【人権フォーラム】“聞く 考える 行動する”ふくしま故郷再生プロジェクト聞き取り調査はじまる


ふくしまの秋
その日、ふくしまの空は青く澄みわたり、山々の稜線に雲ひとつなかった。天日乾しの稲穂が黄金に輝き、まさに実りの秋の真っ盛り。のどかな山里の秋の風景はそのままだが、ひとたび現地に入るとその印象は一変した。
10月4日、人権擁護推進本部員は、福島県宗務所役職員の同行により、福島市と伊達市のふたつのお寺を訪問した。
東京電力福島第一原子力発電所(福島県双葉郡大熊町)の原子炉4機が、3月11日午後2時46分発生の東日本大震災等にともない、「絶対安全」であったはずにもかかわらず、翌12日午後から次々と爆発した。冷却系統の全電源喪失による炉心溶融と水素爆発と推定されている。
この崩壊的爆発事故により、現時点でも正確な算定ができない高濃度の放射性物質が大量に拡散していった。
この放射性物質の拡散と汚染は、東北から関東・甲信越、東海地方の広範囲におよんでいるが、その濃度の深刻さは、福島県の比ではない。
一見のどかな田園風景には、目には見えない放射性物質とそれに対する人びとの失意や不安が隠れていた。
 
「ふくしま故郷再生」とは
あの過去に戻れるならば…と、ふくしまの誰もが願っていることだろう。放射性物質の拡散と汚染がふくしまの人びとにもたらした災いは、あまりにも広く深い。あの「チェルノブイリ」と併せて呼ばれることになるとは、誰が予想したであろうか。
この災いは、あまりに大規模であるので、思い至ることもないと思うが、かつてない構造的人権侵害であると私たちは考えている。
福島県内の本宗寺院、檀信徒、地域住民は、当たり前の生存権・自由権・社会権を剥奪、侵害され、不当な制限にさらされている。物質的な損害だけでも算定不可能であるのに、精神的・文化的な被害はもはや取り返しがつかない。放射性物質の影響はどこまでなのか、どこからが危険な領域なのか、そもそも安心して日常生活ができるのかもわからないことだらけだ。
しかし、ふくしまの人びとは、そこで忍耐強く生きている。
人権擁護推進本部では、ふくしまの特別な状況に鑑み、寺院・地域が被っている人権侵害の現場の実情と要望内容を把握し、ふくしまの皆さんとともに、「故郷再生」に努めていきたいと願っている。お寺は故郷・地域社会に支えられている。故郷が成りたたないところでは、寺院存続は不可能だ。
この「故郷再生」というテーマは、吉岡棟憲福島県宗務所長の「故郷を戻してほしい!」というご発言にもとづいて命名された。
ふくしまの置かれた現状からすれば、私たちの立場から「故郷再生」など、あまりに過ぎた表現だ。実際は、「ふくしま故郷再生」へのささやかな支援・協力にとどまるかもしれない。ともに「ふくしま」の問題と未来への課題を担っていくという意味で「支援」「協力」はあえてはずしている。
錯綜、矛盾し両極端な情報や報道は、ふくしまの人びとを助けるどころか、深刻な「風評被害」「情報汚染」をふくしまにもたらしている。
私たちは、まず現場の肉声を「聞く」こと、それから他の状況や情報と照らし合わせて深く「考える」。そして望ましい「ふくしま故郷再生」のために「行動する」こととしたい。
 
聞き取り寺院募集します
ふくしまの寺院、檀信徒、地域の方がたの聞き取り活動は、カウンセリングでもなく、統計データ収集が目的でもない。
時々刻々に変化するそれぞれの地域社会や寺院の現状を、基本的には自由回答でうかがい、現場でなければ知ることのできない肉声や実情と要望を宗内外に発信していく。
必要な事柄については、対社会的な情報・意見表明や要請活動に役立てていきたいと考えている。
聞き取りにご協力いただいた方がたや福島県宗務所とも相談しながら、『曹洞宗報』等の機関誌や曹洞禅ネット等の電子媒体にも不定期に掲載する予定である。
ついては、この聞き取りにご協力いただく福島県宗務所管内のご寺院を募っています。
“ふくしま故郷再生プロジェクト”聞き取りについてのお問い合わせは、曹洞宗人権擁護推進本部(03―3454―3546〈直通〉)までご一報をください。

「 “ふくしま故郷再生プロジェクト”聞き取り調査へのご協力のお願い」(pdf)