【International】北アメリカ・ヨーロッパ各国際布教総監部管内研修報告


昨年の4月から12月まで、北アメリカ・ヨーロッパ各国際布教総監部管内の禅センター及び禅道場で研修をさせていただきました。私が訪問したのはアメリカ、フランス、イタリア、スイスの4ヵ国、計11ヵ寺で、主に禅センター・禅道場が中心です。

実は、私にとってこれほどの長期間を海外で過ごしたのは初めての経験でした。2年間総研ですでに英語の勉強をしてきたとはいえ、実際に英語だけの生活に慣れることができるか、正直なところ出発前には不安もありました。
4月の渡米後最初に滞在したのは、サンフランシスコ禅センターです。アメリカの人は本当に気さくな方が多いのですが、私は初対面の方を前にすると緊張してしまい、挨拶も堅くなってしまいます。現地の人は会話のスピードも速いので、始めのうちは普段の会話についていくのがなかなか大変でした。

そんなとき、禅センター内に住んでいたある芸術家の男性が話しかけてくれ、禅センターの食堂の同じテーブルで共に食事をしました。彼は日本で英会話教師をしていた経験があり、日本にも興味があったのです。彼は私の会話能力に合わせて難しい単語を避けながらゆっくり話してくれ、私の日本語なまりの発音を修正してくれました。それから彼と懇意になり、お互いの家族についての話をしたり、お互いの悩みなどについても話しました。さらに、彼からは禅センターについてもさまざまなことを教えてもらいました。そうするうちに、自分の会話能力にも自信がついてきて、どんどん自分から色々な人に話しかけるようになっていきました。禅センター滞在中、私は法話や講座、ワークショップなど、自分が参加できるものはすべて参加するように努め、そのおかげで、最初聞き取るのに苦労した朝の打ち合わせも1ヵ月後にはきちんと聞き取れるようになっていました。
アメリカ・サンフランシスコ禅センターの典座寮

アメリカ・グリーンガルチファームの昼食風景
サンフランシスコ禅センターの参禅者には、自分と同じくらいの若い人もたくさんいました。週に2回、経典・祖録の勉強会も行われていましたので、私はその勉強会にも出席しました。僧侶ではない普通の若者が経典・祖録を読み、自分の体験などに照らし合わせながら話し合い、お互いに理解を深めていく姿は、私にはとても新鮮だったのです。また、サンフランシスコ禅センターの開山である鈴木俊隆老師の著書『禅マインド・ビギナーズ・マインド』を総研の講座にて英語で学んでいたおかげで、それを彼らと共通の話題にすることもできました。

5月中旬にはグリーンガルチファームに移動しました。ここは、広大な農園を持っている禅センターです。ここでは無農薬・有機栽培の野菜を作る畑での作業が「作務」と位置づけられており、坐禅だけでなく、その作務も修行としてきちんと受け入れられていました。
ここでも多くの若者と共に修行しました。茶話会の際には、「日常生活の中にどう禅の教えを生かせるだろうか?」ということが話題になっていました。単に禅センターでの修行体験を求めているだけでなく、それを持ち帰って日常に生かしていこうという彼らの姿勢に驚きました。そこでは、禅センターでの体験に感激して涙を流している人さえいて、これほど真剣に修行し、禅に学ぼうとしている人が海外にたくさんいることに、私は感銘を受けたのです。

その後、6月にグレートバウ禅モナストリーへ移動し、1週間の摂心などを体験した後、7月中旬に、ヨーロッパへ渡りました。2ヵ月をかけて、主に、観照寺・禅道尼苑(以上フランス)・普伝寺(イタリア)・光雪寺(スイス)という四つのお寺に滞在しました。
この時期は夏の摂心期間にあたり、どのお寺にもたくさんの人たちが修行に来ています。特に禅道尼苑はたくさんの人が集まるお寺で、約260人が修行に来ていました。

ヨーロッパでは、坐禅会や寄付だけでお寺を運営していくことが困難な場合が多いので、僧侶が兼職していることも少なくありません。昼間別の仕事をしながらも、朝夕は僧侶として粘り強く坐禅の修行を続ける方がたの姿には、とても勇気付けられました。こうした多くの志ある人たちに囲まれて坐禅ができたのは貴重な体験でした。

9月中旬に再度アメリカに入国し、3週間ほど、ペンシルバニア州の平等山禅堂慈法寺に滞在しました。ここは普段は2人の僧侶がいるだけの、小さな禅センターでした。ここで私は、これまでの研修で経験したことをお話しするようにと依頼され、参禅者の方がたの前で15分間の話を2回することになりました。サンフランシスコやヨーロッパでのこれまで見聞・体験などの、日本語なまりの抜けない英語の話を、アメリカ人の参禅者の方がたは熱心に聴いてくださいました。その日、別れ際に参禅者の方から、丁重なプレゼントをいただいたばかりか、「あなたがここに来てくれたことにとても感謝しています。また戻ってきてください」という嬉しい言葉を掛けていただきました。このような貴重な経験の機会を与えていただいた慈法寺の関係者の皆さまに感謝するとともに、参禅者の方がたとの一期一会に感謝せずにはおれませんでした。

アメリカ・グレートバウ禅モナストリーで摂心を終えて

フランス・観照寺の皆さんの質問に応じる筆者(左端)

アメリカ・平等山禅堂慈法寺にて
この後、ロサンゼルス禅センターを経て、11月から12月初頭にかけて最後に滞在したのは、カリフォルニア州南部の陽光寺禅マウンテンセンターです。ここで私は日本に安居した経験があるアルゼンチン人の僧侶と共に毎日作務をしていました。彼と話しているうちに、なんと日本に共通の知人がいることがわかったのです。そこからぐっと距離が縮まり、彼とはとても親しくなりました。彼は、実は25年間も坐禅を続けているのですが、「私はまだまだ初心者ですよ」と言うのです。彼は放参の日でも坐禅堂で自主的に坐禅をしていて、そんな初心を忘れない彼の謙虚な姿勢に心打たれました。「彼より浅学である私が坐禅をしないわけにはいかない」と思い、放参日も休まず彼と共に毎朝坐禅をしました。

彼は、私が禅センターを去るときも、姿が見えなくなるまで最後まで見送ってくれました。「いつか是非アルゼンチンの私の禅センターを訪ねてほしい」という彼の言葉に、私はいつか必ず応えようと思っています。

この海外研修を通じて、多くの人の手助け・優しさに触れ、充実した研修生活を送りました。海外研修前、総研で2年間の準備期間を経たおかげで、スムーズに英語の生活に入れました。また、熱心に毎日坐禅に励んでいるアメリカやヨーロッパの方がたと共に修行することができたことは、私にとってかけがえのない経験となりました。この研修を通じてお世話になった皆さまや、陰に陽に支えていただいた方がたへの感謝の気持ちで一杯です。今後もさらに精進してまいりたいと思います。有難うございました。 
曹洞宗総合研究センター教化研修部門研修生 輝元泰文 記