【International】アパレシーダ観音無遮施食会


ブラジル国サンパウロにある両大本山南米別院佛心寺では、1月から11月までの毎月最終木曜日の昼12時から13時まで、アパレシーダ観音無遮施食会という祈祷法会が行われています。当寺に安置されています世界平和観世音菩薩をお祀りして厳修されるこの法要は、読んで字の如く、無遮―遮ることなく衆生に対し、施食―食を施す法要です。
アパレシーダという名前の由来は、ブラジルの守護聖人として祀られている聖母の名前です。その昔、サンパウロ州のアパレシーダという小さな町のパライーバ川近郊にすむ漁師たちは、毎年の不漁に悩んでいました。そんなある日、幾度か網を打っていると、胴と頭が2つに割れた聖母像が網にかかり引き上げられました。漁より戻った漁師の1人が聖母像を家に持ち帰り、胴と頭を接着し、祭壇に祀って祈り続けたところ、その後、漁師たちは大漁の幸運に恵まれたそうです。
また、この話を聞いた家族や近隣の人びともその聖母像に幸せを祈り続けたところ、他にも聖母像にまつわる数々の奇跡が起こりました。このことはブラジル全土に伝えられ、より多くの巡礼者がアパレシーダの町を訪れ、聖母像を祈るようになりました。今ではカトリック教からも正式にアパレシーダの聖母としてブラジルの守護聖人として公認され、ブラジルの祝日の名前にもなっています。
このアパレシーダの名称は、仏教のことをあまり知らない日系人以外の方でも、観音さまとは、衆生を苦しみから救ってくださる聖母のような方だと名称からも理解できるようにと、引用されたものです。
南米別院仏心寺が建立されてから、今年で53年、109年前より日本の移民政策により渡伯された方がたの心の拠り所となり、布教活動が行われてまいりましたが、それは必ずしもブラジル人社会においても開かれたものではありませんでした。近年の経済発展に伴う貧富の格差、それに伴う犯罪の増加により、安全面を考慮して、お寺への出入りは制限されていました。そこで、町行く人びとにお寺を知っていただこう、仏教に触れていただこうと、本堂正面を開放し、どなたでも参加できる法要、アパレシーダ観音無遮施食会を厳修することになったのです。

 アパレシーダ世界平和観音像

この施食会では、檀信徒より施主を募り、食材費として300レアル(1万5千円)を出資していただきます。前日より仕込みを行い、当日の朝7時より、仏心寺婦人部の方がたを含め、総勢30人の有志の方がたにお手伝いいただき、約250食分のカレーを心を込めて作ります。法要開始時間の正午、本堂正面には、労働者、学生、日系人、非日系人に関わらず多くの老若男女の方がたが参詣に訪れます。
法要開始前の列
法要では、祈祷太鼓による読経が始まり、参詣者は、世界平和、心願成就、災消諸除、諸縁吉祥と書かれた祈願札に名前を記入し、観音像前で焼香をしていただきます。そして、婦人部よりカレーを受け取り用意された椅子に腰掛けていただきます。用意された250食は1時間もすればなくなります。
飽食の時代といわれるこの世の中、お金を払えばなんでも買える時代に我われは食に対する有難さを忘れているように思います。しかし、このアパレシーダ観音無遮施食会では道元禅師さまが説かれた四摂法の教えを通して、食の有難味を教えてくれています。
食材費を出していただく施主はまさに布施行を、有志の方がたが参詣者のために心を込めて作るカレーは利行の賜物であり、食事を受け取る時や帰り際に発せられる「ありがとう。おいしかったよ」「ありがとう。また食べに来てください」等の言葉は愛語そのものであり、人種や施別、宗教を越えた人びとが集まりこの施食会を厳修しているその有様そのものが同事行であります。今この場で食事をいただけることに感謝し、自然の恵みに感謝し、この機会を与えてくださったアパレシーダ観音に感謝をする。アパレシーダ観音もまたその人びとの笑顔を見守ってくださっています。これこそが、アパレシーダ観音無遮施食会の意義であると思います。

(南アメリカ国際布教総監部庶務担当 小枝崇徳記)

焼香の様子 食事を振る舞う光景