葉月(八月) 三葉と大和芋


三葉と大和芋 三葉の朧浸し、
湯三葉、朧昆布
大和芋の磯辺揚げ 卸し大和芋、天豆薄皮、
網素麺、美味出汁

うだるような暑さが続きます。夏バテで食欲が湧かない人もたくさんいることと思います。そこで8月は、サッパリと食欲も湧いてくる三葉をとりあげてみました。

ご存知の方も多いと思いますが三葉はセリの仲間で、その歯ごたえと香りが命です。アクが少なく食べやすいので色々な料理に多用されますが、三葉そのものの食感を味わいたいのならば、やはりお浸しにするのが一番だと思います。

今回は三葉だけではなく、ひと味工夫をして昆布で和えてみました。瀧(おぼろ)昆布を使用しましたので、名前も「三葉の瀧浸し」です。昆布はそのまま使用しても良いのですが、せっかくの三葉のシャリシャリ感を損なって、トロトロになっては美味しさも半減してしまうおそれがあるので、瀧昆布を炙(あぶ)ってカリカリ状にし、もみ海苔のように手で揉(も)んで、食べる直前に和えることにしました。

写真の上に盛ってあるものも、昆布を焼いたものです。三葉は茄で過ぎると食感が失われてしまいますので、ぜったいに茄で過ぎないようにしてください。もちろん生でも食べられる食材ですので、サッと湯に通す感覚でよいと思います。

お吸いものや茶碗むしなど、ほんの少量入れるだけで料理が引き立ってくる。料理を作るうえではたいへん重要な素材だと言えるでしょう。 家庭では三葉を茄でて、そのまま束ねて水気をギュッと絞り、適当な長さに切ってそのまま食器に盛り付け、ハイどうぞ!

食べる側は生醤油を注ぎ、三葉をほぐしなからがら少々辛(から)いのを我慢して口に放り込む。 こんな光景が目に浮かびますが、やはり真心で作る精進料理の本質を逸(いっ)しているような気がします。ぜひとも独自の浸し地(じ)(汁)を開発して美味しいお浸しを作るよう心掛けたいものです。

日本料理ですと、鰹と昆布でとった出汁(だし)に淡口醤油や少量の塩、ときには味淋などを少々入れ、一煮立ちさせて冷ましてから使用しますが、精進料理はあくまでも昆布出汁にて浸し地を作らなければなりません。 よく「出汁の量と醤油の量の割合は」と聞かれますが、味つけは千差万別、家庭で美味しいと評価されればその料理は世界でひとつ、その家庭でしか味わえない天下一品の料理なのです。

よく横文字でレシピレシピともてはやされ、料理の本にも分量が分かるようにキメ細かく書かれていますが、あれはあくまでも目安でしかなく、その通りに糧(はか)って料理を作っても、真の美味しさにならないと断言できます。ぜひ、独自の美味しい浸し地を作ってください。要は醤油を昆布出汁で埋(う)めるだけのことなのです。

さて、もうひとつの素材は大和芋です。

卸して玉子を入れ、青海苔と山葵を添えて、お醤油をかけて食べる。あるいは繊切りにして、酢醤油などでいただく。だいたいの家庭では、このような食べ方をしているのではないでしょうか。

写真の料理は大和芋の「磯部揚」です。

作り方はごく簡単。卸し金ですり卸した大和芋を海苔で、海苔巻を作るようにくるくると巻き、トントンと出刃庖丁で叩き切りにして、食べやすい大きさに切り、即座に油の中に放り込んでいきます。

早く油に入れないと海苔もぬれてきますし、大和芋も流れてしまうので、素早く料理することが秘訣です。ふんわりと浮かんできて大和芋が少しきつね色になったらできあがりです。お菓子感覚でそのまま塩を振っていただきます。お吸いものなどの椀種(わんだね)にもなります。

海苔の風味と大和芋のサクサク感が何ともいえぬ一品だと思います。

大和芋は、よくつなぎに使用する大切な素材でもあります。特に精進料理では欠くことができません。

代表的な料理の「ぎせい豆腐」や「がんもどき」には、欠くことのできない素材です。

しっとりとした豆腐を作るには、この大和芋を入れなければ決して美味しい「ぎせい豆腐」などはできません。

長芋と大和芋を間違える人がいますが、長芋では水分が多くて料理のつなぎにはなりません。必ず、大和芋を使用してください。