【International】南アメリカ国際布教総監部管内における国際布教活動に携わって


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檀信徒の自宅にて法事

平成17年4月22日より平成26年12月31日までの間、南アメリカ国際布教師として赴任いたしました。

当時、大本山永平寺での安居を終えたばかりだった私は、南アメリカ国際布教師を拝命し、右も左も分からず、具体的な活動内容もよく把握していないまま「ブラジルの地に赴いてやるしかない」という決意だけを頼りに、出発いたしました。赴任先の両大本山南米別院佛心寺があるブラジル連邦共和国サンパウロ市のグアルーリョス空港に到着すると、采川道昭南アメリカ国際布教総監と佛心寺役員の女性の方が空港に出迎えに来てくださっていました。

ブラジルは世界最大の日系コミュニティがあることで知られていますが、ブラジルへの移民政策が始まった1908年当時は奴隷制廃止後、コーヒー農園で新たな労働力が必要となり、多くの日系移民がその労働に従事していました。その後、ブラジルは世界有数の農業国として名が知られるようになりましたが、その背景には日系移民が広大な原生林を開拓して農園を築きあげたことがあり、ブラジル農業の発展に大きな貢献を果たしました。それはブラジル人も認める日本人の功績であり、ブラジルにおいて日系人が尊敬される理由の一つでもあります。日本とは言語も文化も違うブラジルに住む日系人の方々は、日本国内に住む日本人とはまた違う雰囲気を持っていることに、日系移民の歴史の重みを感じさせられました。

ブラジルで布教活動を行っていく中で、日本とブラジルでは宗教に対する認識が全く異なるという点にも私は気づかされました。日本では、自分の信仰する宗教や宗派の違いを、自分自身の思いだけではなく家族や家系などが関わるものとして捉えている方が多いように見受けられます。しかし、ブラジルでは、信仰は自分自身に直接関わるものとして宗教を捉える方が多いように見受けられます。ブラジルの日系人の方は、亡くなった両親や、移民してこられたご先祖さまのために供養するのはもちろんのこと、「宗教とは自分の生活に何を教えてくれるのか」、「どのように導いてくれるのか」ということを重んじているように感じました。

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佛心寺での御祈祷

佛心寺では法要の際、15分程の法話をいたします。皆さまとても熱心に耳を傾けてくださり、質問を受けることもありますので、布教教化の遣り甲斐を感じていました。

その中で1番多い質問は、「どうして日本の仏教では人が亡くなってから、こんなにも先祖供養を行うのか」というものでした。私たち日本人は、小さい頃から家族や親戚がご先祖さまをお参りする姿を見てきたり、僧侶の法話を聞いたりして、自然とご先祖さまへ手を合わせるということが身についておりますので、大人になってもその意味や理由をあまり考えないのかもしれません。しかし、ブラジルでは近所にお寺がないため、先祖供養の行事を行う場所もなく、まして移住当初は、ご先祖さまをお祀りする余裕もなかったのではないかと思います。お盆やお彼岸、49日などの法要の云われや意味合いについて、折に触れて檀信徒の皆さまにお話させていただくと、大変喜んでいただきました。

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花祭り稚児行列

佛心寺では、暁天坐禅、夜坐を行じており、一般の方々にもご参加いただいております。「サンガカヤ」と称する参禅会の会員は80名程になっており、参禅会では、臘八摂心、報恩摂心を修行する他に、月1回の一日摂心も行じております。坐禅だけでなく、僧堂での進退や応量器の使い方、法式作法等も指導させていただいており、この参禅会から数多くの僧侶も誕生し、佛心寺では坐禅指導だけに留まらない僧侶の育成も行っております。

また、週末になりますと数多くの法事を行っておりますが、参禅者の皆さまにも法事の受付や、位牌のお預かり、お斎の準備などお手伝いをしていただき、法事を通して檀信徒の皆さまと触れ合い、違った角度から仏教を学んでいただいております。

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慰霊祭で法話する筆者

国際布教師を務めさせていただき今思うことは、国際布教と国内布教の根本は同じであるということです。檀信徒の皆さまが先祖供養をしたいと思う気持ちも、坐禅を習いたい、何かに縋りたいという気持ちも、人間が本来持つ信仰心から生じるものであり、その思いに寄り添い、ともに育んでいくのが布教活動であると思います。

世界のグローバル化が進むこの現代社会にあっても、曹洞宗のみ教えを伝え広める為には、まだまだ国際布教師の力が必要であり、現地での僧侶の育成も不可欠であり、今後の課題とも言えます。若い世代の方々には臆する事なく、積極的に海外に出ていただき、見聞を広めていただければと切に願います。

最後に、南アメリカ国際布教師として長きの間、宗門の関係者の皆さまをはじめ、多くの皆さま方のご厚情を賜り、無事に務め上げることができましたことを厚く御礼申し上げます。

(滋賀県長寿寺住職 越賀道秀記)

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