【人権フォーラム】僧堂における人権学習について


本山僧堂及び専門僧堂では毎年度、人権学習会を開催しており、その中で人権擁護推進本部では「差別戒名」と「身元調査」について講座の枠をいただいている。
各僧堂において事前に曹洞宗人権啓発映像第4作『―宗教と部落差別問題Ⅳ―自らの差別意識を問う』を用いて部落差別に対する基礎知識と、曹洞宗がなぜ部落差別問題に取り組むのかということを学習してもらうようにお願いしている。

「差別戒名」の講座では、戒名の意義を再確認してもらうため、得度式において、仏弟子になるための戒を授かり、これらの戒を守ることを誓願したことでいただいた戒名は、まことに尊いものだということを説明した上で、人を尊び救うべき僧侶が、人を陥れ蔑む差別戒名を付してしまった事例を紹介している。
以前修行僧から「差別戒名が多く付けられた江戸時代は封建社会であり、えた・非人身分に対しては他の檀家の目もあるから仕方なく付けてしまったのではないか」という意見を受けたことがある。そういった思考に陥らないようにするため、同じ時代であっても差別戒名を付けなかった住職の話をし、どのような社会状況であっても、僧侶としての見識を保つことが重要であり「差別戒名」を付ける行為は絶対に間違っているということを強調して説明している。

「身元調査」の講座では、寺院に保管してある過去帳には人権侵害や個人の秘密に関する事項を一切記載してはならず、たとえ寺院住職であっても、宗教上や信仰の目的以外の利用や開示をしてはならないことを指導している。
また、被差別部落の方の身元が暴かれることによって、結婚・就職の際に不当な差別を受けることが、過去の話であると思われていることも多い。しかし、現在も続いている問題であるという意識を持ってもらうために、過去に曹洞宗の僧侶が身元調査に協力してしまった事例、結婚が破談になり自ら命を絶とうとした女性の事例や、人権学習を重ねて部落差別の問題を理解し「自分は差別なんかしない」と思っていたはずの行政職員が、自分の身内が被差別部落出身の方と結婚することになった際には、差別する側に回ってしまった事例などを紹介している。特に最近の事例を紹介することで、住職の情報管理の怠慢と見識が、人の命を奪うことがあるということを意識してもらうように心がけている。

日程の最後に分散会を設け、人権擁護推進本部も同席し、学習会を振り返り感想や意見を述べてもらっている。基本的に自由に意見を述べてもらっているが、その中で特に陥りやすいのが、部落差別を知らない人たち、忘れかかっている人たちに教えることは、差別を助長し、生むことになるといういわゆる「寝た子を起こすな論」である。
この考えは、宗教者を始め多くの人々の中に根強く残っているが、差別の事実を隠すことは、部落差別の問題の解決にはならず「寝た子を起こすな論」は、今後の人権尊重の社会づくりにとって、かえって差別意識の助長を招くということを説明し、活発な意見交換をしてもらっている。

部落差別問題は、曹洞宗の人権問題への取り組みの原点であり、他の差別問題も差別の構造は同じである。この学習会を通してさまざまな差別問題について学ぶ契機となることを切望する。

(人権擁護推進本部記)

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