皐月(五月) 木耳


白木耳の
お吸い物
白木耳、根芋東寺巻、木の芽
木耳サラダ 木耳、胡瓜、独活、玉レタス、
ラディッシュ、胡麻、胡麻酢醤油
木耳と百合根の
梅肉和え
木耳、百合根、三葉、花山椒
   

木の耳と書いて「キクラゲ」と読みます。 形が人間の耳に似ているのでこの名がつい たのでしょう。もちろん、中国料理に用い られる「クラゲ」とはまったく別で、きのこの一種ですが、食感がクラゲのようにコ リコリするので自然に「キクラゲ」と呼ば れるようになったのだと思います。ほとん どのものが乾燥して売られており、生のものはほとんど見かけません。主材料として使うことはごく少なく、精進料理では「雁 もどき」の具や「擬製豆腐」の具として、刻んで用いることが多いのです。木耳自体には味も香りもありませんが、食感と色合いには好材料といえます。特に、五色の「黒」の素材というのはあまりないので貴重な存在なのです。同じ木耳でも、白木耳 というものもあり、高級中国料理では、不老長寿の素材として珍重されています。中 国料理では妙めものに、そのままドンと入っていますが、精進料理ではそのまま使う ことはあまりないようです。
戻し方は、いとも簡単。水かぬるま湯につけておけば良いだけで、腐敗することもめったにありません。

さて、今月の料理は、その木耳を使用したお椀と、木耳のサラダ、そして木耳の梅肉和えです。

白木耳のお椀は、白木耳をぬるま湯にて戻し、再度茄でこぼし、石づきをきれいに取り去ります。そのままで使用してもよいのですが、白木耳自体に味がないので、昆布出し汁に少量の塩、淡口醤油にて下味を つけておきます。あくまでもお椀の材料ですので、絶対にからく下味をつけてはいけ ません。口に入れてほんのりと味がついている程度でけっこうです。

白木耳だけではもの足りないお椀になってしまうので、根芋の東寺巻をお椀種として入れています。根芋には少々アクがあり ますが、湯の中に大根を卸したものと鷹の爪を入れて茄でますと、アクは抜け、真っ白に茄で上がります。それをよく水で晒(さら)し、五センチくらいの長さに切り、数本を束ね、平湯葉でクルクルと巻いて干瓢で結びます。 これもいったん淡味で煮含めておかなければいけません。根芋の東寺巻と白木耳を少々多めに椀盛りし、熱々(あつあつ)のお吸い物を注ぎます。

季節によっては薄い葛を引いてもよいのですが、今回はおすましにしてあります。そして季節の香り高い山淑の小葉である木の芽を吸口(すいくち)にしました。

ギアマンの皿には木耳のサラダが盛ってあります。これは、精進料理の五法である、 生・煮る・焼く・蒸す・揚げる、のひとつ「生」になる一品です。木耳だけではあまりにもさびしいので、他の野菜とともに和えてあります。材料は木耳のほかに胡瓜、 独活、レタスとラディッシュが入っています。サラダですので、木耳もなるべく柔らかい小さめのものを使用し、他の野菜に比べてなかなか味がとおりにくいので、あらかじめ酢醤油に漬け込んでおきます。こうすることで、木耳にも下味がつき、たいへん食べやすくなるのです。

料理を作る際のコツがこのあたりにあるのではないでしょうか。

他の野菜は、お好みでどのような切り方をしても構いませんが、この場合は上品で食べやすく、ひと口大の大きさに切ることが大切です。お味は、さっぱり、あっさり、そしてごまの風味が加わったさわやかな和風のドレッシングがいいでしょう。

作り方はこれも簡単で、ごま油、酢、濃口醤油の三種を合わせただけ、好みに合わせて酢や醤油の量を加減してください。調合は、何度かお作りになって独自の味を開発するのがベストで、とにかく、いろいろと合わせ方を工夫してご家族に合うドレッシングを作ることをお勧めします。作り置きするときは、空いたビンなどに入れて保存し、ごま油が分離していますので、よく振って使用してください。

もう一品はオーソドックスに梅肉和えです。木耳は、刻んで使用します。相手になる材料は百合根と三つ葉です。ポクポクの百合根、シャキッとした三つ葉、コリコリ とした木耳、百合根の白と木耳の黒、それに三つ葉の緑(青)、これらを梅肉の赤で和える。色とりどりで何とも言えない味わいだと思います。

天盛りには、色よく酢取った花山淑、見た目にも食欲をそそる一品ではないでしょ うか。