第42回全日本仏教徒会議 和歌山・高野山大会が開催されました


10月16日(水)・17日(木)の2日間に亘り、弘法大師空海が修行の場として開いた和歌山県高野山において、『宗教と環境-自然との共生』をテーマに「第42回全日本仏教徒会議 和歌山・高野山大会」が開催されました。主催は、和歌山県仏教会、高野山真言宗・総本山金剛峯寺、公益財団法人全日本仏教会です。

16日は開会式、合同法会「全日本仏教徒のつどい」、加盟団体代議員会議、加盟団体交流懇親会、ナイトツアーと声明ライブが、翌17日は記念法話を始め、基調講演、シンポジウムと記念式典が行われ、また両日に亘り、体験プログラムとして写経と3つの瞑想法(曹洞禅、臨済禅、阿字観)、ブッティスト・ホーム-釈迦の手-(様々な宗派の僧侶と触れ合う事が出来る場と袈裟や法具の展示を併設)、森林セラピーが併催されました。台風26号による悪天候にも関わらず、両日共に500人(会場関係者による報告)の仏教徒が参加しました。

 

開会式

半田孝淳大会総裁(全日本仏教会会長)

開会式では、松長有慶大会会長(高野山真言宗管長、総本山金剛峯寺座主)より「開式の辞」があり、参加者全員で「仏教徒の歌」を唱和した後、半田孝淳大会総裁(全日本仏教会会長、比叡山延暦寺貫主・天台座主)が「大会挨拶」として、「仏教の教えのもとに、自然の中で生きている喜びと、他者と分かち合う事ができる真の豊かさを学び取らなければならない」とされ、「自然そのものに価値を認め、新しい社会の実現の第一歩となる意義のある大会になる事を願う」と述べられました。

 

合同法会「全日本仏教徒のつどい」

添田隆昭大会実行委員長

同日午後から行われた合同法会は、第1部は双盤念仏(西山浄土宗 地蔵寺鉦講)、吉水流詠唱(浄土宗 吉水講和歌山教区本部)、御詠歌(高野山真言宗 高野山金剛流合唱団)、第2部は仏教讃歌コーラス(浄土真宗本願寺派かりょうびんが鷺森)、祈願法要(日蓮宗・法華宗)、曹洞宗法要(曹洞宗和歌山県管内寺院)という2部構成でした。

合同法会の締め括りとしての全体法要では、各宗の代表者が式衆として登壇され、松長有慶大会会長を導師として「三帰依文」と「四弘誓願」を全員で唱和しました。大会会長名による「願文」は、添田隆昭大会実行委員長(高野山真言宗宗務総長)が代読され、「帰命句」と「廻向句」を再び全員で唱和し、合同法会を終えました。

 

基調講演・シンポジウム

記念法話

松長有慶大会会長

翌17日は、松長有慶大会会長が「環境保護問題と仏教」と題し、法話を行いました。始めに「長年、環境保護に関し世界は真剣に考えてこなかった。仏教徒としてどのように関わり合いを持っていくか、非常に大きな問題になっている」と発言。インド・中国仏教の教え、また様々な古事や日本仏教にある「山川草木悉有仏性」(天台教学)や「草木国土悉有仏性」(天台僧の安然)を引用し、「動植物或いは鉱物にも命があるという考えは、初めて日本仏教の中に表れた考えである」とされ、そのため「世界で起きている環境問題に対して発言する際に、理論的な根拠になる」と、お話をまとめられました。

 

基調講演

武田邦彦氏

次に武田邦彦氏(中部大学教授)による大会テーマを基とした「科学者として自然や環境をどのように見ているか」という基調講演がありました。武田氏は、メディアが取り上げる環境問題に関して、「実際に自分の身で触れ、目で見ていないため、心の幻想が映し出した蜃気楼のようなもの」とされ、「科学者を含め、現代の人びとは精神的な活動をする事がなく、深く考える事に時間を割かない」ため事象に着目できず、「妄想の如く在らぬ方向に進んで行き、間違いに間違いを重ねる」と発言。また「自然に対する人間の活動は極めて小さくて、到底自然を破壊する力はない。日本人としての正常な精神状況にあり、改善や反省する心があれば、環境が悪くなることは無い」と述べられました。最後に、科学の不確かさを取り上げ、「科学は片時の事実を実証する事はできるが、系統立ったことをいう事はできない」、そのため「宗教者や哲学者から、科学者への物事の視点や考え方の教授」を願い、下壇されました。

 

シンポジウム

引き続き行われたシンポジウムでは、として竹村牧男氏(東洋大学学長)がコーディネーターを務め、パネリストは基調講演を行った武田邦彦氏、大河内秀人氏(浄土宗見樹院及び寿光院住職)と村上保壽氏(高野山大学名誉教授)が務めました。

