弥生(三月) 干ぜんまい


青干ぜんまい
卯の花和え
ぜんまい、こんにゃく、椎茸、人参、
三葉、おから、丁字茄子
赤干ぜんまい信田巻 干瓢、うす揚、新竹の子、
蕗、木の芽
干ぜんまい筏(いかだ)焼 赤干ぜんまい、押豆腐、
大和芋、芥子の実

春三月、段々と寒さは遠のき、春風が心地よく、過ごしやすい季節となりました。
春といえばやはり山菜。タラの芽・蕨(わらび)・こごみ・山独活(うど)などたくさんの山菜が出回って、山菜好きの通人にはたまらない季節でしょう。三月もなかばになれば、美味しい新筍(たけのこ)も出てきます。精進料理を作るにはうってつけの時期で、いろいろと工夫しだいで美味しい精進料理が楽しめる、すばらしい季節だといえるでしょう。

一般的に山菜は「アク」が強い、苦みがある、料理の仕方がわからない、と家庭の奥さま方には敬遠されてしまうようですが、苦み・香り・歯ごたえがあってこその山菜だと思います。

「アク」の抜き方は、ほとんどの山菜が「灰汁」で抜けるといっても過言ではありません。ちなみに蕨の「アク」の抜き方の一例を述べますと、まず蕨に木灰か、あるいは藁灰を丁寧にまぷします。このとき、灰の量が少なくても、多すぎてもいけません。少なすぎると「アク」の抜けが悪く、色良く仕上がりません。また多すぎると表面に「ズル」がきて、すぐに皮がむけてしまうようになります。灰の量は、蕨全体にまぷすくらいが良いでしょう。

次に灰をまぷした蕨を、ゆったりとした器に入れます。あまり窮屈に入れますと、色の出ないところや、部分的に「アク」が抜けなっかたりしますので、「遊び」のあるくらいが良いと思います。

そして、別に沸かしておいたたっぷりのお湯を、蕨がヒタヒタに漬かる程度に静かに注ぎます。熱々のお湯を入れましたら、中の蕨が浮かんでこないように落とし蓋をして、その上からラップなどで熱が逃げないように密封します。

そうして、そのまま冷めるまで放置しておきますと、余熱でほど良く茄でられ、「アク」も抜け、蕨の真っ青な、鮮やかな色までも出ます。色が出たら流水で灰を除き、少々晒してから料理に使います。

さて、今月は「干ぜんまい」です。「ぜんまい」には「青乾」と「赤乾」がありますが、土地それぞれによって好みが違い、関東以北は赤、関東より西の方は青が好まれるようです。双方とも遜色はないのですが、赤よりも青の方がしっかりしていて、歯ごたえがあるような気がします。

干ぜんまいは、水あるいはぬるま湯にて、時間をかけて自然に戻せば良いと思います。戻したぜんまいは、必ず軸(根の方)をそろえ、二~三十本くらいを束ねて、輪ゴムや凧糸で結んでおきます。軸の部分は特に硬く、とても食べることができませんので、もったいないと思っても切り捨ててください。目安としては、指先でつぷせるかどうかといったところでしょう。

さて、一つ目の料理は、「ぜんまいの卯の花和え」です。

戻したぜんまいを、昆布出し汁に薄味を付けたもので煮ます。日本料理では八方出し汁といって、お吸い物を濃いめの味にした汁がありますが、その程度の味で良いと思います。ちなみに、八方出し汁の八方は、四方八方いろいろな料理に応用できるという意味でしょう。

おからは、布か裏漉しで漉しておきます。大豆の薄皮を取り除き、細かなおからに仕上げるためです。漉したおからは、鍋を二重にして湯煎し、水分を取り除きパラパラにして、塩・砂糖・薄口醤油にて味を調えておきます。

蒟蒻・牛蒡・椎茸・人参などを大きさを切りそろえ八方出し汁にて煮たものと、先ほどの薄味を付けたぜんまいを三センチくらいの長さに切ったものを、汁気を十分に取り去って、おからと混ぜ合わせます。茄でた三ツ葉も同じ長さに切り、最後に混ぜ合わせ、天盛りに丁字茄子を添えてできあがりです。

もう一品は「信田巻」です。

うす揚げとぜんまいは、たいへん相性が良くて、両方とも長さを切りそろえて胡麻油で妙めてから味を付けると、とても美味しい一品ができます。

「信田巻」は、ちょっと手間をかけて、開いたうす揚げでぜんまい数本を芯にしてぐるりと巻き、干瓢で結んで止めます。味付けして煮含め、切り口を兄せるように盛り付けます。

最後の一品は、筏(いかだ)のようにぜんまいを並べ、ぎせい豆腐と共に焼き上げたものです。