【人権フォーラム】管区役職員人権啓発研修会概要報告(2)


宗門では、管区と人権擁護推進本部の共催で、宗務所・教化センター役職員等人権啓発研修会を各管区ごとに開催している。今回は、昨年10月号に引き続き、4管区で開催された研修内容の概略を報告する。
なお、東海管区については、今年度は、9月11日~12日、愛知県東海市・普濟寺での「宗門主催被差別戒名物故者諸精霊追善法要」と併設で開催、詳細は昨年11月号を参照いただきたい。
 
九州管区
・期日 11月6日~7日
・会場 長崎県長崎市内
被差別部落とキリシタン、原爆との歴史的な関わりについて研修を行った。初日は部落解放同盟長崎県連合会書記長・宮﨑懐良(よりなが)氏、長崎人権研究所事務局長・阿南重幸氏、長崎市天福寺住職・塩屋秀見師にそれぞれご講演いただいた
長崎は、江戸時代に年間約1万枚の皮革が輸入されており、「皮屋町」「毛皮屋町」と呼ばれた地域で皮革産業が発展し、被差別部落が形成されていった。キリシタンでもあった住民は、皮革産業のかたわら、迫害で捕まったキリシタンの牢番や処刑の手伝いを強いられた。このような中で、キリシタン迫害に抵抗する姿が宣教師の記録に描かれていたという。

そして原爆の投下で、爆心地から1.2キロの被差別部落は壊滅状態となり、以降、長崎では被差別部落問題は過去のものとされてきた。

しかし、1970(昭和45)年、長崎開港400周年記念事業の一環である『長崎図録』の古地図に「エタ」という語句が記載されていたことがきっかけとなり、長崎の解放運動が展開されていった。


原爆投下当時の地層前(原爆落下中心地公園)

2日目は、初日の講演を踏まえ、原爆犠牲者慰霊塔や原爆落下中心地公園、浦上天主堂などを説明を受けながらフィールドワークを行った。
 
四国管区
・期日 11月12日~13日
・会場 愛媛県松山市内
部落差別問題をテーマに開催、初日は、部落解放同盟松山市協議会事務局長・松尾幸弘氏にご講演いただいた。松尾氏は1871(明治4)年のいわゆる「解放令」に触れ、「解放令は身分の再編成がされただけで、四民平等と言いながら厳然と差別はあった」と指摘、実際に道後温泉で被差別部落の人は馬などが入る「馬湯」にしか入れなかった実例を挙げて説明した
。そして、さまざまな人権課題について「部落差別だけが人権ではない。もっと人権を世界的な視野で見る多様性が必要」と述べ、最後に「水平社宣言の『人間を尊敬する』という理念によって、人権は実践されるべき」と締めくくった。2日目は、道後温泉「馬湯」跡の「馬塚」などを松尾氏の説明を受けながらフィールドワークを行い学習を深めた。
 
北海道管区
・期日 11月20日~21日
・会場 大阪府大阪市内
部落差別問題、特に水平社運動に関する研修のため地元を離れ、大阪市内を会場に開催された。初日午前、花園大学教授であり兵庫県清久寺住職・中尾良信師、大阪人権博物館学芸員・朝治武氏にご講演いただいた。中尾師は「近世曹洞宗における戒律観と葬儀」と題して殺生戒を中心に日本仏教、曹洞宗の戒律とその歴史的な移り変わりについて講演いただき、これからの「禅戒一如」について問いかける形で終わった。
続いて朝治氏より「水平社90周年によせて」と題して、水平社創立期の社会状況、人びとの思いを創立宣言の内容を追う形で講演いただいた。午後より奈良県御所市の水平社博物館へ移動し、管内展示の見学とその周辺のフィールドワークを行い、当時の歴史的資料の多くに触れた。

2日目は、分散会とまとめを行った。


西光寺(西光万吉の生家)で説明を受ける
 
近畿管区
・期日 12月5日~6日
・会場 京都府京都市内
初日は「新ちゃんのお笑い人権高座」と題して、落語家・露の新治氏にご講演をいただいた。軽妙なユーモアの中に「手段が目的となっていないか」「差別をなくすとはどういうことか」など、多くのメッセージが込められていた。
続いて、部落解放同盟中央財務委員長・西島藤彦氏より「『人権救済法』の制定をめぐる情勢」をテーマにご講演いただいた。戸籍不正取得事件の「プライム事件」を取り上げて身元調査の実情を解説、「人権侵害救済法」制定の取り組みとその必要性について述べられた。
2日目は京都市内のフィールドワークで、オールロマンス事件(※)の舞台ともなった崇仁(すうじん)地区や方広寺周辺をめぐり、最後は真言宗智山派のご本山である智積院で「差別戒名」墓石に諷経を上げ、当地にてまとめを行った。
※1951(昭和26)年、差別的な内容の小説『特殊部落』が雑誌『オールロマンス』に掲載された。