睦月(一月) 金柑(きんかん)


金柑の甘煮  
金柑万頭 薄切り金柑、薩摩芋、菊菜、銀餡、山葵

早いものでアッという間に世紀末が過ぎ、2001年の始まりです。今年は果実をテーマに精進料理の本来の器である漆器(しっき)に盛り付けることにしました。

柑橘系(かんきつけい)の素材も含め、総称して「果物(くだもの)」と呼ばれる食材をどのように精進料理として仕上げていくか、読者の皆さんが「作ってみたい」と思われるようなものにしたいと思っております。1月は「金柑」をとり上げてみました。 家庭ではあまり口にしない柑橘類ですが、料理人はけっこう使うことが多いのです。

特に葉付きの金柑は、その姿が美しく、緑の葉と金柑の黄金色がとても料理の中で栄え、葉付きの部分を蓋にして、中をくり抜き、その中に季節の料理を入れて蓋を添えてお出しすると、食欲も湧き、見栄え(みばえ)も良く、お客さまにとても喜ばれます。金柑は酸味が強いので、家庭では敬遠されがちなようですが、皮の方は少々甘く、とても食欲を増進される香りがします。

今回は金柑の料理を2品用意しました。
1品目は「金柑の甘煮」ですが、その前に、よく料理人の間で作られる「菊花金柑」を簡単に説明しましょう。 まず金柑の腹の部分に縦(たて)に茶筅のように庖丁を入れ、やさしく上下をつぶして種を取り去り、いったん茄でます。次に酸味を取るために少し水に晒(さら)してから蜜(みつ)で含ませ、蒸し器で蒸してからふたたび蜜で含ませてできあがりです。
蒸すという作業を行うのは、余分な水分を取り去り、金柑の硬い皮を軟らかくするためです。さて、本題に入りましょう。今回は少し技術を駆使して、あの小さな金柑の皮をごく薄くむいて皮の硬さの抵抗をなくすことにしました。2ミリ幅ぐらいに丁寧(ていねい)に皮をむいていきます。これがけっこうだいへんな作業かもしれません。厚くむいてはせっかくの美味しい皮の部分が台なしになってしまいますので、良くきれる庖丁を使用して、チャレンジしてみてください。
金柑の皮をむいたのち、さきほどの菊花金柑と同様、いったん茄でて水に晒し、葉の付いていた所に穴を開けます。そしてひと粒ひと粒種を竹串の先などで捜しながら、金柑の姿を崩さないようゆっくりと丁寧に取り出してから蜜に漬け込んでください。蜜が含まれてふっくらとしてきます。あまり酸味を抜きすぎると美味しくなくなりますので気を付けてください.。

2品目は金柑を薄切りにして、芯の薩摩芋(さつまいも)の回りに金柑を付けた「金柑万頭(まんじゅう)」です。金柑をごく薄く切り、八方出汁で煮含め、そののちよく水気を取り去ります。この時の金柑は甘く煮てありません。普通のお吸物より少々濃い目の出汁で焚いてあります。

別に薩摩芋を用意し、皮をむいて、蒸し上げ、裏漉しをします。少量の塩と砂糖で味を調え、よく練ってから、大きめの団子にします。次にサランラップの上に、薄切りにして煮含めた金柑をきれいに並べ、その上に先ほどのさつまいもの裏漉しを載せ、万頭のように丸めます。
そして金柑に焼き目を付けるために、軽く上火(うわび)の焼台にて焼き目を付けます。次に餡の作り方ですが、昆布出汁に淡口醤油、味淋を入れて淡口に味を調え、吉野葛でとろみをつけます。 器に万頭を盛り、爾をかけ、菊菜を添え、天盛りに山葵(わさび)を載せます。金柑の香りと薩摩芋のうっすらとした甘味が微妙にマッチしてとても美味しいですよ。

お正月の家族団欒(だんらん)のひと時、金柑料理を1品加えてみてはいかがですか。きっと喜ばれることは間違いないと思います。