【人権フォーラム】人権委員会設置法案~世界人権宣言64周年記念東京集会


昨年12月5日、東京都千代田区・日本教育会館一ツ橋ホールを会場に、「世界人権宣言64周年記念東京集会」が開催された。
1948年(昭和23年)12月10日に世界人権宣言が採択され、翌年よりその日を最終日とする1週間を「人権週間」と定め、毎年、さまざまな取り組みがなされている。同集会もその一環としてこの時期に開催されている。
今回は、今日の日本社会における人権課題に焦点をあてる内容で、松岡徹部落解放同盟中央本部書記長より「人権の法制度の確立に向けて―『人権委員会設置法』をめぐる闘いの到達点―」と題した講演があった。
松岡徹氏
この法案は、昨年9月19日に閣議決定され秋の臨時国会に提出されたが、衆議院の解散により自然廃案となっている。

松岡氏は、部落解放同盟をはじめ多くの方がたが連帯して成立を目指してきた「人権侵害救済法」の取り組みにも関わり、人権委員会設置法案についても、政府との交渉を行ってきた経緯がある。

国会に出される法案には、内閣提出(閣法)と議員発議(議員立法)があるが、松岡氏はまず、閣法としたことについてその理由を説明した。

「国を司る行政府が法律を作る意味の一つは、法律を作るための立法事実が存在するということです。つまり、人権侵害を受けている人がたくさんいて、人権侵害事件が後を絶たないことを認めているからこそこの法律を作るという意味です。この法律を作るべき立法事実の存在を認めている。部落問題のみならず、さまざまな差別を受けているマイノリティの方がたが存在します。憲法に保障されている基本的人権が侵害されています。閣法として成立させようとした意味はここにあります」

人権侵害救済法成立の取り組みの中で、法案作成の話し合いでは譲歩もあったという。しかしその中で特にこだわった部分に委員会の独立性がある。法案第一章第四条「国家行政組織法第三条第二項」の規定(三条委員会)に基づいて、法務局外局に委員会を設置する」とある。これは行政府から独立していることを意味する。その理由については「国家が個人の人権を侵害することが今でもあるからです。近いところで言えば、厚生労働省の村木厚子さんのえん罪事件があります。正当な権利、憲法で保障されている参政権や、社会的経済的なさまざまな権利が国家によって侵害されるということが多々あるわけです。だから私たちは独立性にこだわるんです」と述べた。

さらに、最近では当事者が知らないところで差別が起こっていると指摘する。

「プライム事件(事件概要は本誌昨年8月号参照)がそうです。戸籍を不正に取得した時点で差別は成立しますが、当事者はそこにいません。しかし、被害は調査された方に行きます。今は、面と向かって差別されることは少なくなりましたが、差別は形を変えて生き抜いているのです。差別によってどんな被害を受けるか、市民権を奪われているか、どんな悲劇が起きているかは、当事者以外には分かりにくい状況があります」

そして最後に、「この法律ができることによってすべての差別がなくなるとは思いません。当事者が知らないところで差別が存在する。社会のこういう不合理は弱いところに集中するという原則だけは貫かれています。これが差別の本質です。ですから、私たちはそういったことをなくしていく社会を目指すことが大事で、それが人権侵害をなくしていく営みだと思います。私たちは誰をも踏み台にしてはいけません。みんなが人間として平等に手を携えて生きていける社会を目指していきたい」と締めくくった。人権侵害救済法成立に向けては、宗門でも「部落解放・人権政策確立要求運動」を通して取り組みを続けてきた。憲法では差別は禁止されているにも関わらず、法制度が整備されていないために人権侵害を受けた方がたが泣き寝入りをする現状がある。今後も、法律早期制定に向け、その取り組みを進めていきたい。