文月(七月) 干瓢(かんぴょう)


結び干瓢の
あちゃら漬け
結び昆布、水茄子、花山椒
干瓢の野菜巻 牛蒡、隠元、人参、友地餡、
溶辛子
干瓢と冬瓜の
お吸い物
干瓢、冬瓜(博多押し)、
蓴菜、花柚子

夕顔の果肉を帯状に削り取り、天日に干したものを「干瓢」といいます。夕顔は生よりも、干した方が風味と味が良くなるので、生の姿は特に都会人にはなかなかお目にかからないようです。

「干瓢巻き」は寿司屋の重要なネタであり、この干瓢巻きがまずいと、店の評価を落としてしまうといっても過言ではないそうで、気をつかっておいしい干瓢を炊きあげることが大切だとのことです。

干瓢の良しあしを見分けるのは、まず異常に黄ばんでいないこと。黄ばんでいるのは酸化しつつあり、戻してもふっくらと戻らず、味も落ちている場合が多いようです。また、見た目にも乾燥しすぎているものは、古くなりすぎているきらいがあるので注意してください。

それではまず、干瓢の戻し方からです。

大きめのボールにたっぷりのお湯を張り、その中に干瓢を浸し、落とし蓋などをして冷めるまで待ちます。これで八分通り干瓢は戻っていますが、いったん戻し汁を切り、干瓢に少量の塩をふって「塩もみ」をした後に塩分を水で洗い流し、再び湯に浸せば、完全に戻った状態になります。これで下ごしらえは十分です。よく水を切り、用途にしたがって調理に取りかかります。

七月の料理は「干瓢のあちゃら漬」です。「松前酢(まつまえず)」といって昆布出し汁であわせた甘酢を作っておきます。戻した干瓢は、長さを決めてクルッと結んでおき、昆布も細長く切って松葉に結びます。水茄子は食べやすい大きさに切ってから生のまま昆布糀(こうじ)に漬けておきますが、長時間漬けておきますとシナシナになってしまいますので、多少歯ごたえのある方がおいしいです。

干瓢と昆布を松前酢に漬け込み、水茄子だけは食べる直前に軽く漬け込む程度にし、天盛りに青く炊いた花山淑を添えます。

二品目は「干瓢の野菜巻」です。

今回は牛蒡、人参、インゲンを使用していますが、ありあわせのあまった野菜で十分です。牛蒡と人参は細めの拍子木に切り、いったん茄でて含ませておきます。インゲンも長いまま少々硬めに茄でて冷水に晒(さら)します。

三種を芯にして、戻した干瓢でクルクルと巻いてゆきます。しっかりと巻くには、二重か三重ぐらい巻いた方がいいでしょう。このときの干瓢は、なるべく幅のあるものを選ぶと巻きやすいようです。

これを昆布出し汁にみりん、砂糖、淡口醤油、濃口醤油にて味をつけ、芯に味がしみるまで、じっくりと煮ます。同じ甘みでも砂糖を使うと味に深みが出るのでみりんと併用しますが、ほんの少々でけっこうです。また、同じ醤油でも濃口醤油を使用するのは味にまろみが出るからで、これもあまり色を濃くしては、せっかくの干瓢の白さがもったいないので小量で味をつけます。煮上がったらひと口大に切り、切り口を見せて盛りつけます。煮汁に吉野葛か水溶きの片栗粉を流し入れて餡(あん)を作り、野菜巻きの上にたっぷりめにかけ、辛子の溶いたものをちょっと添えます。あまり芯の方に味がしみ込んでいない場合でも、これで十分においしくいただくことができるでしょう。

三品目は「干瓢と冬瓜のお吸い物」です。

干瓢はなるべく幅広の身の厚いものが良いでしょう。お吸い物ですから干瓢の歯ざわりがあまりない方が食べやすいので、干瓢は時間をかけてふっくらと柔らかくなるまで戻します。これを今度は薄い味にて含ませます。別に冬瓜を用意し、冬瓜の皮をごく薄くむき、青い部分を残しておきます。冬瓜の青いところを残すには、塩とみょうばんを青いところにこすりつけて茄でると色が鮮やかに出てきます。茄で上がったら色を止めるために素早く冷水にとります。冬瓜はほとんどが水分ですので、このままでは味も素っ気もないので使えません。別に昆布出し汁で味をつけた汁に漬け込み、味を含ませます。

煮てもよいのですが、青い色を残すときはこのように冷たい煮汁に漬け込んで、味を含ませます。今回はお吸い物ですので薄味がしみ込んでいればいいでしょう。そして、冬瓜と干瓢を博多帯のように、交互に重ねます。

お客さまに出す前に、アツアツの蒸し器に入れ、お椀に盛り、色出しした蓴菜(じゅんさい)を入れてお吸い物を注ぎます。真夏には冷やしても格別な一品です。