【人権フォーラム】平成26年度第2回全国人権擁護推進主事研修会報告


3月3日から3月5日の2泊3日の日程で、栃木県小山市内を会場に全国人権擁護推進主事研修会が開催した。

昨年12月、新たに人権擁護推進主事が任命されたことを踏まえ、曹洞宗の差別撤廃へ向けた取り組みの原点とも言える、部落差別問題をテーマにカリキュラムを組んだ。

午後1時半、開講式が行われ、開講諷経に続き、主催者を代表して、横井真之人権擁護推進本部次長が挨拶した。

次いで、日程説明の後、人権啓発相談員の渡辺祥文師より「宗門の人権啓発-仏道として学ぶ人権」と題してご講演いただいた。初期仏典に伝わる釈尊の言葉とされる「不害の教え」や両祖様の残した『宝慶記』『坐禅用心記』の言葉を引用され、人権を学ぶことと、一仏両祖の教えを生きることは同じであると語られた。

終わって宗門の取り組みと現状報告の後、人権啓発映像第3作「『差別戒名』について考える」の視聴を交えながら「宗門と人権と私」と題して、人権啓発相談員の本荘廣司師よりご講演いただいた。師の住職地である大阪府の大規模被差別部落の状況や、ご自身の経験に基づいた人権擁護推進主事としての役割や活動について、お話があった。その後、7班に分かれて分散会が行われ初日の日程を終了した。

2日目は、部落解放同盟栃木県連合会事務局長の戸田眞氏から、フィールド・ワークの事前学習を受けた。小山市近隣の被差別部落の産業と歴史、栃木県が実施した部落差別に関する意識調査の集計結果や、同和対策事業等についてご説明いただき、さらに、現在も無くならない差別の実例が報告された。

その後、4台のバスに分乗して、栃木市・傑岑寺に移動し、「差別戒名」墓石が合祀されている、境内の三界万霊塔前で被差別戒名物故者諸精霊追善法要を修行した。引き続き、栃木県連の方々の説明を受けながら実際に現地を歩き、同和対策事業の状況などを確認し、今でもある結婚差別の事例などもお話しいただいた。

次に、部落解放同盟栃木県連合会執行委員長の和田献一氏に「実践の観念論を糾す」と題してご講演いただいた。

和田氏は、被差別部落に関する情報には公式情報と非公式情報とがあると指摘する。非公式情報とは「こわい」「暗い」といった「マイナスイメージ」で、このことが部落差別問題を生む大きな原因であると語られた。そして、部落差別問題を引き起こす背景には社会システムの問題があり、その一つが戸籍制度であるという。近年、興信所と一部の悪質な行政書士や司法書士などによる不正戸籍取得事件を例に挙げ、その不備についても言及された。

さらに、現代社会における人権侵害の克服について、「現代は、力のある者が実力行使をすれば、力のない者は人権侵害にさらされる。力が支配する社会です。親の子どもに対する虐待も力が支配する社会。しかし、子どもの権利条約や児童虐待防止法が介入することによって、これが抑制されるのが、人権が機能する社会です。人権の法があっても、学んで機能させなければ何にもならない。したがって、人権をしっかり掲げて、これを学んで機能させていくことは、人権侵害を抑制させていくためには極めて重要です」と述べられた。観念論で人権問題を取り上げることの問題点に言及され、かつて栃木県で起きた寺院住職差別発言事件においても同様であったと話を締め括った。

終了後の分散会では、栃木県連合会の方々にも参加していただき、それぞれに学習を深めることができた。

最終日は、2015年度教区人権学習会教材である、人権啓発映像第17作『寄り添う~人間の尊厳を守る~』を視聴し、制作委員会座長であり人権啓発相談員の篠原鋭一師にご講演いただいた。僧侶の果たすべき役割について、「日本は無縁社会と言われているが、元々、無縁社会だったのか。そうではなくて無縁化してしまった。32000人が一人で、ひっそりと亡くなっているが、その方には両親や兄弟がいて、その存在が分からなかっただけ。無縁ではないはず。この無縁社会をどうするか。答えを持っているのは我々僧侶です。無縁を有縁化していく。これが、今やるべき人権問題です」と強く訴えかけられた。

日程の最後は、篠原相談員を司会に、本荘相談員、渡邊雪雄相談員、佐藤明彦相談員をパネリストとして、パネルディスカッションを行った。分散会で出された各班からの意見や質問に、パネリストが回答やアドバイスを行う形態であった。様々な疑問に対し、「一人で抱え込まず所長さんや教区長さん、時には前任の人権主事さんを味方に付けて」「『差別戒名』は、明らかに被差別部落の方だと断定できてしまうことが問題。通常の戒名における『位階の差』の問題と混同すると、問題の本質を見失ってしまう」等といった回答がなされ、全日程を終了した。

部落差別問題は、日本における最も根深い差別問題である。宗門でも「差別戒名」を授与し、差別に加担した歴史がある。今でもそれが身元調査に利用されるなど、新たな差別が引き起こされる危険性がある、今日的な問題である。

今回、新たに人権擁護推進主事が任命されて最初の研修会ということで、部落差別問題をテーマに企画したのは、差別の現実に触れ、この問題を他人事ではなく自分自身の問題として、正しく理解してもらいたかったからである。

今後も、部落差別を始めとするさまざまな差別問題の解消、人権の確立に向けて、宗門として取り組みを進めなければならない。

(人権擁護推進本部記)

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