【人権フォーラム】管区役職員人権啓発研修会概要報告(3)


宗門では、各宗務所など人権啓発活動において、役職員が指導者的立場で活動していただくために、管区と人権擁護推進本部の共催で、宗務所・教化センター役職員等人権啓発研修会を管区ごとに開催している。7月24日~25日に中国管区、8月26日~27日に北信越管区の人権啓発研修会が開催されたので、概要を報告する。

 

中国管区

・期日 7月24日~25日
・会場 旅館「三好屋」 島根県益田市

今回は認知症や心の病、ポルフィリン症という難病を取り上げ「病気と人権」をテーマに開催された。

日程第1日目は島根大学医学部看護学科教授の原祥子氏に「認知症の人が人として幸せに生きるとは」と題してのご講演をいただいた。認知症は脳の疾患であり「いつ、どこ、誰」といったことを判断する高次皮質機能に障害が起こる。「認知症の人は体験の繋がりがないためいつも不安にさらされている。自分がどこかおかしいと気付き、不安を感じ、自信をなくしながら毎日生活をされているのです」と原氏。また、尊厳や健全さ、自立する部分と依存する部分を当事者中心で考え意思表出能力を補うことが重要だと言う。最後に、その人個人の歴史や生活史、特に認知症の方が語る昔語りは特に強く記憶に残った事柄がある、そこに耳を傾けることで介護するものとされるものの関係が改善することもある、と交流の実例を紹介された。

続いて医療法人正光会松が丘病院院長坪内健氏に「精神科医療と人権」について、西洋での人権獲得の歴史と同時代に興ってきた精神医療の歴史、その中で臨床と法、そして人権がどのように関わってきたのかをお話しいただいた。「現在の精神科で行われる主な行動制限は通信・面会の制限、隔離、身体拘束の三つです。当然、法律に則って行われることで制限できることとできないことがあります」。このことは常に葛藤があるという。「精神障害者や患者が事件を起こす、病院から患者への暴力事件が起きる、その度に制限と人権という二つの間で揺れ動きながら精神医療と法律は整備されてきました」「時代は社会で包み込む、ソーシャルインクルージョンを必要としていると思います。自立と共生、地域が治療の器になることがもとめられているのです」と結ばれた。

2日目は「骨髄性ポルフィリン症の難病指定に向けて」と題してポルフィリン症のお子さんを持つ池谷由美氏と池谷兄弟を応援する会代表の堀冨美氏にお話をいただいた。池谷氏のお二人の息子さんは成人しており、長男の鉄兵さんは現在ケースワーカーの仕事を、次男の栄治さんは医療の道を目指して勉強中だ。二人とも、国内では884症例しか確認されていない骨髄性ポルフィリン症を発症している。血中の酵素の一部が欠損して起こる疾患で、本来すぐに排出されるポルフィリンが体内に蓄積してしまう。特に日光(紫外線)曝露が肝臓に負担をかける。治療法は解明されていない。しかし国による難病指定がされていないためこの疾患は医療制度の上では「難病」ではない。「難病といわれる疾患が7000種はあると言われています。現在法律で指定されているのは130種ですが、来年度には法律が改正されて300種に増えるんです」これには鉄兵さんが提案した難病指定を目指した署名活動が59万もの署名を集めたことも大きかったという。

二人がポルフィリン症を発症したのが小学生の頃、日光を遮断して生活する必要がある症状ということを学校や地域に理解してもらうのはとても大変だった。理解者もいた、担任の先生、クラスメイト、地域の方々、発症してから始めた剣道の先生、そして署名活動に際して「応援する会」ができた。代表の堀氏は「もともと私と池谷さんはママさんバレーの仲間だったんです。あるとき元気印の池谷さんがいないので、どうしたのかと思ったら息子さんが大変だと聞いて、子をもつ親として何とかしなければと思いました」という。最後に「法改正によりより多くの人に症状を理解してもらい、治療の研究が進むことと信じています」と結ばれた。

講演終了後、全体会にて意見を集約、2日間の日程を全て終了した。

 

北信越管区

・期日 8月26日~27日
・会場 ホテルメトロポリタン長野 長野県長野市

今回の研修会では、狭山事件及び現在も残る部落差別問題をテーマに開催された。

1日目は、開会式の後に狭山事件再審請求人の石川一雄氏にご講演いただいた。8月20日に第19回の東京高裁・東京高検・弁護団の三者協議が行われたばかりであった。氏は様々な疑問点の残る捜査方法を指摘し、東京高裁前で、署名を募る際の話をされた。

署名をお願いした方に「私は裁判官を信じますから署名はしません」と言われ、氏は「私は無実ですが、無実かどうかはともかく、公平な裁判が行われるようにするための署名です」と答えたらその方は署名をしたと述べられた。その後、石川一雄氏の妻の石川早智子氏よりお話しいただいた。一雄氏がお話しされた内容についての説明や、仮出獄されてからパスポートの申請に許可が下りるのに非常に苦労したこと等、まだ見えない手錠がかけられていることを述べ、再審の必要性を訴えられた。講演終了後、映画「SAYAMA-みえない手錠をはずすまで」が上映された。

2日目は、長野県上田市議会議員の小坂井二郎氏よりご講演いただいた。

氏は、部落解放運動を通して、様々な差別問題に触れることが多くなり、市会議員という立場から差別にされている人たちをサポートするために活動を続けている。今回は同和問題を中心にお話をいただいた。

上田市の場合は被差別地域に住んでいるだけで被差別部落民とみなされる傾向があったという。

また、長野県は同和教育が盛んな地域であるが、教師の同和問題の理解が低い場合もあり、そういった方の授業で同和問題について学習する場合は、さらに被差別部落民に対する差別が強くなることもあったと述べられた。

最近、同盟員からこんな報告があったという。「上田市のとある会社に勤めているAさんの職場に、長野県の部落解放研究会を差出人とするハガキが来ました。そのハガキには『当会は長野県の被差別部落を調査しております。貴方の奥さんが被差別部落出身であることが判明しましたので、近々お話を うかがいに行きます』という内容が書かれておりました。会社に送ることで、職場の人にAさんの奥さんが被差別部落出身であることを判明させるという嫌がらせが目的だったんです。しかし今回のケースはAさんが全く気にしなかったことと、大ごとにして欲しくなかったということで、ハガキを出した人物が誰かという調査が進まなかった。本人は素晴らしい人権意識を持っておりますが、このハガキを出した人は明確な差別意識を持っています。そこを解決しないと部落差別問題が解消しないということを理解していただきたいと思います」

また、未だに結婚差別があるという事実を氏は述べられた。

「知人の息子が結婚差別に遭いました。相手方の親にいざ結婚と挨拶しに行ったときに大反対されました。結婚相手は妊娠しておりました。妊娠3ヶ月でしたが中絶せざるを得なかったんです。相手が被差別部落民という理由だけで、自分の娘さんを中絶に追い込んでいるんです。差別をすることで自分が不幸になることを気付かせる。その部分を軸に啓発活動を続けたいと思います」と締めくくった。

講演終了後、曹洞宗人権啓発相談員の五味澤真道師より総括がなされ、2日間の日程を全て終了した。

     (人権擁護推進本部記)

 

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