【人権フォーラム】狭山事件第3次再審開始に向けて


1963(昭和38)年5月埼玉県狭山市で一人の女子高校生が行方不明となり、身代金を要求する脅迫状が届けられた。当時の警察は、真犯人を捕まえるため40人態勢で張り込みを行ったが、真犯人を取り逃してしまう。3日後その女子高校生が死体で発見され大きな非難を浴びた警察は、被差別部落の青年たちに対して強制的な見込み捜査を行った。このことがえん罪を生んだのである。

宗門では、この事件を部落差別に基づくえん罪事件として、他教団と連帯し再審開始と証拠の全開示、事実調べを求めて署名ハガキ運動に取り組んでいる。釈放されてはいるが、いまだかけつづけられている石川さんの見えない手錠をはずすには、私たちが手を緩めることなく、裁判所は事実調べを、検察には全証拠を開示するように、さらに声をあげていかねばならない。

本年1月25日付の埼玉新聞に、「狭山事件『全証拠リスト開示』」と報じられた。袴田事件においては、証拠の全面開示が再審開始へと導いたことから、狭山事件においても全証拠リストが開示されたことは、第3次再審に向けて大きな前進と言える。

狭山事件で弁護団が求めた証拠のリストについて、東京高等検察庁(東京高検)は昨年10月の三者協議(裁判官・検察官・弁護団の構成)では開示できないとしたが、弁護団の反論により、東京高等裁判所も再検討した結果、ようやく東京高検が証拠リストを開示した。このリストに掲載されている証拠品は279点ある。石川さんが当時書いたとされるハガキなど44点の証拠の存在は、今日まで明らかにされていなかった。

重要証拠の中に石川さんが当時書いた上申書があり、これも初めて開示された。上申書の文字と真犯人が書いた脅迫状の文字が同一のものであると強引に決めつけられ、石川さんが逮捕されたことは、不条理としか言いようがない。被差別部落出身の石川さんは家計を助けるために、当時学校にもほとんど行くことができず、文字を獲得できなかった。鑑識鑑定士の齋藤保氏の筆跡鑑定では、上申書の文字と真犯人の文字の筆跡が全く違うことも今日までに明らかにされている。弁護団は「石川さんの筆跡は逮捕された当時、狭山警察署長宛に書かれた上申書で明らかになっており、女子高校生宅に届けられた脅迫状の文字とはまったく異なっている。はがきの筆跡も脅迫状の文字とは全く違うものであるはずで、石川さんの無実を強めるものだ」と語る。

昨年の日比谷野外音楽堂での狭山総決起集会で石川さんは次のように訴えた。

「私は32年間の獄中生活の中、ある刑務官と出会い、自分の無実を世間に広く訴えていくために、その刑務官から文字を学び、獲得し、えん罪を晴らす力とした。そして学んだ文字を使って世間に無実を訴えることができた。その刑務官は、私を助けるべく8年間もつきっきりで文字を教えてくれた。もし、その刑務官と私が出会わずにいたら、世間に自分の無実を訴えることができなかっただろう。だから、文字を知らなかった自分の無学さほど恐ろしいものはない。今では、文字の読み書きができるようになり、皆さんに無実を訴えることができ、裁判所の事実調べが始まれば、私の無実は明らかになる。今日までの様々な鑑定が自分の無実を証明しており、皆さんの力で、第3次再審で無罪が勝ち取れるように心からお願いしたい」

石川さんの心からの叫びである。

一昨年5月には、「同宗連(同和問題に取り組む宗教教団連帯会議)」加盟教団が築地本願寺に結集し、「石川夫妻の幸せを願う宗教者の集い―狭山差別事件の再審開始を求めてー」を行い、集会宣言文や事件の概要についてのパンフレットなどを街頭で配布し、世間に広く狭山事件の再審開始を訴えた。

皆さま一人一人の署名が大きな原動力になっていくことから、今後も石川さんのえん罪を晴らすため、請願署名ハガキ運動等を通じてご協力をお願いしたい。

このたび、証拠リストの全面開示がなされたが、全ての証拠が開示されたわけではない。積み上げれば2~3メートルにもなる重要証拠がいまだ全開示されていないことは、不正義と言わざるを得ない。証拠開示は、いつでも公正公平になされるべきである。5月下旬には第23回目の三者協議が行われ、弁護団はこれまでに開示された証拠を精査し、今後も証拠開示と事実調べをさらに求めていく決意だと報じられている。

5月21日、日比谷野外音楽堂で第3次再審開始に向けての総決起集会が行われ、石川さんを支援する人たちが集結した。「同宗連」をはじめ、狭山住民の会や部落解放同盟など多くの団体により石川さんを支援する輪は大きく広がっている。

えん罪52年を迎えた今、私たちは変わることなく、狭山事件を一人でも多くの人々に伝え、訴えていかねばならない。宗門として、裁判所には事実調べを開始するように、検察には全証拠を出させるように粘り強く求めていく。

石川さんの見えない手錠をはずすため、これからも支援し、このえん罪を晴らすべく、共に全力で行動を起こしていこう。

(人権擁護推進本部記)

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