【人権フォーラム】韓国・朝鮮の遺族とともに「遺骨問題の解決を」第3回証言集会報告
この中で上杉氏は「今回、韓国より遺族の方がたにおいでいただいた目的は、日本の民間企業へ強制徴用された人びとの遺骨の奉還を日本政府に実行に移させるためです。日本政府は、1939(昭和14)年7月に閣議決定し朝鮮の人びとを強制連行し、強制労働を実施した責任を負い、犠牲者の死亡に至る情報開示のもと、遺骨を奉還すべきです。日本政府が改めて『人道主義』の立場を鮮明にし、『旧民間徴用者』と呼ばれている労務動員被害者の遺骨奉還を本格化させることを強く要望するものです」と述べた。
続いて挨拶に立った太平洋戦争被害者補償推進協議会共同代表・張 完翼氏は、遺骨問題について日本政府が積極的に調査に力を注ぎ、さらに、韓国と日本の民間レベルの奉還事業にも支援をするべきであること、また、すべての資料の公開、犠牲者と遺族に対する補償のための速やかな法律制定の必要性を指摘した。
今回は韓国から9人の遺族をお招きしており、遺族を代表して李熙子氏が証言された。
李氏の父親は1944(昭和19)年2月に国民徴用令によって戦争に動員、そのまま帰らぬ人となった。当時、生後1年ほどだったため父親の顔を覚えておらず、その後成長、結婚して3人の子どもを育て上げた1989(平成元)年頃から、何度も日本を行き来しながら父親の足跡を探し始めた。
困難の中、多くの資料を探し出し、そこから父親が亡くなった状況や、靖国神社に合祀されていることなど父親の足跡が明らかになった経緯について証言した。そして、最後に「これまで、私たち被害者が活動してこれたのは、日本の良心的な市民が絶え間なく助けてくれたおかげです。日本政府は心からの謝罪と反省、そして具体的な実践をしていただきたい。私は強制動員犠牲者の遺骨発掘と奉還も戦後補償だと考えます。ここにいらっしゃる皆さんも必ず家族がいるはずです。ぜひ、この問題を自分のことと考えて取り組んでいただきたい」と訴えた。
ここで、曹洞宗人権擁護推進本部から、宗門の遺骨奉還の取り組みに関する報告が行われ、宗門寺院を対象とした調査と、北海道浅茅野での遺骨発掘事業の現況報告があった。さらに、今後の課題として「遺骨奉還の際には、純粋に人道的立場から真心を持って奉還できる環境と条件作り」「遺族や故郷にたどり着かない遺骨について」「遺骨となってしまった歴史や教訓をみんなで学ぶような教育的配慮」の3点を挙げた。
その後、今回招かれた遺族が次々と証言を行った。
父親が強制徴用され、第1回にも証言された姜 宗豪氏は、父親の顔を憶えておらず、亡くなった記録もないため祭祀ができないという。
「日本は記録が発達した国と聞きます。それならば、どこで生きていたのかは分かると思います。私たちは誕生日に祭祀を行っています。多くの私のような人たちがいます。ここにお集まりの皆さん。ぜひ、政府に訴えていただいて、記録を公開するよう協力してください」
また、同じく父親が強制徴用された金 錦順氏は次のように訴える。
「今まで死なずに耐えてこれたのは、父を恋しく思う心と悲しみと苦痛が力になっていたからです。私は父を探すため生きている限り闘います。日本政府は犠牲者の記録を公開し、真相究明に乗り出すこと、さらに、全国的な遺骨調査をされることを心から願います」
証言終了後、決議文(別掲)が読み上げられ、拍手を持って採択され、午後5時全日程を終了した。
なお、採択された決議文は翌8日、日本政府の遺骨問題関係省庁への申し入れの際に手渡された。
今回の集会で、多くの遺族の証言をお聞きした。戦後60年以上経つ中で、この遺骨問題は決して過去のことではなく、今も苦しんでいる人たちがいることを実感した。私たちは、この遺骨問題を通して、日本と韓国・朝鮮の歴史の真実を見つめなおし、過去の問題ではなく、今後のため「今、何ができるか」を考えなくてはならない。
決 議 文 韓国・朝鮮の遺族とともに「遺骨問題の解決を!」第3回証言集会に集まった私たちは、国は責任を認め、国の責任において遺骨問題を解決することを政府に求めるとともに、その早期実現に全力で取り組むことを決議します。 具体的には、以下の事項の実現を求めます。 1、その意に反して行われた植民地支配により、強制動員で日本に連れてこられた人々や、日本に渡って来た出稼ぎ渡航者の遺骨奉還を、少なくともこれまでの軍人・軍属と同様の方式により、日本政府の責任において実施し、遺族に「痛切な反省と心からのお詫びの気持ち」が伝わるようにすること。 とりわけ、韓国で遺族が見つかっている42体について、政府をはじめ関係企業のお詫びの言葉を添えるとともに、遺族の方々に受け入れていただけるような条件(たとえば情報開示と弔慰金など)を日本政府は具体的に整え、早急な奉還を実現すること。 2、朝鮮民主主義人民共和国を本籍とする遺骨についても、人道的立場で赤十字などを介して、共和国政府に遺族調査をお願いし、遺骨奉還に着手すること。 3、旧日本兵の遺骨収集にあたり、その中に朝鮮人、台湾人、現地人などが含まれていることを認識し、それらに留意した遺骨収集を行うこと。 4、政府が強制動員被害者の死亡調査を全般的に実施し情報提供すること、政府等が保有している強制動員・強制労働関係資料を調査し全面開示をすること。 5、日本に残されている遺骨の状況は多種多様であり、その遺骨の状況に応じた解決策が必要であり、その遺骨がおかれている状況に応じて、関係する宗教界、市民団体、企業、自治体などと共同した努力を行い、政府は、それら関係者と協議して問題解決を行うこと。 2010年10月7日 韓国・朝鮮の遺族とともに「遺骨問題の解決を!」第3回証言集会参加者一同 |
- 2010 / 12 / 03
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