【人権フォーラム】人権啓発視聴覚教材第13作『いのち、つないで~無縁社会から有縁社会へ~』


 この度、人権啓発視聴覚教材第13作『いのち、つないで~無縁社会から有縁社会へ~』が完成した。この教材は今年度の教区人権学習会のテーマとなるが、今作はそれにとどまらず、広く檀信徒を対象とした学習会にも活用いただきたく、DVDを宗内全寺院に配布することとした。
 
 制作趣旨
昨年4月、人権啓発相談員から4人を制作委員に委嘱、議論を重ねてきた。当初から檀信徒も視野に入れた映像制作を目指したことから、毎日のようにテレビ等で報道されている、人権問題にかかわる社会的苦悩を取り上げ、身近に、そして、報道での基礎知識により、共感できると考えられる「いのち」を題材に、児童虐待、自死の問題を取り上げ、最前線で活動する方がたにご出演いただいた。
さらに、一仏両祖を始めとする祖師方の教えの中に人権が説かれているとの視点から、奈良康明駒澤大学名誉教授には教学面、増田友厚特派布教師には布教の実践の面より、意見・提言をいただいた。
「いのちの大切さ・重さ」を統一テーマとして掲げ、具体的には、10分程度の個別テーマの映像を、オムニバス形式として4本制作、学習会の際に選択して視聴いただけるようにもした。
 
エピソード①「いのちを育む」
出演…児童擁護施設「野の花の家」統括施設長 花崎みさを氏
○園に来る子どもの事情
「昔は、親の病気、仕事の都合、貧困という事情が多くて、親子の関係は今ほど冷え込んでいませんでした。ですが、段々虐待が多くなりまして、子どもたちを親に見つからないように育てなければならないケースも増えてきました」
○家庭の機能
「虐待を受けた子どもが成長し、困難にぶつかった時、子どもの頃に経験・学習してしまったことを実現してしまう。それを繰り返さないために、家庭はどんな時でも自分を捨てない、愛してくれる人がいる。家庭はありのままの自分でいられる場所。家庭は生きていくための大事なことを教えてくれる場所、と感じる環境(癒し)作りが大切」
○いのちは「授かる」
「いのちは『できる』ものではなく『授かる』もの、いのちの大切さ、育み方を若い人たちに教えていかなければ、同じことが続くのではないか」
 
エピソード②「いのちを生きる」
出演…駒澤大学名誉教授 奈良康明師
○   仏教と人権活動
「仏教はいのちを大切にする宗教。色々なものに生かされている、そういういのちを大切にする。人権もそういう面から見ていいと思う」
○  「自己」と「他己」
「自分を大切にする。自分の命を大切にすることに関して自と他が1つに続いていく世界。それが慈悲の働き。慈悲の実践が人権活動につながる」
○無縁社会の中で
「基本的には人にあって話しを聞くこと。色々な形でみんなが集まって、手をつないで語り合いながら、一緒に生きていきませんか、という積極的な働きをしていかなければいけないのではないか」
 
エピソード③「いのちを救う」
出演…NPO法人心に響く文集・編集局代表 茂 幸雄氏
○人命救助
「『助けてくれ』と言葉で言えないだけで、発信しているんだから、自死者を止めるのは『人命救助』です」
○同伴者になる
「一生懸命頑張ってきたけれど、もうどうしようもない。求めているのは自分の心の杖と、よりどころが欲しいんです。私たちは『同伴』と言っているけれど、一緒に歩いてあげないといけない」
 ○最後に
 「一番頼りにするのは各宗教団体です。もっと、門を開いて、話しを聞いて、『心のよりどころ』になってください。そうすれば私のところまで来ないんです」(茂氏の活動に関しては3月号参照ください)
 
エピソード④「いのちを受け継ぐ」
出演…筑波大学名誉教授 村上和雄氏
○遺伝子はすごい
 「20世紀半ばに遺伝子構造が解明されました。そこで分かったことは、生物の38億年間の生物の進化の中で生まれてきた生き物、そして将来地球に生まれてくる生き物は、全く同じ遺伝子暗号を使っている。つまり、すべての生き物はDNAの暗号でつながっている。そして、遺伝子は最初にできてから今まで、1度も途切れていない。だから生まれただけですごいこと」
○サムシング・グレート
「最初にDNA暗号を作った存在が『サムシング・グレート』。私のサムシング・グレートの定義は、すべてのいのちの親のようなもので、今も休みなく遺伝子暗号を書き込み、正確に動かしている働きが身体の中にある。また、サムシング・グレートはいのちの親だと思っていますから、いのちの親が特定の子どもをひいきするわけがない」
 ○自分の花を咲かせる
 「今の風潮は他人と比較するが、他人さまと比較するために、この世に生まれてきたんじゃない。自分の花を咲かせるために生まれてきた」
 
出演…特派布教師 増田友厚師
○「いのち」について
「みんな一生懸命に生きている。つらいことも、悩むこともある。嬉しいことも悲しいこともすべて含めて生きている有様そのものを『いのち』と言うんです」
○支えられ、生かされるいのち
「私どものいのちは、ひとりとして、ひとつとして存在しているのではなく、たくさんの方がたのいのちを受け継ぎ、たくさんの方の願いを受けながら生まれてくる」
 
いのちがホッとする場所
人権問題として現れてくるさまざまな症例は社会的な苦悩です。これは個人が作ったものではなく、我われが作っている社会が生んでしまった苦悩です。ですから自己責任ではなく、連帯責任です。エンディングでは「喫茶去」という言葉を使用しています。これは、お寺が社会の苦悩に悩む方がたとつながりを持つ。「お茶」を通してコミュニケーションをとってほしいという投げかけです。今、日本は「無縁社会」と言われています。しかし、元々「無縁社会」だったのではなく「無縁化」してしまった、無縁化させてしまったのです。無縁化している社会を有縁化に回帰させていく、「いのちがホッとする場所」。お寺にはその条件が整っているのではないでしょうか。