【人権フォーラム】お知らせとお願い 年回表掲示と年忌法要の通知


年回表掲示等についての質問

本誌では寺院「過去帳」等の記録情報の適切な扱いについて報告してまいりました。(『曹洞宗報』第945号<2014年6月号「人権フォーラム」>・同第950号<2014年11月号「緊急のお願い」>・同第953号<2015年2月号「人権フォーラム」>等)

寺院「過去帳」等の記録情報については、寺院住職(宗教法人代表役員)以外の宗教目的外の閲覧・開示および公開の禁止が本宗の方針です。このことに関連して、当本部に寄せられる疑問や質問の多くに、寺院内に掲示されている年回表(年忌繰出し表)は、本宗の身元調査お断り等の人権擁護、とりわけ個人情報保護の基本原則に違背・抵触していないかどうかというお尋ねがあります。

宗議会でも年回表掲示の是非についての質問がありました。第120回曹洞宗通常宗議会(2014年6月)の通告一般質問では「年回法要を本堂などに掲示することについて、過去帳の閲覧禁止という原則に違反していないかということについて質問をいたします」という具体的な質疑です。

寺院内で檀信徒を対象にして、当年の年回法要該当者を告知する目的で戒名・死亡年月日・施主名等の個々の情報を掲示する一覧表を「年回表」等と呼んでいます。その情報のほとんどは寺院「過去帳」に記載されている情報と重複するため、過去帳の記載内容を寺院内とはいえ、実質的には閲覧・公表に供しているのではないかという心配からのご質問だと思います。たしかに真剣に検討すべき問題です。

 

宗議会の答弁から

前述の宗議会議員からの質問に対して、当時の人権擁護推進本部次長(伝道部長)は、次のように答弁し、この時点での本宗の指針と見解を表明しています。

「法堂への年回法要の掲示と寺報による年回案内について‥‥檀信徒の年回法要一覧が法堂に掲示され、それをすべて記録する者がいた場合、10年の記録を合わせると、少なくとも50年間分の過去帳を作成することが可能であります。したがって、檀信徒への年回法要の通知は、個別にすること、また、個別に送付することが難しい場合、法堂掲示の年回法要一覧には戒名を付さず、年回と没年月日、檀信徒名のみ記載することが望ましいと思料いたします」

本宗としては、寺院「過去帳」等の記録簿冊の管理・運用については、記述の通りの一定の方針がありますが、各寺院での年回表の実態については具体的に把握しておらず、その明確な方針も定めていません。ところが、その年回表として寺院内という限定はありながら、告知されている記載内容からすれば、寺院「過去帳」等の閲覧や開示禁止の方針に違う可能性は完全には払拭できません。

本宗の議会答弁に紹介されているケース―掲示されている年回表を写真撮影等で記録して、それを合成するということは、実際にはあり得ない杞憂・憶測にすぎない。そこまで疑いをもってはそもそも寺檀関係が維持できないではないか、というお叱りもいただいています。

年回表の掲示は、それぞれの寺院の宗教活動における必要性から現実に継続されているので、社会体面上都合が悪いから止めてくれという現場無視では困るという忠告もあります。

年回表が誰かに記録されて、それが公開されるなどというケースは本当にあるのでしょうか? 最近の宗内外の過去帳開示問題にかかわって、いささか神経質になり過ぎているのではないか―そう私どもも当初は考えていました。

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年回表の画像が公開されていた

楽観的な千の机上の空論よりも、たったひとつの事実に向き合わなければならないことがあります。

宗門寺院の年回繰出し表が、インターネット上で公開され、不特定多数の人々が常時閲覧できる状態にありました。

当本部が仏教寺院における年回表の実態の一端を調査していたところ、気になる画像が複数ありました。実は以前からその存在を知ってはいましたが、宗門寺院ではないだろうと思い込んであえてその情報源までさかのぼって調べるということはありませんでした。

当本部が把握したインターネット上の年回表画像には本宗寺院がなんらかの形で関わっていること、その中1ヵ寺については、年回表の詳細な記載内容まで判読できることが分かったのです。年忌別に戒名、死亡日のみならず施主名まで公開されているのです。

