長月(九月) マスカット


マスカットの白和え マスカット、精進揚麩、
木綿豆腐、落花生、赤蕪
マスカットの
水晶寄せ(菊椀)
マスカット、吉野葛、占地茸、
菊海苔、水前寺海苔、卸山葵

秋風が爽やかな季節となりました。

真夏の暑さから解放され、そろそろ食欲もわいてくるころですね。今年のシリーズでは果実を取り上げていますが、今月の主役は葡萄の王様マスカットです。

マスカットにはどんな料理が良いか、そのまま食べるのはもちろん美味しいのですが、それでは料理になりませんので、精進料理のオーソドックスな和(あ)え物である白和えに仕上げました。白和えも、豆腐だけでは風味に欠けるので、今回は落花生を使用しています。

落花生の皮をむき、香り良く煎り上げて、摺り鉢にてよく摺り、ぺースト状に油が出るまで摺り潰します。これを少量の昆布出汁で伸ばし、豆腐を入れて味を付けます。

豆腐はなるべく硬く絞り、味付けは、マスカットの甘味を生かすようにごく薄目に調えます。

マスカットは、まず皮を取り去り、竹串などで突っついて種も取り出します。これをサッと昆布出汁で洗い、乾いた布巾にてよく水気を取り使用します。さらに、彩りに大徳寺麩の油抜きをして賽(さい)の目に切ったものと、赤蕪(かぶら)の甘酢漬けにしたものの霰(あられ)切りを混ぜ合わせます。

マスカットの香りと甘味、精進揚麩の歯ざわり、そしてちょっと酸味のある蕪。これらが豆腐の柔らかい食感と大豆の香りに微妙にマッチして、とても美味しいマスカットの和えものの完成です。

もう一品は、マスカットのお吸物です。精進料理になくてはならない素材である吉野葛、この葛を利用して椀種を考えてみました。

まず、昆布出汁と吉野葛を合わせ、葛餅を作る要領で葛を練り上げます。サランラップにこの練り上げた葛を敷き、皮をむき種を取り去ったマスカットを載せ、葛の中にマスカットが入るよう茶巾に絞ります。

いったん氷水に落として、冷やし固めます。別に昆布出汁にてお吸物の汁を調え、干菊を戻して茄でこぼしたものを入れて、菊のお吸物を作っておきます。

占地茸は茄でて薄味を付け、水前寺海苔も水戻ししてから薄味を付けておきます。

先ほど冷やし固めた葛を蒸し器に入れ、温まったらお椀に盛り、干菊を入れたお吸物を張ります。占地茸を前に盛り、マスカットの入った葛の上に水前寺海苔を盛り付け、卸した山葵(わさび)をさらにその上に盛り付けてできあがり。

柔らかい葛の中からマスカットの香りと甘味が現れ、ピリッとした山葵の風味でいただくお吸物。ちょっと変わっていてとても美味しいですよ。

それと、九月は菊月とも言いますので、お椀には菊をあしらってみました。