【人権フォーラム】管区役職員人権啓発研修会概要報告(1)


宗門では、各宗務所など人権啓発活動において、役職員が指導者的立場で活動していただくために、管区と人権擁護推進本部の共催で、宗務所・教化センター役職員等人権啓発研修会を管区ごとに開催している。今回は、今年度これまでに研修会が終了した4管区の研修内容の概略を報告する。


関東管区

・期日 6月11日~12日
・会場 埼玉県熊谷市内

「埼玉の部落の歴史から学ぶ」をテーマに開催、初日は、部落解放同盟埼玉県連合会研究部長・藤田源市氏に武州鼻緒騒動を中心にご講演いただいた。武州鼻緒騒動とは、埼玉県で被差別部落と商人との鼻緒の売買が発端となった、差別発言、暴行事件である。事件に対して、埼玉の長吏は、団結して差別に立ち向かったが、当時の江戸幕府は「事件が大きくなった原因は、長吏側にある」として厳しい処分を下した。これについて藤田氏は「長吏が徒党を組み、身分制度に立ち向かうことを幕府が恐れたから」と指摘した。その後、岩殿観音、丸木美術館を訪れ、フィールドワークを行った。
2日目は、部落解放同盟埼玉県連合会執行委員長・片岡明幸氏にご講演いただいた。ここで片岡氏は、実際に身元調査を行っていた会社への聞き取りや、結婚差別についての実体験などを話され、更なる人権啓発の必要性を説いた。


東北管区

・期日 6月28日~29日
・会場 宮城県本吉郡南三陸町

今回は、被災地の現状と今後について学習を行った。
初日、ホテル観洋にて開講式の後、フィールドワークを行った。まず、南三陸町防災対策庁舎及び津龍院本堂で物故者供養法要を行い、南三陸町仮設商店街、南三陸町歌津伊里前地区、気仙沼市小泉・津谷地区を訪れた。その後、ホテルで女将・阿部憲子氏にご講演いただいた。阿部氏は東日本大震災以降、被災者の受け入れや南三陸町の復興のためにさまざまな活動をされており、参加者に「南三陸町に来てくれることが大きな支援となっている。宮城でも原発事故による風評被害によって食品が売れない現状があるが、今は精密な検査をクリアした物しか市場に出回らない」と訴えた。また、僧侶として被災地でできることは何かという質問には「傾聴活動をしてほしい。表面には出さずとも町民はストレスが非常に溜まっている。話を聴いてくれて心を打ち明けられそうな人には、追い掛けてでも話をする」と述べた。
2日目は山形県第1宗務所災害対策本部担当・木村尚徳師よりご講演いただいた。同宗務所は、東日本大震災発生から2日後に災害対策本部を設置、山形県青年会等と連携を取りながら早くから行茶、傾聴、復興支援活動を行ってきた。活動する中で重要なのは継続であり「時間を見つけて活動することはとても大変だが、何度も通い話をすることで信頼関係を築くことができる。傾聴活動は心のケアに良い効果を生むので重要なことだ」と述べた。


中国管区

・期日 7月10日~11日
・会場 島根県松江市内

「自死に係わる差別問題に学ぶ」をテーマに開催、初日は「ひとりじゃない…語り伝え動き出す」と題して、自死遺族の会、”しまね分かち合いの会・虹”代表・桑原正好氏にご講演をいただいた。自死遺族への差別問題を中心にお話をされる中で、葬儀や遺族からの相談等、直接に自死遺族と係わる場面のある宗門僧侶に対して、実体験を踏まえた鋭い意見と同時に「かけこみ寺」として人の苦しみを見抜いてゆく活動が期待されていると指摘された。
2日目はNPO法人自殺予防ネットワーク『風』副理事長で、月宗寺住職・袴田俊英師から「『いのち』と『人権』―自殺予防活動から見えてきたもの―」と題してご講演をいただいた。秋田県の高い自殺率と向き合いながらの活動から見えてきた、高度成長と共同体の喪失の構造、弱者の救済を制度に頼らない主体的な優しさの必要性が述べられた。


北信越管区

・期日 8月23日~24日
・会場 長野県長野市内

東京電力福島第一原子力発電所の事故と人権についての研修が行われ、初日は「『Fukushima』の現況に思うこと」と題して、総合研究センター委託研究員であり福島県昌建寺住職・秋央文師にご講演をいただいた。事故より1年半を経て、線量計を日常的に携帯して生活する福島の現状と、福島に住職する当事者として「分からないこと」から来る恐怖に宗教者としてどのように向き合うべきかについてご講演いただいた。
2日目は信濃毎日新聞社主筆・中馬清福氏から「原発の教訓・これからの課題」と題してご講演をいただいた。核の平和利用、クリーンエネルギーと謳われた時代にも、一方で警鐘が鳴らされていたにもかかわらず、今回の事故が起きてしまった背景について話され、最後は医療、科学の分野と宗教者の対話を望む、として話を結ばれた。