弥生(三月) 菜の花と筍(なのはなとたけのこ)


新筍の木の芽焼き 皮つき舟型に
菜の花昆布締め 切り昆布とともに
菜の花畑に……と歌われる菜の花、黄色の可憐な花を咲かせ、いかにも春を感じさせる花ではないかと思います。お浸しによし、和え物によし、天ぷらによしと、何にしてもおいしい素材です。 菜の花も温室栽培で12月や1月から出回りますが、旬はこの3月ころではないでしようか。
野菜も年中出回るものが多くなり、季節感がまったくなくなってきましたが、やはり精進料理は季節感を重視しなければいけないと思います。 1月、2月のまだ寒い時節に、煮物の青味などに使用している料理屋さんもありますが、「はしり」にしても早すぎる感があります。精進料理本来の、旬の味を大切にしたいものですね

さて、その菜の花ですが、今回は昆布締めにしてみました。昆布締めというと、魚の料理だと思われがちですが、野菜の昆布締めもなかなかおいしいものですので、ぜひ試してみてはいかがでしょう。お浸しや和え物に使用する場合は、完全に火を通した方がよいのですが、昆布締めにするときは少々固めにしてください。もちろん、和え物などにするときも茄ですぎては風味がそこなわれてしまいますので、注意が必要です。

出始めのころは花の咲いていない穂先の部分だけが売られていますが、旬になると茎の太い部分まで付いているものがありますので、そちらの方がよいでしょう。 茎もなかなかおいしいのですが、あまり根に近い部分は硬すぎるので、切り落とします。昆布は利尻や日高など高価な昆布ではなく、薄くて少々塩分が強いのですが、比較的安く手に入る、元揃い(もとぞろい)昆布というもので十分です。面器やタッパに昆布を並べますが、このとき昆布のほこりをふきんなどで拭き取ってください。

次によく水気を切った菜の花を丁寧に並べて、その上から再度昆布をのせ、軽めの重しをして、一晩冷蔵庫でねかせます。昆布のうまみとほどよい塩分が菜の花に吸収されて、歯ざわりと風味がたまらない逸品です。3月は筍が旬です。その期間は短いので貴重な食材といえます。朝掘りや早掘りと言われる筍は、そのままでもいただけるような柔らかさがありますが、掘ってから時間が経ったものはアクが回るので茄でないと食べられません。

茄で方は糠と鷹の爪で茄でるのが一番ですが、鷹の爪のような刺激の強い素材は精進料理では禁じられているので、糠のみで茄でます。穂先を斜めに切り、そこへ切り込みを入れます。そうすることで、茄であがってから皮を簡単にむくことができるのです。日本料理では特に「筍の土佐煮」といって、鰹のダシを効かせた焚き方が主流ですが、精進料理では、とうぜん使用できませんので、昆布出汁のみで焚きあげます。旬の筍の歯ざわりと柔らかさは絶品で、缶詰や真空パックの筍とは、それこそ雲泥の差があることは間違いありません。

写真の筍料理は皮付きを縦半分に切り、醤油焼きにして、相性が良い木の芽をたっぷりとのせた、木の芽焼きにしてみました。旬の取り立ての筍は、さしみでも食べられるくらいですが、この木の芽焼きはちょっと贅沢な一品です。旬の歯ざわりと風味を残すために、あまり濃い醤油ダレではせっかくの筍が台無しになってしまいますので、醤油のみを二度くらいかげながら焼いて、余分な甘みはつけません。焼き上がったら上手に皮から取り外し、ふたたび皮の中に戻して舟型にします。

茄であげた筍をきれいにすべてむきとってしまう様子を見かけますが、皮の付け根の部分は柔らかくて、とてもおいしい部分ですので、自然にむいたままでよいのです。<<穂先も同様に取り去らないようにしてください。皮をむいたらポイと捨ててしまうようですが、皮の付け根も柔らかいところがありますので、きざんで和え物や汁の実などにすれば、立派な料理として使用できます。大切に扱ってください。それが料理の基本です。食べられる部分はすべて食べる。それが精進料理の本筋だと思っております。