平成27年「禅をきく会」開催報告


20151023 (5)平成27年10月6日(火)、東京都港区にあるメルパルクホールを会場に曹洞宗宗務庁主催の「禅をきく会」が開催されました。

今回の「禅をきく会」は、台湾出身で歌手・女優・木版画家として活躍されているジュディ・オング氏と、ドイツ出身で現在、兵庫県にある曹洞宗安泰寺の住職として坐禅三昧の日々を送られているネルケ無方老師を講師にお迎えし、行われました。

また、同会場にて初めて開催しました「第1回曹洞禅フォトコンテスト」入賞作品の展示がありました。開会前や休憩時には会場ロビーに展示された作品を、多くの方が足を止めご覧になる姿が見られ、写真作品のもつ力強さを感じさせられました。

当日は穏やかな秋晴れとなり、会場には約700名が集まりました。

2015102312時30分に開会をつげる木版(もっぱん)がなると、中村見自教化部長より「今、曹洞宗では『禅からZENへ』をテーマに諸施策を行っています。来年1月には『世界に広がる曹洞宗』と題し、北米参禅ツアーを企画しています。北アメリカにおける曹洞宗の布教の歴史などを訪ねる予定です。国際的な広がりをみせている『ZEN』ですが、特に海外僧侶は、己の道を見つけて、『正伝の仏法』を守ろうと志しを高くもって出家しています。その姿に感動をし、改めて、『ZEN』のすばらしさを学びました。本日はこの機会を通じて、皆様と一緒に新しい気づきになればと思っています」と開会の挨拶がありました。

挨拶後、ジュディ・オング氏が登壇し「輝いて生きる」と題して、講演されました。

ジュディ氏は台湾に生まれ、3歳で来日、11歳のときに日米合作映画「大津波」で芸能界にデビュー。16歳で歌手デビューを果たし、1979年には名曲「魅せられて」で日本レコード大賞を受賞。女優としてもテレビドラマ、映画、舞台と国内外で活躍されています。

20151023 (2)また、25歳よりはじめられた木版(もくはん)は、日展入選を皮切りに、これまでに数多くの賞を受賞され、現在では木版画家として、各地で個展を開催。その作品は世界的にも高く評価されています。一方チャリティコンサートのプロデュースや、長年ワールドビジョン親善大使として世界中の子どもたちの支援にも精力的に取り組んでおられます。

ジュディ氏は、冒頭、代表作『魅せられて』のエピソードをユーモアを交えてお話しされ、参加者の心を和ませました。

「輝いて生きる」ためにジュディ氏が一番大切にされていることは、“好奇心をもつこと”といわれ、「私は『永遠の25歳』という言葉が大好きです。25歳のとき、版画を始めましたが、この時期の私は好奇心が一番強かった。好奇心があると、やってみたい!やってみよう!できる!と思うと、なんでも輝いて見えます。そういう思いが人を輝かせます」と話されました。

そして、会場に設置されたスクリーンには、ジュディ氏が好奇心と情熱をもってチャレンジしてきた数々の版画作品が映し出され、それぞれの作品にまつわるエピソードを紹介されました。

また、「36歳で大病をしたときに、半年間の入院生活の中で、自分一人で元気になろうと思ってもひとりでは元気になれず、周りの方がたの励ましによって元気になれました。私はそれを肌身で感じたとき、感謝の気持ちが涙とともにあふれました。その経験から、元気になったこの命を何に使うか考えるようになり、どうしたら皆さまへ恩返しができるか考えるようになりました」と、現在の活動につながるボランティアや国際協力活動へのきっかけを話されました。

最後にお父様より教えてもらった言葉『悦己悦人(えつみえつじん)』を引用し、「これは己も喜び人も喜ぶという意味ですが、私はこの言葉をとても大切にしています。対人関係でも同じことが言えますが、外国人と接するとき、相手の文化・習慣を知らないことで摩擦が起きることが多いですね。違いを理解し、お互いを尊重しあい、お互いに喜び、楽しめるところはどこかということを考えて接すれば、世界の平和も近いと思います」と講演を終えられました。

20151023 (4)15分の休憩をはさみ、登壇したネルケ無方老師は「仏教に恋したドイツ人」と題し、自身の生い立ちから、禅との出会い、現在の活動までを講演されました。

ネルケ老師は、ドイツのベルリンでプロテスタントの家庭に生まれました。7歳のときに母との死別を体験し、生きる意味について考えるようになります。16歳のときに坐禅に出会い、大学生の時に禅を学ぶため来日。京都大学の留学生として、研究の傍ら日本での参禅を始めます。やがて、安泰寺で正式に出家得度。2002年から安泰寺の住職に就任されています。山深い檀家のいない安泰寺で自給自足の生活のなか、国内外から参禅者を受け入れ、現在十数人と坐禅修行の日々を過ごしています。

ネルケ老師は、はじめて坐禅を体験したときに「それまで自分は何だと聞かれたら、脳みそが自分と思っていた。しかし、静かに姿勢よく坐り、自分の呼吸を意識すると、心身がつながっていることを感じ、自分と世界がつながっているように感じられた」と話され、当時多くの欧米人へ『禅』の影響を与えた鈴木大拙氏の本に出会い、「私も日本に渡って、禅僧になり、自分の問題を解決したいと思った」と禅の道にすすむ動機を紹介されました。

「日本にきて、坐禅ができるところを求めていたとき、紹介されたのが安泰寺です。一神教の環境で育った私は、寺に入り、偶像の多いことに驚きました。本堂には本尊様、坐禅堂には文殊菩薩、トイレの前には烏枢沙摩明王(うすさまみょうおう)、お風呂には跋陀婆羅菩薩(ばったばらぼさつ)、壁には観音さまの絵が飾ってあります。あまりにも仏が多いので、住職に本当の仏はだれかと尋ねたら『きみだ』といわれた。『きみが安泰寺の本尊にならなければ、仏はどこにもいないよ。仏の行為をすれば、仏になれる』」と、安泰寺との出会い、そして、キリスト圏との宗教観の違いや文化の違いを、様ざまなエピソードとともに話されました。 

現在、多くの弟子をもつネルケ老師は「弟子たちに、キュウリのように育ちなさい」と言っているそうです。「ハウスの天井から一本の紐をたらし、その下にキュウリの苗を植える。最初にうんと肥やしをあげれば、あとは水をあげてさえいれば、苗は大きくなって、紐をつかんで、まっすぐ上に伸びていく。弟子の育成で言えば苗は弟子、一本の紐は仏の教え、私ははじめの肥やし。あとは自分で仏の教えをつかんで伸びていってほしい。それが私の願い。私はキュウリのような弟子が現れて、私の後を継ぐまで、寺を守りたい」と講演を締めくくりました。

20151023 (3)講演後は、恒例の「いす坐禅」が行われました。ネルケ老師にもご参加いただき、指導者の進行のもと、参会者はしばし静かに坐りました。

また、当日は大規模災害や東日本大震災等で被災された方がたを支援するための募金を呼びかけ、参加者より174,179円の義援金が寄せられました。ご協力ありがとうございました。

「禅をきく会」は「禅」に触れる機会として定着し、多くの方に浸透している様子がうかがえました。各管区でも定期的に開催されていますので、お近くの方はぜひ足をお運びください。