお話いただき、停滞している拉致問題の進展のための協力を訴え掛けられた。

 
近畿管区

・期日 9月9日~10日

・会場 兵庫県姫路市内

今回は「皮革の歴史と被差別部落」について学習した。

1日目は、姫路市内ホテルで開会の後、同市内の被差別部落を訪れ、皮革研究家・柏葉嘉徳氏を講師に、以前皮革工場を経営していた同氏の私有地で、皮革産業における被差別部落の歴史についてお話いただいた。

実際に皮革産業に携わっていたこともあり、過去から現在に到るまでの皮革産業の変遷や、被差別部落における草場権の説明、なめしの各種類の利点、問題点等を分かりやすくお話しいただいた。

また、実際に現物を用いた触感、視覚に訴えかける説明が参加者の反響を呼んでいた。

2日目は、西御着総合センター資料館を訪れ、皮革産業の資料展示や、日本の経済や生活等、色々な分野の皮革製品の展示を見学、その後、同地区の皮革工場を見学し、なめし工程を学習した。

 
九州管区

・期日 10月13日~14日

・会場 佐賀県唐津市内

「差別戒名」墓石をテーマに取り上げ、1日目は、佐賀部落解放研究所事務局長・中村久子氏、浄土宗西福寺住職・永田正明師の両名を講師に、県内で発見された「差別戒名」墓石が改正に至るまでの経緯についてお話しいただいた。

この事例では、困難の末に約5年の歳月を経て改正を終えたのだが、その後も関係者の自省の念から「差別墓石・法戒名を問い考える会」が発足し、現在も差別戒名や部落差別にとどまらないさまざまなテーマで学習会が行われている。

2日目は市内の被差別部落を訪れ、部落解放同盟佐賀県連合会唐津支部長・濱本芳継氏より、ご自身がかかわってきた解放運動や地区の現況等についてお話をいただいた。

その後のフィールドワークでは、この地区の墓地には「差別戒名」墓石と疑われる墓石が4基あり、墓石前での諷経の後、2班に分かれ周辺を歩きながら、中村氏と濱本氏から説明を受けた。

 
四国管区

・期日 10月25日~26日

・会場 香川県高松市内

ハンセン病及びハンセン病回復者差別問題をテーマに国立療養所大島青松園を訪れ現地学習を行った。

1日目午前11時過ぎに現地に到着した参加者はまず、納骨堂で物故者追悼法要を修行、終了後、療養所内の大島会館に移動し、園長の新盛英世氏にご講演いただいた。

新盛氏は、医師の立場からライ菌および、ハンセン病の基本的な説明、さらに、園の運営者の立場から入所者の現況について言及された。特に社会復帰に関しては「日常的に介護が必要な方が多くいること、また、50年以上入所されているので社会に適応することは簡単ではない」など指摘された。

そして最後に療養所の今後について「療養所の医師、看護師の確保が大切である」と述べられた。

その後、入所者の方に自らの体験を語っていただいた。

1943(昭和18)年にハンセン病への効果が明らかになり、以後、在宅での治療が可能となった「プロミン」について、投与後、プロミンが体質にあわず副作用がでる入所者が少なからずいたことなど、貴重なお話を伺うことができた。

講演後は職員の方の案内で療養所の施設をフィールドワークして学習を深めた。

 
今回、初めて各管区人権啓発研修会の概要を報告したが、それは、それぞれの地域に存在する人権課題について多くの方がたに知ってもらうこと、そして、例えば「部落差別問題」でも、九州管区の「差別戒名」や、近畿管区の「皮革産業」など、さまざまな視点からの研修を紹介することが主な目的である。

 今後も、人権擁護推進本部が企画する研修会も含めて、報告していきたい。