法戦式
1、首座法戦式とは
お釈迦さまがこの世におられた当時、雨季には、歩くだけで多くの生き物を殺生してしまうため、外に出て修行する事ができませんでした。よって、修行僧達が寺に集まるようになったのですが、これを「安居(あんご)」といいます。そして、安居の制を結ぶことを、「結制」とも呼びます。安居は、インドでは雨季のみであり、「雨安居」とも「夏安居」ともいいましたが、中国に伝わると夏冬2回の行持になったといいます。
そして、結制中、自ら修行僧の中に入り、合わせて先頭に立って指導する役職を、「首座(しゅそ)」と呼ぶようになりました。文字通り、修行僧の中での筆頭であり、住職の隣に坐り、その補佐をしながら修行するため、そう呼ばれたのです。
なお、お釈迦さまが霊鷲山においてお弟子の迦葉尊者にご自分の席を半分ゆずって説法を許されたという故事にならって、住職に代わって仏道の肝心なところを、修行僧に説法する儀式が出来ました。それを、説法の際に持つ払子を振るうことから「秉払(ひんぽつ)」といいます。そして、徐々にこの儀式が実用的になり、首座と修行僧達とで激しい問答を行うようになりました。
この様子を、首座が法を戦わせることから、「首座法戦式(しゅそほっせんしき)」といい、現在でも各地の曹洞宗寺院で行われているのです。なお、首座はこの法戦式を終えると、正式に「座元」という位に就き、同じく、首座に法戦式を任せた師匠(法幢師)は、大和尚の位に上られるのです。
2、首座法戦式
次第現在の『曹洞宗行持軌範』に従って、式次第(差定)と、その内容(進退)を略述します。
・殿鐘三会大衆上殿
本堂(法堂)の鐘が打ち鳴らされると、その間に定められた順番で多くの修行僧が集合します。
・上方丈
一旦本堂に集まると、知事・頭首といわれる役付きの僧が、住職のいる部屋(方丈)に上って、お迎えに行きます。
・大擂上殿
問答(説法)が始まりますので、大きな太鼓を激しく打ち鳴らして、導師をお迎えします。太鼓に合わせて、知事・頭首が先導しながら、住職が本堂に入ってきます。
・献湯菓茶
問答を前に、本尊に蜜湯・菓子・茶を献じます。
・普同三拝
献じた後、全員で揃って、礼拝をします。
・般若心経(挙心経)
問答を前に、読経を行います。
・挙則いよいよ問答が始まりますが、その前にまず、今日はどの話(本則)について問答を行うかを、首座がその場にいる全員に聞こえるような大きな声で知らせます。
・拈竹箆
問答を行う場合に持つ仏具を竹箆(しっぺい)といいますが、それを導師から借りて、首座が持ちます。
・法問
準備が整った首座に対し、開口闍黎(弁事)という者から順番に問答をかけます。だいたい、5~7問程度の場合が多いですが、50問をかける場合もあります。
・謝語問答を終えた首座が、その無事円成を喜び、満座の僧侶に対し御礼を言います。
・祝語
問答を終えた首座に対し、役付きの僧がお祝いを述べて、その力量を讃えます。
・普回向
問答の功徳を本尊に捧げ、更に一切の生きとし生けるものに回らすべく、維那という役付きの僧がお唱えをします。
・普同三拝
また、全員揃って礼拝をします。
・散堂
定められた順番の通りに、全員が本堂から退出します。