宗学研究部門


 

宗学研究部門では、1954 年に設立された旧・宗学研究所の伝統を引き継ぎ、曹洞宗の宗学に関する研究を中心として、日々研鑽に励んでいます。具体的には、宗典の註釈研究や出典研究といった基礎研究を土台としつつ、『正法眼蔵』『伝光録』の現代語訳やデータベース化などを通して、宗学への現代的ニーズにも応えられるよう研究員は当センターに設置する各プロジェクトにも参画しています。また、並行して研究員それぞれが独自の宗学的関心に基づくテーマを掲げ研究に取り組む一方、宗務庁からの委託業務にもかかわっています。
 
1. 宗典及び宗門基本典籍の註釈的研究
当研究では、平成23 年度も天桂伝尊(1648 -1735)撰『海水一滴』(享保10年〈1725〉)の研究に取り組んでいます。本書は天桂和尚によって『六祖壇経』の拈提がなされたものです。師は後世の転写によって『壇経』の聖意が失われたことを嘆き、諸本や灯史によって本文を校訂され、さらに自ら註釈を付されました。そのことは「六祖の智慧の海から一滴の水を掬い出すかのようなものだ」としながらも、この一滴に六祖の大海が含まれているとする師の想いが『海水一滴』との題名に込められています。宗門のみならず、日本における貴重な『壇経』註釈書でもある本書を取り上げ、志部憲一センター副所長を講師として註釈的研究を進めております。
 

天桂伝尊師頂相
(陽松庵所蔵)

 

 

   
2. 道元禅師・瑩山禅師引用経論・語録の研究
当研究は、石井修道・駒澤大学教授のご指導のもと、故鏡島元隆・駒澤大学名誉教授、曹洞宗宗学研究所編『道元引用語録の研究』(春秋社、1995年)の継続研究を行うものです。当部門では、『永平元禅師清規』を素材として、「対大己五夏闍梨法」(平成18年度)・「衆寮箴規」(平成19年度)・「赴粥飯法」(平成20年度)・「知事清規」(平成21年度~)にみられる道元禅師の引用経論・語録などの出典箇所について、これまで『宗学研究紀要』にその成果を発表してまいりました。
  平成23年度は、「知事清規(下)」と題して、『大正新修大蔵経』『卍続蔵経』といった経典類をはじめ、中国古典などのデータベースを駆使しつつ、道元禅師が諸典籍を引用された意図や時代背景などを考慮して、道元禅師の思想形成の下敷きとなったとみられる出典について同誌に報告しています。これらの研究成果を蓄積していくことで、両祖の各著作にみられる引用箇所を比較分析し、その引用の意図や相関関係を明らかにすることが可能となり、両祖の思想を発展的に理解できるようになるものと考えております。平成24年度以降は「典座教訓」を対象とし、出典研究に語註研究を加味することも視野に入れています。


引用箇所及び出典の一覧表の一部(『宗学研究紀要』25号より転載)

   
3. 宗典のデータベース化
当部門では、曹洞宗の宗典である『正法眼蔵』や『伝光録』などのテキストを電子化する作業を行なっています。宗典については、多くの書籍がテキストとして刊行されており、曹洞宗宗務庁版についても、すでに『伝光録』が刊行され、現在、『正法眼蔵』の編集作業が続けられています。
しかし、パソコンやスマートフォンなどの電子機器が広く普及している今日の状況を考えますと、書籍ばかりではなく、広く電子機器でも宗典を読むことができるよう、宗典の電子化とインターネット上での公開を試みる必要があると考えています。さらに、道元禅師・瑩山禅師の思想体系を明
らかにする一助として、宗典のデータベースを構築する必要があると思われます。
現在、本山版『正法眼蔵』(95巻本)を底本として、本文の入力作業を進めています。本山版のテキストは段落の改行もなく句読点もありませんので、読者の便を図るため、改行と句読点を加える作業も行なっています。宗典を電子化しインターネット上で公開を目指す限り、正確なデータが求められることはいうまでもなく、入力済みデータの校正作業にも念を入れて取り組んでいます。これまでに、「弁道話」巻(第1 巻)から「坐禅箴」巻(第27巻)までの入力と校正の作業が終わりました。現在は「仏向上事」巻(第28巻)以降の作業に取り掛かっています。
 
4.『曹洞宗関係文献目録』の作成
当部門では曹洞宗に関する文献や論文などについて蒐集・分類し、その目録作成に取り組んでおります。その成果については、『曹洞宗関係文献目録』(曹洞宗宗学研究所編、1990年)、および『曹洞宗関係文献目録』Ⅱ(曹洞宗総合研究センター宗学研究部門編、2004年)として刊行されました。
それ以降に刊行された文献や論文等についても、年度ごとにとりまとめ、『宗学研究紀要』にて報告しております。平成23年度は、平成21年度に刊行された文献・論文を中心にまとめ、『曹洞宗関係文献目録』(19)として掲載しております。
目録の一部
(『宗学研究紀要』
25号より転載)
なお、その内容については、曹洞宗公式サイト・曹洞禅ネットの検索・文献検索「曹洞宗関係文献目録オンライン検索」にて公開しておりますので、是非ご利用ください。
 
   
5.『宗学研究紀要』編集・発行
各研究員の関心に沿って進められた研究の成果は、毎年度、当部門から発行される『宗学研究紀要』に掲載されています。2011年度は25号を編集・発行いたしました。 以下の通り、個人研究8 篇、共同研究1 篇、曹洞宗関係文献目録が掲載されています。
① 粟谷 良道
  曹洞宗における「寺族問題」について(3)
 ② 小早川 浩大
  指月慧印撰『法門鋤宄箋解』の考察
 ③ 河村 康仁
  『正法眼蔵』に観る時節の一考察(2)―仏性との関連性
 ④ 清藤 久嗣
  道元禅師の坐禅観(7)― 観練薫修について
 ⑤ 相澤 秀生
  キリシタン史料からみた葬送儀礼
 
 ⑥ 石原 成明
  道元禅師における道得について
 
 ⑦ 西尾 古鑑
  『正法眼蔵聞書抄』における『正法眼蔵』の解釈について―「ことなり」の用例から
 ⑧ 清野 宏道
  道元禅師と天台の学語 ― 厚殖善根
 ⑨ 共同研究
  『永平元禅師清規』「知事清規」の出典研究(下)
 ⑩共同編集
  曹洞宗関係文献目録(19)
 
6. その他
宗典編纂委員会・・・粟谷主任研究員
師家養成所 講師・・・粟谷主任研究員
寺族研修会 講師・・・粟谷主任研究員、小早川研究員
宗勢総合調査委員会・・・相澤研究員
『曹洞宗研究員研究紀要』第42 号編集・・・相澤研究員、西尾研究員