【International】ヨーロッパの禅道場と食事


現在、ヨーロッパには北欧から地中海周辺まで300人を超える宗侶が、曹洞宗の教えを広くこの地で敷衍させる為に活動しており、また禅の修行の場としても300ヵ所以上の道場や寺院が運営されています。そこでは朝晩の坐禅や勤行などが勤められ、多くの方がたが、曹洞宗の教えと修行を、ここヨーロッパの日常の生活で実践しています。

その道場には日本の僧堂のように宗侶が居住し、振鈴から開枕まで修行できるような僧堂のような形態や、各都市の中心部に居を構え、朝と晩に道場を開放して、修行者各々が仕事に行く前、もしくは1日の生活の終わりに坐禅が修行できるシティセンターのような修行形態など、さまざまな形が見られます。

どちらの場合でも暁天坐禅、朝課諷経の後は、日本の僧堂と同じように粥・香菜(お新香)・ごま塩の3品を、応量器を使い、作法に則って朝の食事をいただくところがほとんどです。

40数年前にヨーロッパの地に弟子丸泰仙師の手によって曹洞禅が伝えられた時、師がマクロビオティック、特に玄米食を欧州の地で広めようとしていた日本人の敷地に間借りしていたという事もあり、その後、各地で坐禅を指導する際の小食には玄米粥が出されていたようです。今もなお、弟子丸師に師事していた宗侶が運営している道場では玄米粥を朝の行粥の際にいただいているところがほとんどで、粥と小食飯台の事を「GENMAI」と呼び、その伝統が受け継がれていることがうかがえます。

この「GENMAI」とは単に炊いただけの粥ではなく、玄米と数種類の野菜が1時間以上、ゆっくりと弱火でかきまぜられた粘りのある粥です。特にこの「GENMAI」が考案された当時はヨーロッパの曹洞宗が黎明期という事もあり、寺院や禅センターの内装整備や新しい建物の建立のような、体力を必要とを要する作務が主だったようですから、腹もちの良いものが望まれていたという事もあるようです。

また中食や薬石は、特別な機会を除いては菜食の略飯台がほとんどで、その調理法も、例えばオーブンを用いたり、こちらでの主食であるパンに合うような料理になっていたり、ヨーロッパ各国各地の風土や食文化に合わせたものとなっています。

こちらの料理の特徴として、日本の料理と違い、味付けに砂糖を使用することが少なく、その栄養価を補うため、略飯台の最後にはデザートが出されます。このデザートもその国によってさまざまな特徴があり、例えばフランスであればタルトやクレーム・ブリュレ、イタリアであればティラミスなどが典座寮で作られ、飯台に並びます。

また、広い敷地を有する寺院の多くではお寺独自の畑を持ち、ニンジン、ホウレンソウ、トマトなど日本でなじみのある野菜はもちろんの事、ルッコラ、ズッキーニ、アーティチョーク、変わったところではキウイなど、さまざまな作物が栽培されています。

もちろんこの畑仕事も、その寺院で生活する宗侶の大切な修行であり、朝の坐禅と朝課、そして行粥、掃除を終えた後は、畑仕事に取り組む者、典座寮で切り込みの手伝いをする者、寺院維持管理のための工事をする者、摂心等の受付事務をする者などに分かれて、1日中どの瞬間も放逸にすることなく修行しています。

この修行を支えるべく、そのお寺で典座を任されている宗侶は、道元禅師の著書である典座教訓をよく理解し、「喜心、老心、大心」の三心をもって典座の務めに当たります。その日の行持や作務の内容、そして修行している者の状態をよく鑑みながら、献立や作る量を熟慮し、同時にわずかな食材も無駄にすることなく、食材に敬意を払う事を忘れずに典座の任に当たっています。

食事をいただく側も食事の前には日本語、もしくはその国の言葉で「五観の偈」をお唱えし、感謝の心を持っていただきます。

日本とヨーロッパ、場所や食材、その料理法などは違えど、作る側にとってもいただく側にとっても、食事は宗侶にとって大切な修行であり、ここヨーロッパでも日本と同じように等しく道心を持って食事をいただき、弁道修行に精進しています。

(ヨーロッパ国際布教総監部庶務担当 松田英寿記)

 
応量器を使っての行粥 ドイツ寂光寺
 
僧堂飯台 イタリア普伝寺
 
畑での作務 フランス観照寺
 
典座寮での作務 フランス観照寺