平成26年「禅をきく会」開催報告


平成26年10月1日(水)、曹洞宗宗務庁主催の「禅をきく会」が、東京有楽町マリオン・朝日ホールを会場として開催されました。毎年開催されるこの会は、「禅」を身近なものとして親しんでいただく事を目的として、著名人による講演と椅子による坐禅体験が主な構成となっております。

今回は「相承~大いなる足跡を訪ねて~」をテーマとし、大本山總持寺大遠忌局企画・制作の二祖峨山韶碩禅師650回大遠忌記念DVD「相承」に出演された俳優の綿引勝彦氏と、作品を監督された堀口尚哉(ひさや)氏がコメンテーター、大本山總持寺布教教化部長 山口正章師が進行役・コーディネーターを務め、鼎談が行われました。

講演は、愛知専門尼僧堂 堂長 青山俊董師が「光に導かれて-生命の尊さにめざめる-」という演題でお話しされました。

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俳優 綿引勝彦氏

綿引氏は昭和41年に劇団民藝に入団。昭和60年に退団された後、劇団綿帽子を主宰されています。また映画やテレビでは強面の役を多く演じつつも、愛情深い父親役を演じたり、豊かな人間性で幅広い役柄を演じ分けています。そのいぶし銀の演技は日本の演劇界に欠かせない存在となっており、近年は映画の吹き替えにも出演されるなど、活躍の場を広げています。

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監督 堀口尚哉氏

 堀口氏は日本大学生産工学部を卒業後、共同広告株式会社に入社。主にテレビCMや番組の作成、また有名企業の映像による製品紹介を手掛けてきました。現在はフリーの映像監督として、各方面でご活躍です。

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進行役 山口正章師

山口師はご本山で修行された後、昭和58年福井県越前市竜泉寺の住職に就き、その後曹洞宗特派布教師、曹洞宗福井県宗務所長を歴任されました。そして平成20年より大本山總持寺の役寮として、修行僧の指導や、ご本山での布教教化にご尽力されています。

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講演者 青山俊董師

青山師は愛知専門尼僧堂でご修行後、駒澤大学大学院修了後、曹洞宗教化研修所を経て、昭和51年から愛知専門尼僧堂の堂長に就かれています。今もなお、参禅指導・ご講演・執筆活動にご精進され、平成16年3月には、女性では2人目となる仏教伝道功労賞を受賞されました。

開演当日は朝から雨模様で、参加者の出足が鈍っていましたが、開会時間となる午後1時には、会場は満席になりました。開会を告げる木版が鳴らされると、小島泰道 曹洞宗宗務庁教化部長より「若山牧水氏が《けふもまたこころの鉦(かね)をうち鳴しうち鳴しつつあくがれて行く》と詠われた。また道元禅師のみ教えの中に、《詳緩として行いて卒暴なるべからず》という言葉を遺されております。毎日、丁寧に、決して乱暴になることなく生き抜けよ、という教えです。長い短いは人それぞれですが、一度きりの人生を自分の責任として、自分に課して、生きていくことが大切です。開会に際し、お越しいただいた講師の方がたと参加者に御礼申し上げます」と開会の挨拶がありました。

鼎談に先立ち、『相承』が上映されました。この映像は、大本山總持寺の二祖峨山韶碩禅師が遺された足跡を広く一般の方に紹介すると共に、そのご功績を讃え、ご遺徳を偲ぶために作製されたものです。 

映像終了後に綿引氏、堀口氏と山口師が登壇され、鼎談が始まりました。まず進行役の山口師より、「実際に坐禅を体験され、峨山道にある坐禅石にも坐られた感想」を聞かれた綿引氏は、「自分の中、内なる内に入っていく感覚で、煩悩とまではいきませんが、己の抱えている問題が次第に頭の中で鮮明になりました。終わった後、非常な爽快感を得た。自分が悩んでいることが小さいことと感じました。峨山道の峨山石に坐った時は、大空と地と私が一体になり、止めようという気にならなかったです。是非もう一度体験したいです」との感想を述べました。「峨山禅師所縁のお寺を幾つか巡った感想」を聞かれた堀口氏は、「大本山總持寺をはじめ、永光寺、大本山總持寺祖院、大乗寺、永平寺を訪れました。特に永光寺の五老峰を訪れた時、伽藍が非常に美しい寺院で、普段霊感の無い私ですが、何かビリビリ感じることがありました」。綿引氏も同様の質問を受け、「私も同様に、永光寺は何ともいえない神秘に満ちた素晴らしい寺院だった」と応えていました。

山口師から両氏に対して「永光寺の峨山禅師のご木像を拝見した感想」を、綿引氏には「俳優を目指したきっかけ」、「劇団民藝の創設者である宇野重吉氏との思い出」、そして堀口氏には「綿引氏と一緒にお仕事をした感想」をうかがいました。

最後に「今回の撮影の感想」を聞かれた綿引氏は、「峨山禅師の業績を知るにつれて、その偉大さに大変驚いています。今回の映像に係わって、峨山禅師の偉大な教えを受けました。世の為、人の為に、91歳まで人生を走り続けていけるんだと、自分の人生に問いかけ、肝に銘じます」、堀口氏は「撮影を通して色々な人との縁を感じた。永平寺の峨山石があまり知られていないが、あの石をみると本人が立って話しているような感覚を受けた。是非皆さんも見ていただきたい」と鼎談を締め括りました。

引き続き登壇された青山師は、沢木興道師をはじめ、故人との想い出にユーモアを交えて講演されていました。

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会場風景

青山師は講演の中、「松影の暗きは月の光なり」という道元禅師のお言葉を取り上げ、「松が立っていることや黒い影を引いていることを見せてくれるのは、月が出ている証拠です。真っ暗闇では、それが見えません。月の光が薄ければ影も薄い、明るくなれば影もはっきりします。お釈迦さまの光(教え)に照らされた時、本来の自分の姿に気付かせていただけるのではないでしょうか」と話されました。

また『正法眼蔵』「現成公案」の一説である「遇一行修一行(一行に遇うて、一行を修す)を紹介され、「道元禅師の修行は24時間体制で、いつからいつまで何をすればいいという事ではないことを説いています。すべての人は24時間という時間の財産を平等に頂戴しているので、その財産をどのように埋めていくか、密度を濃くするか、薄くするかで、その人の一生は随分変わる。その一瞬一瞬もやり直しのできない、かけがえのないいのちの歩みであるということを忘れず、生活していきなさい」と説明されていました。

そして、その具体例として、内山興正師の「人生の最期には一番厳しい修行が待っている。《世捨てられ人》という一行が待っている」という言葉を紹介。気に入っている「一行」もあれば、気に入らない「一行」や逃げ出したい「一行」もあります。その中、「世捨てられ人」という「一行」に、逃げず、追わず、愚図らず、姿勢を正して、それに取り組んでいくことに生きがいを感じます。そのことを自分自身に言い聞かせています。病気になったら、その病気とどう取り組むか、失敗したら、その失敗とどう向き合うか、人生の一歩一歩の全てを「遇一行 修一行」として努め上げていく、それより他にございません」と述べ、講演の結びとされました。

講演後は、恒例の「いす坐禅」の指導が行われました。司会者の進行により、凝り固まった参加者の体を簡単なストレッチでほぐした後、曹洞宗総合研究センター所員が壇上で実演し、場内の参加者はいす坐禅を体験しました。

本年の「禅をきく会」も大盛況で、会場には大勢の参加者が足を運んでいただきました。来年も本年同様に、同時期に開催予定ですので、皆様万障お繰り合わせの上、ぜひご来場ください。