皐月(五月) つまみ菜と新牛蒡


つまみ菜と新牛蒡 蓮根の白煮
叩き牛蒡の利休酢漬 白胡麻

さわやかな風が心地よく肌に感じる季節です。「目に青葉、山ほととぎす初鰹」と、有名な句がありますが、まさに新緑が目にしみるさわやかな感じがする今日このごろだと思います。五月(さつき)は皐月ともいいますが、五月の日本のイベントはなんと言っても「こどもの日」、すなわち端午の節句ですね。

鯉のぼりを庭に飾り、男の子の行事であることの象徴のように、兜やよろいを家の中に飾って、柏餅をいただく。子どものころは柏餅が食べられることだけで五月五日が待ち遠しかったことや、家の柱に背の高さを記し、「去年よりこんなに背が高くなったね」と母親に言われ、子どもながらに喜んだことを思い出しますが、現在ではその柱も母親も失ってしまっているのが残念です。

「緑のそよ風いい日だな……つまみ菜摘む手がかわいいな」という歌があります。同様のものか定かではありませんが、今月の一つ目の料理は、その「つまみ菜」を利用したものです。現在はあまり八百屋さんにも見かけませんが、体菜(たいさい)という菜物(なもの)があります。その葉柄の形が杓子(しゃくし)やスプーンに似ているので、杓子菜とか匙(さじ)菜、あるいはほてい菜などと呼ばれていたようです。その体菜の若採りした苗が「つまみ菜」です。  茹でてお浸しによし、味噌汁の具にしてもよく、気軽に利用できる野菜です。また、生のままサラダにしても、ほろ苦さと食感が食欲をそそります。

さて本年のテーマは、精進料理本来の姿である、素材を活かしてあまり技巧を凝らさない料理でしたね。

写真の料理は、精進料理の代表格である湯葉といっしょに煮含めたものです。いろいろと料理方法はありますが、今回は油を使って料理をしてみました。このほうが栄養価とうまさを加味できると考えます。

つまみ菜は根っこのほうに砂が付着している場合がありますので、流水でよく洗っておきます。

鍋に油を敷き、つまみ菜を入れて、サッと妙めます。そこへ乾燥湯葉を戻したものをちぎって入れ、軽くつまみ菜を油と絡めるように妙めます。

つまみ菜は火がとおりやすいので、妙めすぎには注意してください。

次に昆布出し汁をヒタヒタぐらいに入れ、ほんの少しの塩、淡口醤油にて味を調えます。ひと煮立ちしたらもうこれで十分。手間暇のかからない簡単な料理です。

砂糖や味醂を入れて甘く焚く方もいますが、つまみ菜にはあまり甘さは必要ありません。どうしても味が……という方は、ほんの少しだけ味醂を入れてください。この料理のコツは、あまり時間をかけないことです。

添えてあるのは蓮根の白煮です。

二品目は新牛蒡を使用します。新牛蒡はなんといっても特有の香りが命です。

新牛蒡を使った柳川鍋などはなかなかの逸品ですし、また、私が個人的に大好きなのは、笹がき牛蒡がたっぷり入った鴨鍋やうどんです。

今回の牛蒡は利久酢漬です。この料理ほど牛蒡の食感と風味を損なわないように配慮した料理は珍しいのではないでしょうか。

牛蒡はまず、たわしで泥を落とし、水でよく洗います。アルミホイルなどで包むようにしてこすってもきれいになります。

次にきれいに洗った牛蒡を、アクが回らないように酢水に漬けておきます。今度は長いまま、スリコギなどで割れない程度に軽くたたきます。

利久酢の作り方は、よく煎りあげた胡麻を、形が少々残る程度に半摺りにし、素材に絡ませることができる状態にして、その中に二杯酢か三杯酢、あるいは甘酢でお好みに伸ばします。今回は三杯酢、すなわち、酢・淡口醤油・味醂を同割にして昆布出し汁で伸ばしたものを火にかけ、ひと煮立ちしたものを冷まして使用しました。

たたいた牛蒡は一口大に切り、煮立ったお湯に酢を入れて牛蒡を湯通しします。たたき牛蒡はコリコリとした食感が大切ですので、絶対に茄ですぎてはいけません。

生に近い状態でも、酢が牛蒡に浸透していきますので大丈夫。先ほどの利久酢に漬けこみ、一日ぐらい寝かせてからいただきます。

ぜひお試しください。