第2回曹洞禅フォトコンテスト 入賞作品


最優秀賞

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テーマ:未来に残したい情景
「スミ付祭り」
有田 勉

審査員 石橋睦美先生より(以下 石橋先生)
岩手県矢巾町の実相寺では、毎年二月の第一土曜日に炭つけ祭りが行われます。杉の葉を燃やして出来た炭を誰彼かまわず擦り付けて、災難厄除や無病息災を祈願する祭りです。この祭りは四百年も前に始まったと言う歴史ある祭事なのです。
作品は祭の様子を四枚の写真で構成し、時間経過を描き出してゆきます。一枚目は雪が積もる杉林で燃やす杉の葉を集める人々の様子を写した作品、ここでは寒さの厳しい季節におこなわれる祭りの用意が描かれます。次の作品ではすでに宵闇が迫る境内で集めた杉の葉を燃やし、炭つけ祭りに使う炭づくりの様子が描かれ、炎を中心に多くの人々が集まり祭りの高揚感が高まってゆく様子が表現されています。そして三枚目と四枚目では、ついに始まった炭つけ祭りの激しい動きが撮らえられます。炭で真っ黒に塗られた顔のクローズアップや、上半身裸になった若い和尚さんが炭を擦り付けられて歓喜する姿などです。
この四枚の作品から炭つけ祭りの臨場感が迸ってくるのです。きっと作者は、東北の小さな町の、お寺でおこなわれる祭りに参加する人々の素朴な姿を描きたかったのだろうと想像します。それには四枚の組写真でなければならない、そう考えた作者の発想が見事に成功した作品です。

 

優秀賞

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テーマ:未来に残したい情景
「吹雪の夜の山居倉庫」
阿部 薫

石橋先生より
酒田市にある山居倉庫は明治二十六年に建設された米蔵倉庫です。最上川船運の基地とされてきましたが、現在でもそのまま使用されている現役の倉庫です。自然環境を考慮した建築様式は冷涼で通気性に優れ、倉庫西側にはケヤキ並木があって日差しを遮り、米を保存するに適した環境が施されているのです。
作品は山居倉庫を吹雪の夜に撮影しています。酒田特有の粉雪が舞う倉庫はライトアップされているが、すでに夜の静寂感が周囲を包んでいる。そんな雰囲気を漂わす倉庫から、船運の人夫たちで賑わった時代の聲が届いてくるようです。


 

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 テーマ:未来に残したい情景
「百万遍念仏」
岸 孝則

石橋先生より
高知県津野町の明王院薬師堂で催される一年最初の仏事だそうです。村人が注連縄と大草履を作り、お堂に集まり、百万遍念仏をとなえ無病息災を祈願するのです。
作品は数珠を大きく写し込んだ構図を描き、円陣を組んでまわし動かす様子を表現しています。村人が握りしめる数珠に祈りの心が浸透する。昔は何処の村々でもおこなわれていたのです。我が家の墓があるお寺でも、私が幼かった頃に祖母に連れられて行った記憶があります。だんだん薄れゆく仏事ですが、未来に残したい光景でもあります。


 

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テーマ:お寺での光景
「心安らぐ場所」
黒川元子

石橋先生より
岡山県にある蓮福寺でたまたま見つけた光景だそうです。お釈迦様の香炉の隙間を棲家としているのでしょうか、二匹のカエルが同じような姿をして外を見ています。その姿はお釈迦様の番人のようでもあります。それにしても二匹のカエルは種類が違うように思えるのですが、仲良く同居している様がとても心地好く映ります。この作品では、人間世界の片隅に生きて共生する野生動物の健気さが表現されており、作品を見ていると心が安らぐのを覚えます。なにか、カエルから悟りを授けてもらっているように思えてくるのです。


 

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テーマ:お寺での光景
「ひな人形」
鈴木 元

袋井市にある可睡斎は室町時代初期に建立された古い曹洞宗のお寺です。その禅寺では一月に入ると雛人形が祭られます。作品を見ると、その壮観さが一目で分かります。

作品は雛人形をモチーフにして、雛人形の神秘的な優雅さを組写真で表現しています。三枚目の雛壇に飾られた雛人形の華やかさが圧巻です。そして一枚目と二枚目は部分的に切り取った人形を、フォトジェニックに写しました。四枚目の竹筒に入った雛人形は印象的で、作者が想像した竹取物語を彷彿させる映像になっています。


 

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テーマ:未来に残したい情景
「寒行」
沼中秀夫

身延山での撮影とありますから、山中の滝水に打たれ修行する人をモチーフにして、寒行の厳しさを描写した作品です。注連縄が張られた凍りつく滝の佇まいから、そこが極端に寒い環境であることが感じ取れます。その滝下に立って寒水に打たれる様は、まさしく無心の境地に達した人の姿です。
作品は藍色を帯びた色調を強調させたプリントを選択した為に、さらに寒さが伝わってきます。構図もシンプルで凍りつく滝を画面中央に配し、それを横に払うかのように張られた注連縄によって現場の緊張感が表現されました。そんな空間で寒行する信者の姿は、日本の信仰心の凄さを露にしています。

 

キヤノン特別金賞

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テーマ:未来に残したい情景
「寒修行托鉢」
石川真紀子

雪の鹿角市街を托鉢して歩くお坊さんと幼い我が子をモチーフにして、二人が心通わす様子を写した作品です。見ているだけでほころんでくるような心温まる映像です。托鉢するお坊さんを待ちわびた幼子が、ようやくやって来て会えて喜ぶ様子が見事に撮らえられています。また、遠くにもう一人の托鉢僧を配したことで遠近感と臨場感が加わり、冬の空気の冷たさが伝わって来るように思える映像になりました。

