【人権フォーラム】人権啓発視聴覚教材第14作「向きあう 伝える 支えあう」


現在、人権啓発視聴覚教材第14作を、今年度末の完成を目指して制作中である。今作のタイトルは「向きあう 伝える 支えあう~生と死を見つめて~」。
前作の「いのち、つないで~無縁社会から有縁社会へ~」を踏襲し、「いのち」をメーンテーマとしたオムニバス形式で、個別テーマを5つ設け、それぞれいのちと向きあい、伝え、支えあう活動をされている方がたにご出演いただき、活動の現場も取材させていただいた。
 
エピソード①「いのちと向きあう~在宅ホスピス」
出演…ふじ内科クリニック院長・内藤いづみ氏
○限られたいのちを輝かす
限られたいのちの今を輝かすことに集中して寄り添うケアをしていくと、明日に希望を持って迎えられることを学びました。だから、痛くないように、辛くないように私たちがしてあげるから、今日を頑張って生きようということが伝えられる。
○いのちと向きあい支えあっていく
「あなたはこの世に生まれたただひとつのいのち」ということを尊重する。いのちの主人公になってもらうこと。そこまで私たちが尊重していく。
○「ありがとう」と「さようなら」
絵に描いたようなことはなかなか起きないけれど、「ありがとう」という言葉と、残す人への「さようなら」、そして「ごめんね」という言葉を残せたらそれは凄いと思います。
 
エピソード②「子どもと向きあう~いじめの問題」
出演…国立教育政策研究所生徒指導研究センター総括研究官・滝充氏
○いじめの現状
9割の子どもは被害者になっているし、9割の子どもが加害者になっている。つまり、ほとんどの子どもは被害者にも加害者にもなっていると考えないといけない。
○ピアサポート・プログラム
「ピアサポート・プログラム」とは、子どもが子どものお世話をするということ。例えば、小学校6年生が1年生の給食の手伝いをする。そういう役割を与えて、自覚を持ってその役割に取り組む。そして、その成果を周りの大人がしっかり認める。そうすると自覚が促されて、学校全体のいじめも減るんです。
○自己有用感
「自己有用感」とは自分が誰かの役に立っている、自分が必要とされているという意味合いの言葉です。相手の役に立ったところを褒めてあげれば、自己有用感に満たされる。そういう子どもは、いじめというつまらない格好で相手を貶めることをしなくなる。
 
エピソード③「老いと向きあう~高齢者介護の現場から~」
出演…富山県高岡市歓盛寺住職、特別非営利法人「二塚よりどころ」副理事長・仙田智治師
○師匠・仙田一宗師の最期
あと2週間の命と病院で宣告され、師匠は歓盛寺で最期を迎えることを望みました。お寺に戻ると本当に嬉しそうで安らかで、病院とは全然違う顔でした。お檀家さんも次々と来てくださり、そのまま2ヵ月間亡くなるまでいてくださった。
○できなくてもいい
庭を掃いてもらいますが上手にできない。しかし、できなくてもいいんです。することによって、誰かの役にたったという思いをしてもらい、私はそれに対して「ありがとう」と言う。もっというと何もできなくていいんです。いてもらえるだけで若い人の精神的支柱になる。
○役に立つということ
今起きている自死や無縁、孤独などの問題を考えると、「役に立つ」ことが自分と相手を救い出す方法だと思います。それを実践することで、本当に自分は1人で生きていけない、1人で生きているんじゃないという実感が持てるわけです。それを、お年寄りや来てくれる子どもたちに教えてもらっている。
 
エピソード④「未来と向きあう~被災の現場から~」
○南三陸町西光寺住職・小沢良孝師
津波が本堂の屋根の上まで来た瞬間に本堂が浮いて流れ始めた。その時にハッとして、「私は仏さまに助けていただいた。これからは人のために自分のやれることをやろう」という感覚が自然と生まれた。
○津波で2人の子どもを亡くした木村夫妻
最初、どこに手を合わせていいか分からなかったんです。でも三尊仏をいただいてありがたかった。納骨する時も離れるのが嫌でした。しかし、「キチッと納めるところに納めないと」とお寺さんに言葉をいただいて、私たちのためではなく、子どもたちのためにと教わったんです。
○人権啓発相談員、宮城県宗務所東日本大震災災害対策室長・佐竹孝喜師
正直なところ、遠いところだとか、時間が経つと思いは段々薄れていくので、やはり、遠くで起きたこと、外国で起きたこと、いろんな事情があっても忘れないで自分のこととして捉えて、これからも自分にできることをやっていくことが必要だと思います。
 
エピソード⑤「向きあう 伝える 支えあう」
出演…前大本山總持寺後堂・盛田正孝師
○自分の存在を証明するのは相手
自分の存在を証明するのは相手なんです。それは、関わり合いの中で、相手が私の存在を証明してくれるんです。相手の存在を証明していくのが自分になったりするという関係性をもっと知るべきです。
○関わるとはその場に居合わせること
絆だとか、関わり合い、支えあうということは理論ではなく、実際に関わってみて分かるのです。その中で、関わるというのはその場に居合わせること。その場に居合わせ、そこから逃げずにしっかり受け止めて、引き受けて生きていく。
 
今作のポイントの1つに「自分は人の役に立つ存在」「自分は必要とされている存在」つまり、自分の存在価値をいかに感じてもらうかがある。
「ただひとつのいのちを尊重する(内藤氏)」「ピアサポート、自己有用感(滝氏)」「上手くできなくてもいいんです(仙田師)」「関わり合いの中で相手が自分の存在を証明する(盛田師)」
これらのコメントから、どのように「向きあう」のか、その姿勢が見えてくる。
さらに、佐竹師の「遠くで起きたこと、いろんな事情があっても忘れない」とのコメントにあるように、東日本大震災によって「幸せに生きる権利(人権)」が脅かされている方がたを決して忘れてはいけない。私たちは、このような声を根底に置きながら「向きあい」「伝え」そして「支えあって」生きることが、今こそ求められているのではないか。
来年度、人権啓発視聴覚教材としてDVDを全国寺院に配布させていただき、学習の場で感じていただきたい。