【International】ハワイにおける寺院での食事:多種多彩な料理


ハワイの寺院での食事は、仕込みや調理を含め、お寺全体で行う共同作業です。それぞれの地域のお寺には自慢のおかずの一品があります。例えば、ハワイ州ハワイ島コナ地区の大福寺では、一世の時代からキャベツと油揚げの煮込みの料理が知られています。
一昔前までは、男性たちが屋外で薪を燃やし、熱くした大釜を使い、ほとんどの調理を担当していました。下着のシャツが汗にまみれ、タオルを鉢巻き代わりにし、エプロンは焚き火の煤で黒くなりながら、お米を炊き、大釜の中のキャベツと油揚げをかき混ぜていました。お寺の中の台所では、 炊きたてのご飯が女性たちの手によって、一斉にたくさんのおにぎりに形を変えていきました。その間、小さい子どもたちは、お母さんの傍で静かにおにぎりと沢庵を一切れもらえるまで待っていました。
おにぎり、キャベツと油揚げの煮付け、沢庵、そしてお茶、今でも大福寺の2世と3世の檀家さんたちは、法要の後にこの素朴で栄養がある食事を食べたことを大変懐かしく想っています。このキャベツと油揚げの料理は完全に姿を消したわけではありませんが、最近ではあまり見かけなくなりました。
今日、ハワイの寺院において、食事の際に用意される料理の定番は、ソーメンサラダ、中華風焼きそば、サンドウィッチ、ピザ、ラザニアというように、ハワイ州の多種民族社会を反映して、多種多様な伝統料理やそれぞれを融合した料理が出てきます。色々な民族料理を少しずつお皿にとり、「さあ、食べるぞ」という時にお皿を見れば、ハワイの地元の人たちが言うミックスプレートが出来上がっています。(1つのお皿にいろいろなエスニック料理が混ぜ合わさっているということです。
巻き寿司作り
寺族、婦人会のメンバーやお寺のボランティアが、メニューの構成、買い出し、そして調理まで行います。時には百人以上の来客を接待します。昼食の接待は毎月の定期法要のあと、お寺のソーシャルホールで行われます。
プラスチックのフォークと割り箸が長いバイキング形式のテーブルの端におかれます。そして食事が始まる前には、参加者全員が合掌し、お坊さんが時には英語、時には日本語で擎鉢之偈か五観之偈を先導し、一緒にお唱えします。
食事の時間は楽しいお喋りの時間でもあり、檀家さんたちはデザートにコーヒーかお茶を楽しみながら、お互いの最新の話題を語り合います。食事の後は、お坊さん、寺族、そして檀家の方がたが力を合わせて、片付けを始めます。ハワイ伝統のルアウタイプの食事会のしきたりが、日系の寺院まで伝わってきたようです。
ハワイの寺院では、今日でも日本料理は祝祭日に必ず食べるという認識が根強く残っています。年末には数多くの日系寺院で、餅つきが行なわれます。もっとも、最近では臼と杵は使わずに、餅つき機で行っている所が大多数ですが、大福寺では、餅つきの最初の一臼は、伝統的な臼と杵で餅をしっかりつきます。餅つきは数世代を一度にお寺に集める事が出来る行事であり、日本の大切な年末年始の伝統文化をハワイで保っていく行事になっています。
年末の餅つき
お寺で自家製の寿司を作ることは檀家さんの中で人気があります。巻き寿司、稲荷寿司、押し寿司、そしてハワイでダントツの人気があるスパムむすびは、お寺主催のバザーや盆踊り大会、婦人会基金集めの臨時特設売店で売られています。
そして、一世の時代からの伝統がまだ残っていると特に感じるのは、お赤飯と煮しめが祝賀会に出て来るときです。大福寺では、煮しめに使うコンニャクは、お寺の裏に自然に育っているコンニャクの根を檀家さんが収穫し、それを元にして作っています。
大福寺フードブース
ハワイの仏教寺院は、お寺を社交の場、コミュニケーションの場として認識しているさまざまな世代の家族から成り立っています。今日、日本から来ている家族やアメリカ本土から渡って来た仏教徒たちが、これらの「家族」と共に、お寺の各種行事に参加するようになりました。
ハワイは世界でも屈指の人種のるつぼです。お寺の接待の食事に出て来る料理を見れば、素晴らしい多種民族社会の一面を垣間みることができます。日本語をまったく話さない檀家さんが増えていますが、その檀家さんたちも、食事の前にはきちんと手を合わせ、箸を付ける前にきちんと“いただきます”と言い、食事が終われば、“ごちそうさま”と言います。多種民族社会における人びとのつながりの場として、寺院の役割は益々重要になっていくことでしょう。
(アメリカ合衆国ハワイ州大福寺 中出慈光記)