ただし、お寺のホームページやブログに直接掲載されている画像ではなく、地域コミュニティーが運営する広報のようなブログです。

そのお寺が管理する情報欄であれば、直接その寺院と住職にお尋ねすればいいのですが、その年回表画像を掲載した管理主体が判明しないので、さらに慎重に調査を進めなければなりません。

 

住職も知らない年回表アップ

宗門寺院の年回表の写真画像が掲載されているブログには管理責任者の名前も団体名も記されていません。連絡先としては唯一、電子メールアドレスが確認できましたので、当方の身分と趣旨を明かして、画像とその記事について質問と照会をしてみました。

返信がいただけないことも覚悟していましたが、当日のうちにブログ記事の投稿者で管理者の方からお電話がありました。

その管理者との会話で判明したことは、次の通りです。

第1 当該の宗門寺院が所在する地域の自治会役員で、あわせて当該寺院の檀家総代でもある

第2 当該の寺院は、兼務寺院で、その住職からはこの写真画像のブログ掲載の許可は得ていない

第3 地域自治会の案内サービスの一環で、寺院法要を含むさまざまな情報をブログで発信している。年回表画像も地域を離れて、寺を訪れる機会のない檀信徒への広報として掲載している

第4 今年の年回表も写真撮影して、ブログへアップ(投稿)する予定でいたが、時期を逸してしまった

このようなお返事でした。檀信徒それも寺の役員の方が善意で掲載したものであり、個人情報を拡散しようという別な意図があったわけではないことは確認できました。

当方からその管理者である総代の方に寺院「過去帳」の閲覧・開示・公開禁止のこと、身元調査につながる行為も応じてはならないことなどの本宗の原則や指針を口頭でお伝えしました。

総代の方は、即座に当方の趣旨を理解いただき、謝罪の表明と同時に、年回表写真の取り下げを約束してくださり、数時間後には写真画像の削除を当方でも確認しました。

ひとまずは、個人情報も含む年回表画像がインターネット上からは姿を消しました。(画像データの痕跡=キャッシュは相当期間はウェブ上で残ります)

 

反省と課題 

この出来事から当本部が反省したことは次のことがらです。

①寺院「過去帳」開示が、宗内外で問題になっているのだから、年回表の寺域外の公開はありえないというのは根拠のない単なる楽観的な思い込みであった

②宗門寺院住職がまったくあずかり知らない場面で、年回表が写真撮影され、それがインターネット上で公開されることは事実としてあり、杞憂でもなんでもないこと

③個人が発信できるメディア(通信媒体)が飛躍的に発達している昨今、これまでは想定もできなかった現象が起こりうるということ

④年回表の掲示が果たしている役割―それは年忌法要の告知と寺院からの勧奨であるが、伝統や従来の慣習は継承しつつも、昨今の宗教・信仰の個人化・プライバシー尊重との調整が必要になっている

⑤過去帳等の記録情報の管理の原則や指針を、寺院住職や寺族だけが知っているだけでは不十分で、お寺の役員、世話人はじめ檀信徒にも理解してもらう必要があること

 

年忌法要の通知方法について

年回の掲示や通知方法については、最終的には個々の寺院の現状を踏まえた上でご判断いただくほかないと思いますが、次の留意点を考慮してください。

第1 年回表の掲示がお寺の慣習や伝統であったとしても、寺院「過去帳」情報の管理からすれば、全面的に推奨はできない方法です。他に代替手段がないかどうかをお考えください

第2 年回表の掲示がやむをえない方法だとしても、通知いただく事項をある程度は厳選できないでしょうか。たとえば戒名等の掲示は、位階・院号等の世俗的な評価につらなる現実もあります

第3 個々の檀信徒への通知が当初はなじめないとしても、従来の地域社会ぐるみの集団的なお付き合いから、信仰の個人化が進行している昨今、年忌も含め第三者には知られたくないという希望も含め調整ください

(人権擁護推進本部記)

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