【人権フォーラム】人権啓発映像第15作「原発事故~人権は、守られたか」


この度、人権啓発映像第15作「原発事故~人権は、守られたか~」が完成した。

今作は、東京電力福島第一原子力発電所の事故により、福島の方がたが直面している人権問題を取り上げた。前2作と同様のオムニバス形式で、4つのチャプターを設け、現地の生の声を映像化した。なお、今年度の教区人権学習の教材であり、同時に、全寺院への配布を予定している。
今号は、チャプター別に概要を掲載する。
 
チャプター①「放射能~見えない不安」
出演…諏訪中央病院名誉院長・鎌田實氏
鎌田氏は1986(昭和61)年のチェルノブイリ原子力発電所の事故以降、20年以上に渡り、現地での調査や医療支援活動を行っており、今回も原発事故直後から、子どもたちへの医療支援を中心に活動を続けている。
放射能という目に見えない恐怖に対する不安について、まず、すべての情報の公開と、健康診断や食物の検査を継続して行い、その結果を「見える化」することが大事だという。
「見える化をすれば生活が変えられるし、『こういう注意が大事だ』ということが分かり、『注意すれば福島に住んでいけそう』と思う人もいるし、それでも『まだ、怖いから県外に』という人がいても、それはいいと思います」。
また、見える化は、風評被害を防ぐことにも繋がると指摘する。
「測ることが大事で、測らないで『大丈夫だ』と言うと、結局は神経質な方たちから風評被害を受けてしまうのではないか。科学的に測って外部被ばくと内部被ばくがほとんど他県と変わらないのだったら、福島の人びとを特別に考えたり、見たりするのは違うんじゃないかと思います」
 鎌田實氏

チャプター②「3月12日に何が起きていたか~安全神話が崩れる」
出演…飯舘村酪農家・長谷川健一氏
3月12日の1号機爆発からの変化を時系列で追っており、近隣住民の証言を交えて検証した。
原発から20キロ圏内に住んでいた人びとには避難指示があり、この時すでに一部爆発の情報が入っていた。
「聞いたのは12日。避難所に着いて部屋を確保した時に、みんなが爆発したという話はしていました」。
これに対し、原発から45キロも離れた飯舘村にも大量の放射性物質が運ばれ、15日の雨と雪で地上に降り注いだ。長谷川氏は12日以降、原発に深刻な事態が起きているのではと思い、地区の住民を呼び集めた。
「集会が終わるころには5センチくらいの雪が積もったのです。みんな知らなかった。どういう影響があるのか、その雪がどういうものなのか。後から分かった。その時が一番線量が高い時だったのです」。
4月、長谷川氏も避難を余儀なくされ、育てた牛を手放さざるを得なくなった。そこで、こういう事実を当事者が声を挙げて伝えなければいけないと訴える。
「県外に避難している人で、福島県から避難してきたことをなるべく伏せて暮らしている人も多いと思う。現実に起きてしまったわけだから、めげないで、当事者として『こういうことがあったんだ』、という声をあげてもらいたい」 

チャプター③「分断~引き裂かれた現実」
出演…田村市都路町「長岩寺」住職・渡辺宗貫師
事故によって分断された人びとの「痛み」を取材した。
原発から26キロに位置する長岩寺の渡辺住職は、3月12日朝、避難してくる人びとの受け入れ準備をしていた。しかし、大きく状況が変わる。
「12日の夕方に20キロまでの避難命令が出たので、30キロもたぶん避難になるのではないかということで、一日で避難を受け入れる方から避難する方へと状況がめまぐるしく変わりました」
その後、渡辺住職は寺に戻ったが、家族は今でも田村市内の放射線量の低い地域で暮らしている。
あるお檀家も、震災前は3世代同居であったが、現在、都路町に住んでいるのは老夫婦だけで、離れて住む息子夫婦は子どもの将来を心配する。
「子どもたちの帰るところがなくなるのは困るという思いはあります。この家は帰って来るところではないでしょうし、都路の家にちゃんと帰れるのだろうかという思いがあります」。
 また、震災後転々と避難を続け、現在は千葉県成田市に住む、佐藤信子氏もつらい胸の内を明かした。
「私たちが思っているのとは違う思いをしている人もいる。『いろいろ支援を受けて、何か文句があるのか』と投げかけて来る人もいました。でも、好きでみんなそういう状態になっているわけではない。私はもう1回、子どもたちや孫たちが集る故郷を作りたい。地元では孫たちは近寄らないので、こっちの方に故郷を作りたいと思う」 

チャプター④「原発事故~他人事ではない」
出演…曹洞宗特命布教師、伊達市興國寺住職・辻淳彦師
辻師は、根底に部落差別問題と同じ排除の差別構造があると指摘する。
「原発の事故後、私たちの身の周りには差別に関する問題点がたくさん惹起しています。結婚問題もその中の1つで、福島の若い女性が婚約を破棄されたとか。これはよく考えてみると、私たちが学んで来た被差別部落の問題や、ハンセン病の回復者に対する差別意識と何にも変わらないのではないか。『ヒバクシャ』『フクシマ』という言葉がカタカナで表現されていますが、『この人たちは我われとは違うんだ』という意識が、カタカナの文字に表れているような気がして仕方がないのです」
そして、他人事が差別に繋がることを心配する。
辻淳彦師
 「福島県という国内の1区域の問題、表現は少し乱暴かもしれませんが、対岸の火事という感覚で見ている方がたくさんおられると思います。実は、それが差別の根幹をなすものです。他人事ではなく、自分の身に起きたと同じように、慈しみの心で接してもらいたい。それが人権尊重の基盤だと思います」