卯月(四月) うるいと馬鈴薯


うるい(ぎぼうし)生姜浸し 針生姜
馬鈴薯のお万頭 濃い口の詰め、白阿羅礼、絹さや

早いもので2000年を迎えたと思ったら、もう桜の花が咲く四月。寒さに弱い小生には、もっとも大好きな季節です。春といえば、精進料理の食材として似合うのはやはり山菜でしょう。わらびやぜんまい、タラの芽など、アクを抜いて食べればこんなにうまいものはありませんし、蕗や筍の香りと食感も、この季節でないと味わえない食材です。

さて、四月はもうそろそろなくなってしまうかもしれませんが、家庭でも気軽に食べられ、比較的山菜特有のアクも少ない「うるい」です。本当の名前はオオバギボウシ、漢字で書くと大葉擬宝珠となります。葉先の部分が宝珠(ほうじゅ)に似ているので、この名があるのではと思われます。

明るい草地などに生息しますが、現在では、ほとんどが栽培ものだと思います。たいへん柔らかく、歯ざわりと多少のヌメリが良く、クセのない山菜です。

食べ方は、ほとんどが賄でてから食します。葉柄という、いわゆる茎の部分を茄でてから干したものもありますが、これはやまかんぴょうと呼ばれ、保存食として重宝されています。汁の実、酢のもの、おひたしなど色々な料理に幅広く使用できる食材ですが、春を感じとっていただく料理法は、おひたしが一番だと考えます。写真の料理は「うるいの生姜浸し」です。サッパリとしていて食べやすく、作る側もそんなに手間をかけないですみますし、栄養価も高く、精進料理の原点でもある素材の良さを大切にし、技巧を凝らさないという教えにも忠実な料理だと思います。

作り方はいとも簡単、まずうるいを束ね、根に近い部分をタコ糸や経木(きょうぎ)を細く切ったものなどで縛ります。熱湯に塩をすこし多めに入れ、鍋の中へ、なるべく根に近い、比較的火の通りにくいところを先に入れ、それから青い部分も全部入れて茄でると、むらなく、葉の部分も青々と茄でることができます。茄で加減は少々硬いかな?ぐらいで、茄で上がったら今度は冷水に落とします。冷えたら軽く水気を切り、適当な長さに切っておきます。縛ってあるので、わざわざ揃える必要がなく、便利です。

次に、これを漬け込む汁を作ります。鍋に昆布と水を入れ一煮立ちしたら、塩、淡口醤油、味淋にて味を付けます。お浸しですので味淋の量はほんの少しにしてください。昆布を取り去り、冷水に鍋ごと入れて冷やします。冷えたら、その汁にうるいを漬け込めばでき上がりです。生姜浸しですので、卸した生姜をそのまま入れても、絞って露生姜にしても良いでしょう。写真は、上に針生姜を載せてあります。

もう一品は馬鈴薯の万頭です。ジャガイモはオランダ人によって、ジャカトラ、現在のジャカルタからもたらされたので、ジャガタライモ、ジャガイモ、と呼ばれるようになったのだそうです。男爵、メークイン、農林一号など多種におよびますが、ジャガイモの魅力はでんぷんを豊富に含んでいることでしょう。よく、茄でてから皮をむくのか、皮をむいてから茄でるのか、どちらが良いのかと聞かれますが、料理法によって違ってきます。例えば煮物に使用したい、今晩は肉ジャガでも作ろうか、というときは当然ながら、茄でて皮をむいたジャガイモではトロトロに溶けてしまうので、必ず皮をむいてから調理しなければならないのです。

反対にポテトサラダでも作ろうかというときは、わざわざ皮をむく手間などかけず、皮ごと茄で、皮をむけばよいのです。本題にもどりますが、馬鈴薯万頭はいったん茄でて裏漉しし、これを鍋にかけ、コーンスターチを少量加え、練り上げます。このとき少量の塩、淡口醤油にて味を付けておきます。練り上げて水気を除いたら、一口大の万頭にとり、焼目を付けます。万頭の中には、百合根と干椎茸の煮つけたものが入っています。焼目を付けたら、食する前に蒸し器にかけて蒸し、昆布出汁、濃口醤油、味淋にて味を付けた汁に、溶き片栗粉を混ぜて少々硬い目の餡(あん)を作ります。馬鈴薯万頭の上に餡をかけ、季節野菜の絹さやを前に盛ります。白のあられを餡の上に振って、でき上がりです。

ちょっと時間があるとき、家庭でもこれを作っておいて冷凍しておくと、急なお客さまに対応ができて便利だと思います。ぜひ、おためしください。