如月(二月) 干椎茸


    黒干椎茸の煮凝り 干椎茸、木の芽
干椎茸の手綱寿し 干椎茸、干瓢、赤蕪、胡瓜
干椎茸の霙煮 焼餅、京人参、軸三葉金、
干椎茸、辛子
   
   

「干椎茸をいただいたのですが、どのように料理に使ったらいいのか……」。よく家庭の主婦から聞かれる言葉です。

暮れのお歳暮でもらった干椎茸、何気なく台所の棚を開いてみると、一昨年にどこからかいただいた干椎茸も開封せずにそのまま、なんてこともままあるのではないでしょうか。乾燥ものですから、すぐには使わず、そのうちついつい忘れてしまうようです。もちろん日持ちはしますが、長い間湿気のある台所の戸棚などに入れっぱなしにすると、黄ばんできたり、カビが生えてきたりして、料理に使っても、あまり美味しいものには仕上がりません。

さて、干椎茸にもいろいろと種類がありますが、料理屋などで使用するのは「冬菇(どんこ)」という肉厚のもので、特に「天白冬菇(てんぱくどんこ)」と呼ばれる、笠の上に白い亀裂が入っているのが、最も上等だといわれています。

ところで、干椎茸の戻し方ですが、一般的には「水戻し」「ぬるま湯」「熱湯」とに分かれると思いますが、熱湯で戻すときは、少量の砂糖を入れると戻りがよくなります。だいたい二~二時間くらいで戻ると思いますが、漬ける際には椎茸が浮いてしまわないように、落とし蓋かラップをかぶせて軽い重石を載せておきましょう。

干椎茸は、生の椎茸にはない歯ごたえや、旨み・香りがあり、当然その戻し汁も大切な調味料となります。ただ、ゴミやほこりが付いていますし、最初の漬け汁は臭いも強く、あまり美味しい汁とはいえないので、二十分くらい漬け込んだらいったん捨てた方が良いでしょう。再度漬け込む汁で十分に干椎茸のエキスは取れますのでご安心を。

さて、干椎茸の料理法ですが、単体で使われることはほとんどなく、他の野菜や肉類とともに煮しめに使われることが多いと思います。特に、先ほどの干椎茸の戻し汁と、煮干しの出し汁で含めたお煮しめの干椎茸は、たいへんおいしいと思いますし、精進料理では煮干しは使えませんので、昆布を入れて炊いても結構なお味になります。

写真にある一品は、干椎茸の煮こごりです。煮こごりといったらお魚と相場は決まっていますが、ここでは、干椎茸を使ってみました。

干椎茸を戻し汁とともにじっくりと炊いて、ほとんど汁を残さないように仕上げ、熱いうちに流し缶(家庭では弁当箱のようなものでもよいでしょう)の中に幾重にも重ねて隙間のないように敷きつめ、重石を載せて冷めたらできあがりです。場合によっては、残り汁に寒天を溶かし込んだものを流し入れても良いと思います。

もう一品は、椎茸の黒、赤蕪の赤、胡瓜の緑、干瓢の白と、色鮮やかな「たづな寿司」です。

干椎茸は、なるべく大きくて身厚のものを前述のように炊き、薄く小口に切ります。赤蕪と胡瓜も、干椎茸の大きさに含わせて短冊にします。胡瓜は軽く昆布塩に漬け込んで、汁気を取り除いておくと良いでしょう。干瓢も、あまり醤油を入れないで白く炊いて、同様の幅、長さに切り揃えます。

次に、ラップを敷き、その上に酢炊きした白板昆布を広げて、先に準備した具を斜めに順序よくそろえて並べます。そして、好みによって木の芽や胡麻、あるいは粟のようなものを混ぜた寿司飯を棒状にして、ラップの上に並べた具の上に載せ、くるくると巻いて、ギュッと絞めます。しばらく置いて、そのまま包丁で切り、まわりのラップを取って盛り付けます。

さらにもう一品は、大根卸しを使った「霙腕(みぞれわん)」です。昆布出し汁と干椎茸の汁を割ってお吸い物を作り、その中に臭いを取り除くため、裏漉しの中、あるいは布巾等で包み、水洗いした大根卸しを入れ、少量の葛を流し、「霙汁」にします。そして、お椀に焼きたてのお餅と干椎茸、京人参、三ツ葉を載せ、熱々の「霙汁」を注ぐとできあがりです。

留意いただきたいのは、干椎茸の味付けを薄目にしないと、せっかくのお椀が台無しになってしまうことです。お椀に使う場合は、煮汁がヒタヒタになるくらいの含め煮にしてください。

上等の輪島塗などの漆器を使うときは、お椀の中に薄く切って煮た大根や蕪を敷いておくと、お餅がくっつかなくて良いかもしれません。