文月(七月) 防風と薩摩芋


防風のサラダ 揚げ湯葉
胡瓜
二十日大根
ちぎりレタス
薩摩芋の甘煮 満願寺唐辛子 黒胡麻

七月は防風(ぼうふう)と薩摩芋(さつまいも)です。

防風は特殊な香りとほのかな辛味があり、普通は日本料理の中で刺身のツマや和え物、そして酢の物などのあしらいなどに使われることが多いようです。

今回は、この防風をサラダ風に仕立ててみました。

防風にも普通の防風と浜防風というのがありますが、浜防風の方が茎が太く、料理をするにはこちらの方が適していると思いますので、今回は浜防風を使用しました。

茎の太い部分は、いったん茄でて甘酢に漬けています。こうすることにより、紫色の部分が真赤に変色するので、茎の太い部分と紅白になり、そのコントラストが良くなりますし、サラダにするので軽く酢に漬けた方が美味しいと感じるからです。

先の方の葉の部分はそのまま生で食するのですが、姿がそのままではあまりおもしろくありませんので、躍動感があるように錨(いかり)にしてみました。

錨防風の作り方は、茎の部分を十文字に針で裂(さ)いて、冷水に落とすと、茎の部分がくるりと丸まって、錨の形になります。

材料は他に胡瓜の小口切り、通常ラレシとかラディシュと称される二十日大根の薄切り、レタスを一口大にちぎったものと、短冊に切って揚げた湯葉を使用しています。

サラダといえばドレッシング。サラダオイルと酢を使用するのが常ですが、このサラダはあまり酢を使わないで作りました。

作り方はまず、材料をサラダ油ではなく、オリーブオイルにてからませます。全体にオリーブオイルがからまりましたら、この時点で味付けをします。味付けは塩と胡椒だけで調味します。精進料理に胡椒はどうかとも思いますが、あまり効きすぎないようにしてください。

塩は精製塩ではない天然塩、胡椒は黒胡椒を挽いたものが良いでしょう。

これでも十分美味しくいただけますが、食べ際にほんの少し、小さじ半量程度のバルサミコ酢をかけると風味が増します。

クレソンなどもこの方法でサラダにするととても美味しいですよ。

古来より防風は中毒を防ぐと言われますが、なぜか古くからなま物のあしらいに使われ、現在でも刺身のツマには多用されるようです。防風には毒消しの効果もあるんですね。

次に、ギアマンの蓋物に入っているのは薩摩芋の甘煮です。

昔は「ふかし芋」「イモメシ」「イモガユ」など、お米が不足している時の代用としてよく食べた思い出のある人も多いと思います。焼芋屋さんもいまではあまり見かけませんが、けっこう高価な品になっているようです。私の若いころには屋台で流している焼芋屋さんがたくさんいました。

「♪石焼芋~ポクポク」などとさけんでお客を集めていたのを思い出します。また、看板に「八里芋」「十三里よりうまい」などと書かれていましたが、子どものころは何のことかさっぱり理解できませんでしたが「八里芋」は九里(栗)に近い味、「十三里」は「九里(栗)四里(より)うまい」との意味だとのことで、なるほどと納得したものでした。薩摩芋は地方での呼称で、総称は「甘藷(かんしょ)」というのが本当のようです。

甘藷は色々と用途が多く、昔から「葛」「酢」「味噌」「醤油」「焼酎」など、あらゆるものを作ってきました。料理でも昔は手作りで甘藷から「羊羹」や「金頓」などを作ったのを憶えています。写真はごくオーソドックスな料理で、薩摩芋を皮ごと甘く焚いたものです。

いったん蒸して蜜に漬け込むのも良いし、色々と料理方法はあると思いますが、精進料理では直(じか)に焚いた方が良いと思います。きれいに洗った薩摩芋を水から茄でて、竹串で刺して火が通ったら、お好みで「ザラメ」や「白糖」あるいは「グラニュー糖」や「黒糖」を使用します。甘さも好みで調節してください。レモンなどの柑橘類を入れて焚いても、ちょっと変わった味が楽しめます。この甘煮にした薩摩芋を適当な大きさに切り、火に炙って(あぶって)食べるのもオツだと言う人もいます。試してみてはいかがですか。

添えてある青味は、満願寺唐辛子といって、まったく辛くない唐辛子です。唐辛子は精進料理にはご法度ですが、品種が違いますのでだいじょうぶ。焼いてタレに漬けて添えてみました。