5月15日 夏安居


僧侶には、インドのお釈迦さま以来連綿と行われている「安居(あんご)」という大切な修行があります。これは、詳しく申し上げますと「九旬安居」ともいいまして、寺院に僧侶達が集まり、その中で90日間(九旬)修行を行うのです。現在の曹洞宗では、夏と冬の年2回の「安居」を行い、それぞれ「夏(げ)安居」「冬(とう)安居」と呼んでいます。また、安居の間は、寺院の外に出歩かないこととなっていますので、「禁足(きんそく)」ともいい、そのような「制約」を結ぶことから、安居に入ることを「結制(けっせい)」「結制安居」ともいいます。

「夏安居」が行われる時期ですが、旧暦では4月15日に始まり、7月15日に終わっていました。よって、盂蘭盆会(お盆)が7月15日前後に行われていたのは、結制安居の終わりの日付と深い関係にあります。ただ、明治時代以降は、暦が変わったため、5月15日に始まり、8月15日に終わります(地域によっては、1か月ほど前後する場合があります)。全国的には、8月15日前後にお盆を行う地域も多いことでしょう。

道元禅師は、この安居の式のことを詳しく『正法眼蔵』「安居」巻にて示され、正しい安居の制度を日本に持って来られたのは自分であると示されながら、次のように提唱されます。

 ただまさに九夏安居、これ仏祖と会取すべし、保任すべし。
 その正伝しきたれること、七仏より摩訶迦葉におよぶ。西天二十八祖、嫡嫡正伝せり。第二十八祖みづから震旦にいでて、二祖大祖正宗普覚大師をして正伝せしむ。二祖よりこのかた、嫡嫡正伝して、而今に正伝せり。震旦にいりて、まのあたり仏祖の会下にして正伝し、日本国に正伝す。
 すでに正伝せる会にして、九旬坐夏しつれば、すでに夏法を正伝するなり。この人と共住して安居せしは、まことの安居なるべし。まさしく仏在世の安居より、嫡嫡面授しきたれるがゆえに、仏面祖面、まのあたり正伝しきたれり、仏祖身心、したしく証契しきたれり。
 かるがゆえにいふ、
 安居をみるは、仏をみるなり、
 安居を証するは、仏を証するなり、
 安居を行ずるは、仏を行ずるなり、
 安居をきくは、仏をきくなり、
 安居をならふは、仏を学するなり。

このように、安居の大切さを説かれ、安居に参加する人は、仏と祖師の身と心を親しく明らかにしていると仰るのです。特に、安居の制度は、様々な行持や作法・技術の集大成という側面がありまして、実際に参加した人でなければ、全く分からないようなところがあります。よって、道元禅師は、「まのあたり正伝しきたれり」と、自分でその式に参加し、目の当たりに学ぶ大切さを説かれているのです。

僧堂

現在の曹洞宗では、各地にある修行道場(本山僧堂・専門僧堂)にて、毎年結制安居が行われ、場合によっては数百人の僧侶が参加する場合があります。また、修行道場以外にも、各地の寺院では、新しい住職が入られると、その時に合わせて安居の修行を行う場合があります。それを「晋山結制(しんさんけっせい)」といいます。本来は「晋山式」と「結制安居」という全く別の内容の修行だったのですが、合わせて行うのです(もちろん、別に行う場合も多くあります)。

したがいまして、曹洞宗寺院の檀信徒の皆様であれば、各々の菩提寺から、「晋山結制」「結制安居」などのお知らせが来る場合があると思います。だいたい、住職の交代は、20~30年に一度のこととなります。その際に行われる結制の修行ですから、一生に一度逢えれば幸運というほどの貴重な修行です。また、普段見ることの多い、喪儀・法事、あるいは施食会などの供養の席ともまた違った大法要になります。もし、案内が来たのなら、インド以来続く大切な御修行を行うのだと自覚していただき、率先してご協力ください。

僧堂