大河内氏は、仏教者として縁起の中に生きている自分が、いかに生きていくかという事を中心とした発表でした。現在の環境問題の取り組みに関して、「四諦」を取り上げ、「現実の問題や人々の苦しみ(苦)の原因とメカニズムを解明(集)し、苦が取り除かれた状態(滅)を把握する事によって、具体的且つ正しい活動(道)をする事ができる」とされました。そして、平和や環境を壊す多くは人災であり、その発生の理由を「三毒(仏教において克服すべきものとされる最も根本的な三つの煩悩)」に当てはめ、開発や利権、資本主義、貨幣経済などの「貪(むさぼり必要以上に求める心)」、対テロ戦争やヘイトスピーチ(嫌悪発言、憎悪発言)などの「瞋(怒りの心)」、消費世界、嘘と隠蔽などの「癡(真理に対する無知の心)」によって、人間の心が混乱し様々な問題を起こしていると発言されました。仏教者として、「宇宙の真理(縁起)を悟る事で人間のいのちの意味(使命)を理解し、社会に生かされている自分の可能性と未来への責任に気づく事ができる」とし、ご自身の活動を例に挙げ、四諦に基づく菩薩道の実践や具体的な寺院の役割を述べた発表でした。

村上氏は、今大会のテーマを図る上で、宗教と環境は相互主体になっているため、「人間(宗教)が主体となって自然を従属しようとする場合」と「自然主体で、人間(宗教)が自然の秩序やリズムに従う」という観点に注目。後者の観点だと、「自然との一体感や共生という思想を生み出し、自然の中に教えを観る事ができる」とされました。また弘法大師空海のお考えを取り上げ、「自然を物質環境ではなく生命環境と捉え、自然界にある生命のエゴイズム(種の保存、生命の維持)を観る事ができれば、意味ある生命の繋がりや循環、再生を観る事ができる」と発言されました。自然との共生とは、「自然のエゴイスティックな環境と共に生きる事であり、自然界の生命の繋がりを共に享受する事である」とされ、宗教ができる事は、「人間が自然を支配、管理する事の限界を自覚させる事」、また「自然が生命環境であることを説き続ける事」という発表でした。

3者による活発な意見交換が行われた後、コーディネーターの竹村氏は、「情報にとらわれずに、現実(の社会)にある苦しみや事実を見つめる事で、環境問題へ取り組む事ができる。その中で、人間誰もが持っているエゴイズムを克服する事により、あらゆる命のつながりが見えてくる。その時、初めて人間と自然との共生が実現する。仏教の教えに基づく実践の指針として、現代社会に順応するものを(新たに)作っていくことが大事」とし、シンポジウムをまとめられました。

 

記念式典

記念式典では、北河原公敬大会副総裁(全日本仏教会副会長・東大寺長老)からの「開式の辞」の後、「三帰依文」を全員で唱和し、横田南嶺大会副総裁(全日本仏教会副会長・臨済宗円覚寺派管長)より「大会挨拶」がありました。横田副総裁は、今大会の総括と同時に、「情報に惑わされることなく、お釈迦様から受け継いでいる教えを大事にする事」の重要性と、「今の私たちの思いや願いがこれからの社会を作り出していく。お釈迦様の教えの原点を強く思い、世の中に堂々と説いて、実践していく事こそ、我々仏教徒の使命だと思いを新たにした」と述べられました。

引き続き大会宣言起草委員を代表して、添田大会実行委員長より、以下のような「大会宣言」を宣揚されました。

「(中略)第2次大戦後、驚異的な科学技術の進歩により、私たちは物質的に豊かな生活を享受してきました。しかしその原資は、地球上の有限な資源という事にも関わらず、それらを湯水の如く使用し、近未来には海底資源にも触手を伸ばそうとしています。(中略)その結果、自然環境にも危機的状況をもたらし、(中略)世界的に甚大な被害を蒙っているのは、その顕著な例でございます。(中略)私たちは東日本大震災という未曽有の大惨事を経験しました。(中略)大自然の脅威の前にいかに人間が無力かを痛感させられました。この大震災は、日頃からの生活を根底から見直し、物質的に豊かな生活よりも、さらに大切なものがあるという事に気付かせてくれる自然からの警告であります。(中略)便利で快適な生活を求めるのも、根源的な生命力としての欲であります。しかしその欲を我欲に留めず、思想を変え、他の生命を生かし、大切にするための利他の行動が現在に求められています。(中略)古来より日本人は、森羅万象の中に聖なるものを見出し、神・仏として崇拝し、保護し、共存してまいりました。その智慧を共有する仏教各派が、釈尊の教えの下に一致団結し、叡智の科学とも手を取り合い、日本、ひいては世界中にその思想を発信し、更なる環境破壊を阻止すべく、自然との共生の実現を誓う」

その後行われた「大会旗返還」では、萩野映明大会副総裁(埼玉県仏教協会会長)から2年後の開催予定地となる愛媛県の仏教会会長である御木徳久僧正へ大会旗が引き継がれました。最後に今大会の山口文章事務局長から閉式の辞があり、全日程が終了しました。

曹洞宗出版部による販売ブース

大会前日には、日本全国に大きな被害をもたらした台風26号が和歌山に最接近し、天候に恵まれない中、催行されましたが、「現代の文明」、「人間」と「自然環境」が共に支え合い、生きていくための術を宗教、特に日本仏教の教えの中から見つけ出し、世界に発信する事を目指した今大会は、無事円成しました。