弥生(三月) お椀とやきもの


お椀
(昆布出汁仕立)
花びら餅
三色菱野菜
菜の花
春子椎茸
柚子
阿羅礼(あられ)
やきもの

 

竹の子東寺巻
蕨(わらび)入りぎせい豆腐
酢取り棒生姜(しょうが)

三月の精進料理は「お椀」と「やきもの」です。精進料理の「お椀」は、だいたいが味噌仕立ての汁が多いのですが、写真の料理は「清汁(せいじゅう)仕立」と言って澄まし汁です。汁には、この「清汁仕立」や「味噌仕立」「吉野仕立」「擂(す)り流し仕立」「袱紗(ふくさ仕立」「粕汁」「卯の花仕立」「利久仕立」など、さまざまな種類の汁があり、たった一つの料理にも、材料や季節によって色々な変化が存在し、楽しくもあり、難しい部分でもあるのです。「お椀」は、その店の「味」と言っても過言ではありません。「お椀」の味付けでこれから出てくる料理の判断ができる言われるほど貴重なものです。

ですから、昆布も鰹節も吟味した材料を使用し、その出汁(だし)の取り方も工夫を凝らしています。料理屋で一番神経を使う料理がこれでしょう。もっとも、精進料理では当然鰹節は使えませんし、今回の献立で昆布出汁仕立としてあるのも「鰹節は使ってありませんよ」と強調してのことです。

昆布出汁の取り方は「水だし」です。前日からたっぷりの昆布を水に漬け、一晩置いておきます。自然に抽出された昆布の旨味はイヤ味がありません。ただ、昆布だけですのでサッパリとしたお味になりますが、これはこれでいいと思います。よく化学調味料を入れる人がいますが、あくまで自然の味にするのがベストでしょう。どうしても短時間でという場合は、水から火に掛けても良いでしょう。

お味ですが、精進料理はお酒の肴ではありません。あくまでもお惣菜の延長だと考えて良いと思います。ですから日本料理のお吸い物のように、あまり薄味でもいけないし、もちろん濃すぎても美味しくないと思います。中に入る具によっても多少の味の変化は必要ですが、精進料理のお吸い物は、多少醤油味が勝った方が美味しいと思いますので、塩よりも醤油の方に比重をかけて味付けをしてみてください。

具は白玉で作った花びら餅です。中には、牛蒡(ごぼう)と独活(うど)とアスパラが入っています。三月の雰囲気を出すために、菱形に切った野菜を天盛りにしてあります。添えてあるのは菜の花と春にできる椎茸です。口に入れたとき水っぽくないように、うっすらと味が付けてあります。

やきものは二椀です。一つは竹の子を荒繊に切り、平湯葉でくるくると巻いてタレ焼きにしたもの。もう一品は、精進料理の代表でもあるぎせい豆腐に、春らしく蕨を中に入れて焼き上げました。色どりに酢取(すど)った生姜を添えてあります。春の暖かさを感じる料理ではないかと思います。