水無月(六月) 蔓菜と里芋


つる菜のお椀漬汁仕立 胡麻豆腐 春子椎茸
新里芋絹かつぎ 枝豆塩茹 風味塩

風薫る季節から一変してうっとうしい梅雨を迎えます。なぜかこの季節になると食欲も半減してしまうようです。真夏の猛暑に耐え抜くためにもこの時期にきちんと体力作りに励み、体調を万全に管理しておくと良いと思います。

さて、今月は「ツル菜と里芋」です。

ツル菜といってもどのようなものなのか、分からない読者の方が多いかもしれません。普通の八百屋さんにはほとんど見かけないからです。

ツル菜科に属する多年草で、別名「ハマヂシャ」ともいうそうです。海辺や砂地などに自生するのでこの名があるのかもしれません。花の咲く前の若菜を摘み取り、茄でて和(あ)え物やお浸しなどにして食することが多いでしょう。日本料理では「ツル」を「鶴」として亀甲型に切った椎茸などと合わせ、婚礼料理など、おめでたい席に「鶴菜」「亀甲椎茸」などと献立を書き、長寿を祝う「鶴亀」にしてお椀ものなどに使用することもあります。

「ツル菜」一素材ではなかなか料理になりませんし、どうしても主役の座は他の素材にとられてしまいます。あくまでもわき役でしかないのかもしれません。

もちろんツル菜だけを胡麻和えにしたり、白和えにしたり、精進揚げにして食べても良いのですが、今回は「お椀」にしてみました。ツル菜だけのお椀では何とも淋しい気がしますので、湯葉と豆腐の裏漉しを合わせ、蒸して切り出した「湯葉豆腐」を汁の実とし、その上に何とか主役を務めてもらおうと、少し多目にツル菜を盛ってみまあおみわんづました。本来は青味(あおみ)とか椀妻(わんづま)と呼ばれ、絶対に主役には立てないのですが、精進料理にしろ日本料理にしろ、見た目の美しさを表現するために、色あいを引きたたせる主役的素材もあるのです。やはり料理は自分自身で見た感覚からそれを生かしてゆくこと。そして美味しい料理に仕上げ、美味しく食べることが一番大事なのですから……。

もう一品は「里芋」です。

海老芋や、たけのこ芋などは時季がすぎ、このころになると石川芋という品種が出回ります。里芋を使用した料理はたくさんありますが、有名で皆さんがよく知っているのは京都の名物となっている「イモ棒」であると思います。

あとは、おでんに入れた里芋、人参や干椎茸、蓮根、牛旁などといっしょに炊いたもの、きれいに皮をむき、いったん茄でて、煮含めたものなどが思いあたることでしょう。

家庭で煮物にするとヌメリが出て、子どもたちには人気がないのが里芋です。里芋のヌメリを取るのには、皮をむいたあと必ず塩を少し多目に振り、ゴシゴシと塩で揉んでから料理をすることで十分にヌメリが取れます。

そのまま煮る場合は里芋がヒタヒタにかぶる程度のダシを入れ、落し蓋で密封(みっぷう)状態にして火にかけ、調味料を入れて味を調えるのですが、きれいに形も崩れず、ヌメリも出ない里芋を作るのには含め煮といって、いったん里芋を米のとぎ汁などで茄で、きれいに洗って、ダシを入れ、味を調えてコトコトと煮れば、煮くずれも防ぎ、美味しい里芋の含め煮ができあがります。香りに青柚子の摺ったものや、木の芽の叩いたものを振っていただくと、いっそう風味が加わります。とっても美味しいですよ。

写真の料理は「里芋の絹かつぎ」です。里芋自体の味を尊重するならば、やはり、このきぬかつぎが最高に美味しいと言えるでしょう。五味、五法、五色と精進料理に大切な教えがありますが、その五法とは「生」「煮る」「焼く」「揚げる」「蒸す」です。

この絹かつぎは「蒸す」のが常道ですが、ヌメリを押さえるのには「煮る」でも良いでしょう。里芋を五法で料理すると「生(なま)」は薄く刻んで塩水に漬け、二杯酢や三杯酢に漬け直していただく酢のもの。「煮る」は前述の含め煮など。「焼く」はいったん煮上げたものに味噌を塗って焼き上げた「里芋の田楽」。「揚げる」は妬でてから油で揚げ、独自の味付けで煮た「オランダ芋」。「蒸す」は塩を振って蒸し上げた「絹かつぎ」や里芋を摺って他の素材にかけて蒸しあげた「薯蕷(じょうよ)蒸し」などです。 ぜひ、お試しください。