長月(九月) 青梗菜と人参


青梗菜油煮 薄切り大徳寺麩
人参の甘煮 荒繊人参 水飴、黒胡麻

青梗菜と書いてチンゲンサイと読みます。近年は日本料理などでもよく使われるようになりましたが、もともとは中国料理に専門的に使用された素材だったと思います。食感に味わいがあり、柔らかくベトベトに茄でてしまった料理はとても食べられたものではありません。

特に青梗菜は油との相性が良く、油を多く利用する中国料理にはもってこいの材料なのでしょう。

また、近ごろは栽培技術も向上し、ミニチンゲン菜と称し、五センチくらいの長さのものもあり、日本料理ではお椀や煮物の青味に使うなど重宝がられています。

さて、今回のお料理は青梗菜と大徳寺麩の油煮です。

芯の部分のふっくらとした白いところは食感といい一番美味しいところですので、株の部分を、大きい青梗菜なら六等分か八等分ぐらいにタテに庖丁を入れ、手で裂(さ)きます。長すぎて料理がしにくいかもしれませんが、こうすれば葉の部分も形よくきれいに茎とともにくっついてきます。

汚れをとるためにバシャバシャと水で洗う人がいますが、汚れた部分を布巾などで拭きとるくらいで十分です。

きれいに洗う場合は、バチバチと油がハネて思わぬ怪我(けが)や火傷(やけど)をしてしまわないように、必ず乾いた布巾で水気をキチンと拭きとってください。

油通しというのは、油で揚げることではありません。完全に火を通すことではなく、油にサッとくぐらせて、野菜の旨味を引き出すのとより良い青さを保つための作業で、下ごしらえの段階だと思ってください。青梗菜はまずこの油通しをしておきます。

青梗菜だけではもの足りないので、大徳寺麩といっしょに焚き、色合いを出してみました。大徳寺麩というのは、生麩を油で揚げ味付けをしたものです。デパートの食品売り場などで入手可能です。

この大徳寺麩を薄切りにして、いったん油抜きをします。青梗菜は油を通し、大徳寺麩は油を抜く。不思議な話かもしれませんが、大徳寺麩は日が経(た)つと油臭(くさ)くなることがありますので、こうすることにより、油臭さを取りのぞくことができるのです。油抜きの方法は前にも述べたことがありますので、ここでは省略させていただきます。

これで材料の段取りができました。鍋、あるいはフライパンに植物油を敷き、熱(ねっ)してきたら青梗菜と大徳寺麩の薄切りを入れます。大徳寺麩は味が付いていますので、青梗菜に味を付けますが、サッパリと塩味だけで良いと思います。物足りない人は淡口(うすくち)醤油をほんの少しタラす程度でよいのではないでしょうか。青梗菜は先ほど油通しをしただけですので、この時点で火を入れます。軽く油で妙めたのち昆布出汁(だし)を少々入れ、味を調えてできあがりです。仕上げに葛(くず)や片栗粉でトロみを付けてもよいでしょう。

青梗菜のシャリシャリ感と大徳寺麩の歯ごたえがマッチした逸品です。

もう一品は、人参の甘煮です。

茄でて甘く煮たものが甘煮ですが、今回は青梗菜と同様に油通しをして甘煮にします。

切り方は乱(らん)切りや賓(さい)の目切り、また洋食のシャトーむきがありますが、今回は繊(せん)切りで料理します。

最近は「ベンリナー」などという簡単に繊切りができる道具が売られていますが、お持ちの方は、それで十分です。

まず繊切りにした人参を先の青梗菜と同様に油通しをしてよく油を切っておきます。 鍋に水と砂糖を入れ、蜜を作ります。水と砂糖の量は同量でも構いませんが、艶を良くするために水飴も入れるので、あまり甘くなりすぎないように砂糖の量は控え目でいいでしょう。

水と砂糖と水飴で蜜を作り、クツクツと詰めていきます。ある程度詰まってきたら、先ほどの油通しをした人参を入れ、蜜に含ませていきます。

お子さまにもお菓子代わりに喜んでもらえますし、たいへん長持ちしますので作りおきができます。

色合いに天盛として黒胡麻を振っておくと、なおいっそう美味しく映るのではないでしょうか。たかが人参と馬鹿にしないで、色々な料理に応用してみてください。