9月8日、愛媛県新居浜市瑞應寺専門僧堂を会場に、曹洞宗被差別戒名物故者諸精霊追善法要が、佐々木孝一宗務総長を導師に厳修された。 |
被差別戒名物故者諸精霊追善法要は、1981(昭和56)年から大本山永平寺において、1984(昭和59)年から大本山總持寺において、それぞれ両大本山主催で厳修されてきたが、これとは別に2008(平成20)年度から宗門主催の法要を開催、本年で4回目となる。 |
今年度は、東日本大震災物故者諸精霊追悼法要が併修され、内局をはじめ、四国管区内宗議会議員、宗務所役職員、教化センター役職員、愛媛県宗務所内教区長、瑞應寺近隣寺院、愛媛県青年会、愛媛県寺族会、人権啓発相談員など多くの宗門関係者、さらに、来賓として、部落解放同盟中央本部をはじめ、愛媛、広島、栃木の各県連代表者など総勢80人での法要となった。 |
午後2時の打ち出しとともに、両班・後両班(内局・管区長・教化センター統監・宗務所長・宗議会議員・教区長・管区内人権啓発相談員)と位に就き、まず、東日本大震災物故者諸精霊追悼法要が齋藤裕道人権擁護推進本部次長を導師に厳修、導師退堂の後、佐々木宗務総長が七下鐘により上殿、曹洞宗被差別戒名物故者諸精霊追善法要が厳修された。 |
はじめに「供養のことば(別掲)」を奉読、続いて『修証義』後二章を遶誦し、参列者の焼香が行われた。 |
回向の後、佐々木宗務総長から主催者として、参列の方がたと会場を提供いただいた瑞應寺関係者へ謝意を述べた。次に、「差別戒名」改正の現況を報告の上、「宗門において『差別戒名』改正の取り組みを形骸化させることなく啓発していくため、2008(平成20)年より宗門主催の追善法要を毎年修行している。30年を過ぎようとしている宗門の取り組みは、宗内の差別問題、差別事象の解決と、宗門僧侶寺族への人権啓発活動に重点が置かれてきたが、これからは一般檀信徒まで含めた啓発活動を推進していかねばならない。本年4月には一般檀信徒まで対象を広げた教材『いのちつないで~無縁社会から有縁社会へ~』を作成し、全国の宗門寺院に配布させていただいた。大いに活用いただき、人権啓発への取り組みが更に充実することを期待しているところである」と挨拶を述べた。 |
続いて、会場主の楢﨑通元瑞應寺専門僧堂堂長より「皆さんに足をお運びいただき、無事にお勤めいただいたこと、心から御礼を申し上げます」との挨拶があった。 |
さらに、来賓を代表して組坂繁之部落解放同盟中央執行委員長より「皆さまの変わらない、温かいおもてなしに心から御礼を申し上げます。幼稚園の子どもたちの明るい声が聞こえます。子どもたちは真っ白な心で生まれてきます。そこに差別の黒い墨を塗ったのでは何にもなりません。そういう点では、幼稚園の頃から人を大事にする豊かな感性を育てていく、そして、人間平等の社会を作るために曹洞宗の皆さまが大きな力を持っておられることを改めて実感いたしました」との挨拶があり、その後、来賓紹介が行われ散堂となった。 |
休憩をはさみ「今、あらためて部落差別の意味を問う」と題して、松尾幸弘部落解放同盟松山市連絡協議会書記長の講演が行われた。 |
その中で松尾氏は、結婚時、また職場での被差別体験、それに対して下を向かずに立ち向かった自身の生き様等を語られた。そして、宗教者に期待することとして「皆さんがなさっている、一歩一歩の取り組みが大きな力になっていくことを私は見ておりますし、そういうことが、まさに仏教の教えに適っていると思います。今、目に見えない形で差別が出てきている。あるいは、被差別部落であることに誇りを持てない人がたくさんいる。それをさせている社会の仕組みがある。お寺の場合は、さまざまな階層の人、さまざまなところで働いている人が檀信徒になっていると思います。そこで、人権問題が難しいではなく、ざっくばらんに話せて、相談に乗れる。そういう僧侶になって欲しい、それが私たちの何よりの望みです」と述べられた。 |
最後に、齋藤人権擁護推進本部次長より閉会挨拶があり、午後4時30分、全日程を終了した。 |
今度の開催にあたり、会場である瑞應寺関係者を始め、管区内宗務所役職員、教化センター、愛媛県青年会、愛媛県寺族会の皆さまにご協力いただいたことに厚く御礼を申し上げる次第である。 |
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