【人権フォーラム】管区役職員人権啓発研修会概要報告(3)


宗門では、各宗務所など人権啓発活動において、役職員が指導者的立場で活動していただくために、管区と人権擁護推進本部の共催で、宗務所・教化センター役職員人権啓発研修会を管区ごとに開催している。昨年、8月26日~27日に北信越管区、9月2日~3日に東北管区、12月17日~18日に九州管区の人権啓発研修会が開催されたので、概要を報告する。

 

北信越管区

・期日 8月26日~27日
・会場 ホテルメトロポリタン長野

第1日目、宗門の取り組みと現状報告の後、NPO法人ライフリンク代表の清水康之氏より「生き心地のよい社会にするには」と題してご講演をいただいた。

氏は、今日における自殺の実態とその実情に触れ、「今日、日本の自殺者は3万人を超えるが、その理由は過労や多重債務、経済不況、いじめや介護疲れ、差別や社会に対する不信感など様々である。これらの社会問題に追いつめられた末に、生きる道を閉ざされてしまうため、多くの人々が自殺で亡くなっている。自殺のきっかけは日常にあふれ、様々な要因が複合化し連鎖した結果起こるため、その連鎖を未然に断ち切ることこそが肝心であり、当事者への支援は不可欠だ。

現代社会の自殺の多くは、社会的な対策があれば避けることのできる死である。その意味で、自殺対策とは『生きる支援』『いのちへの支援』であると言える。人々の心の奥に潜む『生きる』『生きたい』という気持ちを引き出しながら、その気持ちに徹底的に寄り添い、見通しを立てていくための支援と立てた見通しを一歩ずつ進めていくための実務的な支援を両面で進めていく、当事者本位の生きる支援こそ必要だ」と述べた。

2日目は、長野県産業保健相談員の古越真佐子氏より、「パワーハラスメントについて」と題してご講演をいただいた。

「近年の厳しい労働環境のもとでは心のゆとりが持てず、人間関係が希薄化し、コミュニケーション不足は否めない。労働者の環境をよりよくするには、安心安全な職場で健康を維持しつつ働き続けられるかが最大の課題だ。

今日、自分の気持ちや考えを率直にかつ誠実に話し合える時間と職場風土がなくなってきていることがパワーハラスメントの引き起こされる要因だと考えられる。パワハラとは、労働者一人一人の人格や尊厳を侵害する言動を行い、働く環境を悪化させることだ」。

また氏は、パワハラの具体的な事例に触れた後、ハラスメントによる健康への影響について述べ「うつ病、胃腸障害、不安障害、PTSD(心的外傷後ストレス障害)などにより心身の健康が害されてしまうことが恐ろしい。パワハラは個人間の問題では済まされず、職場全体の問題としてモチベーションが低下してしまう。これによって労働を受ける権利が奪われてしまう、という現実を皆に意識として持っていただきたい」と強調した。

全体会では2日間の研修をふまえ、五味澤真道人権啓発相談員が総括し、その後、閉会式へ続き、研修会の日程を終了した。

 

東北管区

・期日 9月2日~3日
・会場 東京第一ホテル米沢

1日目は米沢市上杉博物館を訪れ、ガイドの案内によるフィールドワークを行い、上杉博物館内で上杉鷹山シアターを視聴した。

その後会場に戻り、米沢市教育委員会文化課・副主幹兼郷土資料主査の青木昭博氏より「弱者を思いやる殿様上杉鷹山」と題してご講演いただいた。

上杉鷹山は、米沢藩第9代藩主で藩政改革を進め、財政困難にあえいでいた米沢藩を立て直した名君として世に知られ、人権に対する意識も高かった。

当時は間引きが多く行われ、それを憂慮した鷹山は、止めるように家臣に通達したり、各家に子どもの人数に応じて特別手当を出したりして、間引きを防ごうとしたことも述べられた。

2日目は、弁護士の髙橋敬一氏より、「洛中洛外図から、日本の男女平等の歴史を読み取る」と題して、ご講演いただいた。

米沢市には、上杉本洛中洛外図屏風が国宝として保管されており、その屏風からは、室町時代の京都の様子を伺うことができる。その中で女性が自由に旅行をしている様子が描写されている。

また、ポルトガル人の宣教師であったルイス・フロイスは、その当時の様子を祖国と比べ、女性が自由に再婚、旅行、文学などを学ぶことができることを非常に驚いていた。これらのことから、この時代は、海外と比べて遥かに男女平等であったと説明された。

しかし、明治時代に入って家制度により女性の地位は低落し、法律の上でも不平等となった。

現在は、法的な女性の差別は解消されたが、家制度の名残は結婚式に残っていること、女性の政界進出数が海外と比べてまだ少ない等課題があると述べた。

その後、宗門の取り組みと現状が報告され、二日間の研修会を終えた。

 

九州管区

・期日 12月17日~18日
・会場 奄美サンプラザホテル

1日目は、奄美和光園医師であり奄美和光園園長の加納達雄氏よりご講演いただいた。

氏は、平成6年から鹿児島県鹿屋市のハンセン病施設、星塚敬愛園に勤めており、平成22年より奄美和光園に異動された。

入所当時は命を守ることを目標に仕事をしていたが、療養所の患者の生活に密着していることが分かり、それから生活を深く見ていこうと意識が変わったと述べられた。

これからは加齢や病気により、生活の質を落ちるのを、どのように防ぐのかが、大きな仕事になっていくと述べられた。

次に、奄美和光園入所者の山本榮良氏よりご講演いただいた。

氏は、昭和22年に14歳で同じくハンセン病に罹患した兄とともに、奄美和光園に入所した。

勉強も、治療も、じっくりできるという誘いに乗って入所を決意したが、実態は全く違い、劣悪な環境での生活を強いられたという。自身の経験をハンセン病国倍訴訟の意見陳述で話したことも述べられた。

講演後、納骨堂に移動してハンセン病物故者追善供養法要を厳修し、その後、今研修の大きな目的でもあった、園内施設の清掃作業を参加者全員で行った。

次に、宗門の取り組みと現状が報告された。

会場に戻り、ハンセン病友の会代表の森山一隆氏よりご講演いただいた。

氏は、元ハンセン病患者であり、昭和43年に同園に入所した。その頃には治療法が確立し、最後の入所患者となったと述べられた。

入所後しばらくして同園の自治会に所属し、入所者の生活が少しでも良くなるように様々な働きかけを同園に行ったという。

2005年に社会復帰を果たし、この会を発足させた。ハンセン病によって、隔離され悲惨な生活を送ってきた人たちの気持ちを風化させないという、強い思いが込められていると述べられた。

2日目は、NPO法人環境ネットワーク奄美代表の薗博明氏よりご講演いただいた。

奄美の人々は、1953年まで419年間外部から支配され、搾取・差別をされ続けてきた歴史を持つ。第2次世界大戦後、本州へ出稼ぎに行った際、様々な差別を受けたと述べられた。

関西に出稼ぎにでた友人は、結婚差別を受け自殺したという。それ以降、奄美に生まれたことを誇りに持つことと、自分たちが育ってきた環境を守るために、奄美の生態系が崩される危惧のある公共事業には、中止署名や、裁判所に訴えるといった活動をしてきたことを述べられた。

その後、閉会式が執り行われ、2日間の研修会を終えた。

(人権擁護推進本部記)

 

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