【International】平成24年度ヨーロッパ国際布教総監部主催研修会開催


去る10月19日~21日、フランス中部、ブロア市近郊の特別寺院・禅道尼苑で2012年度ヨーロッパ国際布教総監部主催研修会を開催いたしました。この研修会は現地法人会員(ヨーロッパ管内の和尚以上の法階を有する曹洞宗宗侶)を対象に、法式指導や宗学研修など、現地のニーズにあわせたテーマを設け、毎年秋に開催しています。
曹洞宗の海外布教の歴史はおよそ110年、世代を重ね、宗侶の数も増え、その教えは確実に広く深く伝播してきておりますが、一方で曹洞宗の伝統的な修行や教学をさかのぼって学ぶための設備はまだ十分に整っているとはいえず、日本まではるばる修行や留学のためにやってくる外国人も少なくありません。
特にヨーロッパにおいては、ハワイ、南アメリカ、北アメリカと比べ、開教40年とその歴史が浅いためか、日本の曹洞宗の伝統を学び、もっと取り入れていきたいという動きが活発です。2007年から毎年開単されている外国人を対象とした3ヵ月間の宗立専門僧堂(今年度は熊本県・聖護寺で開催)へも特にヨーロッパからの安居希望が多く、例年、総監部主催研修会にも強い関心が寄せられています。
研修会開講式
研修会はこの3年、曹洞宗の歴史やその教えについてより理解を深めてもらうため、講義形式で開催し、昨年度からは要望に応じる形で一般からの参加も受け入れるようにしました。一方で現在ヨーロッパの国際布教を牽引している立場である現地法人会員の宗侶には、今後のヨーロッパの曹洞宗がどのように発展していくべきかを模索するため、会議もしくは特別枠の講義を用意しています。
今回講師としてお招きしたのは、アメリカ、ニューヨーク州のサラローレンス大学教授である禅仏教研究者グリフィス・フォーク先生。現在は曹洞宗宗典経典翻訳編集委員会の編集員として『正法眼蔵』および『伝光録』の英訳版完成に向けて尽力いただいており、先に出版した「英訳版行持軌範」の翻訳編集にも携わっていただきました。「道元禅師の引用経典・公案」と題し、フォーク先生が今回教材として取りあげたのは『正法眼蔵』「看経」巻。この巻で道元禅師はインド・中国にわたるさまざまな仏祖やお祖師さまの看経のあり方を紹介し、それについてのコメントをされました。
禅道尼苑
ヨーロッパにおいても『正法眼蔵』は各国それぞれの原語で1つか2つ翻訳がなされており、多くの人に読まれています(その多くは英語に翻訳されたもののさらなる翻訳)。しかしそれらには引用経典や禅籍に関する解説が少なく、もしヨーロッパ人が独学で「看経」巻を読み参究を深めようとしてもその真意をつかむのはかなり困難であるはずです。すでに翻訳された数少ない日本人僧侶の提唱や学者の解説本だけに頼ってしまいがちとなり、自ずとその理解はその本に書かれた解釈だけにとどまってしまうと懸念されます。
フォルザーニ慈相総監からの挨拶
今回の講義の目的にはそういった現状があり、フォーク先生には「看経」巻で引用される経典や公案の説明だけではなく、講義の前半ではヨーロッパの寺院・道場でも日本の寺院と同様に毎朝読誦されている「般若心経」の空思想、また「法華経」で語られる方便などについて解説していただきました。これらはさすがに有名な経典とあって、翻訳も多く、ヨーロッパでもよく参究されています。そんななじみのある思想の位置づけを改めて原始仏教、大乗仏教、中国禅といった流れのなかで確認しながら、『正法眼蔵』での道元禅師の解釈を考察しました。
期間中の3日間はあいにくの雨でしたが、現地法人会員含めおよそ100人の参加者があり、この貴重な機会を逃すまいと長時間の講義ながらみな熱心に耳を傾けました。会場からは常にたくさんの質問が投げかけられ、時に話は脱線し、冗談も飛び交いつつ、お釈迦さまから道元禅師までの思想の流れを整理し、引用経典に遡り道元禅師の真意について理解を深める意味を知る、有意義な機会になったのではないかと思います。
グリフィス・フォーク先生(左)
(ヨーロッパ国際布教総監部)