 

キヤノン特別賞

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テーマ:お寺での光景
「福の施し」
加藤一郎

きらびやかな僧服を身に纏った高僧が、節分の豆を信者に手渡している場面でしょう。ローアングルで見上げるように撮影したことで、画面に迫力が生じました。南足柄市の大雄山最乗寺でおこなわれる節分祭の賑やかさが画面から伝わります。


 

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テーマ:未来に残したい情景
「後光がさす」
橘 初雄

国分寺は奈良時代、聖武天皇の詔によって日本各地に建立されました。作品の撮影地は備中、現在の総社市にある国分寺です。五重塔に沈む夕陽を背景に、荘厳な情景を描き出しました。作者は後光が射しているようだ、とコメントしています。シルエットの五重塔が印象的な映像です。


 

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テーマ:未来に残したい情景
「春香」
沼田美奈子

日本の春を代表する美と言えば、やはり桜でしょう。平安の歌人、西行も桜に魅せられ歌枕の旅を重ね生涯を過ごしたひとりです。作品は下伊那郡にある駒繋ぎ桜です。雨が降る日の撮影だからでしょう。しっとりした空気感が画面に投影され、桜の淡い紅色が和の風情を浮き立たせます。


 

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テーマ:お寺での光景
「笑顔」
御供良一

利根郡にある吉祥寺の境内に置かれた石仏だそうです。表情がとても可愛らしく、それだけで心が和んでくるようです。作品は、その石仏だけを撮影した実に単調な構図なのですが、雪に埋もれそうなのに石仏は微笑を浮かべています。笑顔の石仏から幸福を願う人生観が学べるように思えてきます。


 

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テーマ:お寺での光景
「寒行の里」
山崎秀司

越前小浜市の発心寺では吹雪が舞って寒さが厳しい季節になると、寒行托鉢がおこなわれます。作品は、その様子をリアルな目線で追ってゆきます。四枚で組まれた作品からは、托鉢の厳しさとともに長い歳月をかけて育まれてきた、その土地の風土に馴染んだ信仰心が感じ取れます。

入選

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テーマ:お寺での光景
「父の背」
ペンネーム:3人息子の母

 

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テーマ:お寺での光景
「時空を超えて」
久保田修

 

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テーマ:お寺での光景
「忘れ物」
小嶋典生

 

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テーマ:お寺での光景
「好奇心」
澤野正孟

 

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テーマ:お寺での光景
「出山」
塩崎信好

 

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テーマ:お寺での光景
「見返り美人」
ペンネーム:tono

 

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テーマ:お寺での光景
「法要のあい間」
ペンネーム:湘南オールドボーイ

 

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テーマ:未来に残したい情景
「埋もれる石仏」
中尾美栄子

 

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テーマ:未来に残したい情景
「祈る人々」
中村忠雄

 

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テーマ:お寺での光景
「社寺めぐり」
ペンネーム:masa

 

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テーマ:未来に残したい情景
「干し柿づくり」
西野入孝男

 

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テーマ:お寺での光景
「仁王の豪足」
平野史孝

 

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テーマ:お寺での光景
「雨上がりのあじさい」
ペンネーム:ライト

 

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テーマ:お寺での光景
「般若心経を唱える」
峯岸誠一

 

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テーマ:お寺での光景
「返照」
宮田哲志

 

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テーマ:お寺での光景
「仏」
ペンネーム:Yovo

 

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テーマ:お寺での光景
「水行者」
山口元広

 

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テーマ:未来に残したい情景
「小さな冒険」
ペンネーム:KENJI

 

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テーマ:お寺での光景
「伝統を守る」
吉野宏映

 

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テーマ:お寺での光景
「祈り」
ペンネーム:おとのすけ

 

総評

今年で2回目になるフォトコンテストです。ようやく梅雨が明けたか、と思われるような7月中旬の暑い日に審査が行われました。そうは言っても審査会場は冷房が効いているから、暑さで厳正な審査に影響を与えると言うことはありません。

今年の応募作品は1369点、応募テーマは「お寺での光景」、宗派は問いません。それと「未来に残したい情景」、こちらは伝統、風習、文化、自然などをモチーフにした心安らぐ映像です。この2本立てのテーマにより応募作品に幅が広がり、結果、昨年を上回る応募数となったのです。

審査は前回同様、第一審査では私の目にとまった作品を分野ごとに選びだしました。次の二次審査では、その中から優秀作品をピックアップしてゆきました。実は、この作業が困難を極めたのです。なぜというと、落選させるには忍びない優秀な作品が多数あったからです。中でも組写真での応募が多く、確固たるコンセプトを持って映像に反映させた優秀作品が数点ありました。こうなると単品での作品は、よほど力強い映像表現が成されていなければ印象が弱くなります。なぜというと、組写真は数枚の写真によって物語性が強調されるからなのです。そのため、今回の最優秀賞に輝いたのはスミ付祭りを題材にして、土地に根付いてきた風習を現代に受け継ぐ情景として描いた作品になりました。

私は写真芸術と言うのは、リアリティーであることに尽きると思っています。それには記録性が加味されていることが不可欠なのですが、それを映像に反映させるには、作者の被写体に対する強い思い入れがなければなりません。これは単写真にもあてはまることなのです。要するに作者が表現しようとする信念を持ってカメラを向けた作品は、構図も完成度が高く素晴らしくなるのです。

このフォトコンテストの特色は、地球に生きるすべての生物の現状を表現した作品で埋め尽くされることではないか、と私は思っています。ぜひ来年も多くの応募作品が集まることを願っております。

審査員 石橋睦美